俺にはツンで他の男にはデレな美少女は俺の幼馴染み
俺には不思議な現象が毎日、起こる。
その不思議なことは朝から始まる。
「ねえ、眠いから引っ張ってよ」
その不思議な現象を起こす本人登場だ。
それが美少女の彼女。
俺の幼馴染みだ。
「はあ? 自分で歩けよ」
「早く引っ張ってよ」
俺は彼女の片手を握り、引っ張る。
俺は毎日、彼女の言いなりになる。
それは俺が彼女を好きだからだ。
今だって、彼女と手を繋げて嬉しいんだ。
そして電車に乗る。
彼女を電車の端に立たせ、俺は彼女の頭の上の壁に手を当てて彼女の前に空間を作るように立つ。
彼女がきつくないようにする。
「ちょっと見てよ。またやってる」
「本当だ。彼氏がしてくれると嬉しいけどあの人は絶対彼女のパシリかなんかでしょう?」
「なんか弱みでも握られてるのかな? それだと可愛い顔して彼女は悪女ね」
近くの女子高生が俺達を見て話している。
俺が好きでやっていることなのに。
彼女まで悪く言うなよな。
「ねえ、眠いからいつものしていい?」
「はあ? 仕方ないな」
そして彼女は俺の胸に顔を埋める。
彼女はこうやって少し眠るんだ。
立ったまま俺の胸に顔を埋めて眠れるみたいだ。
それを見ていた女子高生がまた話している。
「うそ。あれはもう、抱き枕じゃない? もう人間じゃないわよね?」
「でも、あれって安心してるってことなの?」
「そうかな?」
ん?
安心してる?
そうなのか?
そういえば俺に体重をかけてるよな?
俺に全てを預けているような。
そんな訳ないか。
ただ眠いだけだよな。
そして電車から降りると彼女の態度は一変する。
「あっ、姫。おはよう」
「おはよう。今日は早いね」
「そうだよ。君に早く会いたくて」
「私も会いたかったよ」
彼女は男子から姫と呼ばれている。
彼女は知り合いの男子に笑顔で話しかけている。
俺といる時はそんな笑顔なんて見せないのに。
ところでお分かり頂けたでしょうか?
不思議なこととは彼女の態度です。
彼女は俺の前ではツンデレのツンしか見せない。
しかし、俺以外の男子にはツンデレのデレが炸裂する。
すごく不思議でしょう?
彼女は駅から学校まで笑顔を忘れない。
俺にも見せてほしいよ。
学校について自分の席につく。
「今日もお疲れだな」
俺に友達が話しかけてくる。
「だって、彼女の為に俺は毎朝、腕をプルプルさせているんだぞ。疲れるに決まってる」
「疲れるならしなければいいのに」
「ダメだ。彼女に嫌な思いはさせたくないんだ」
「どんな忠誠心だよ。お前は飼い主のいいなりの犬なのか?」
「犬でも何でもいい。彼女が俺を頼ってくれるなら俺は何でもするよ」
「姫はいつ、お前の気持ちに気付くんだろうな」
「いつか必ず伝えるからその時に気付くんだよ」
「それがいつになるのかだよ」
「いつかだ」
俺はいつかは必ず彼女に好きと伝えようと思っている。
そして休みの日に彼女は俺の部屋へ来た。
休みになると俺の部屋に来る彼女。
「ねえ、肩を揉んでよ」
「肩、こってんの?」
「うん」
彼女はそう言って俺のベッドにうつ伏せになる。
どうやって肩を揉めと?
俺はベッドの横から彼女の肩を揉む。
やりにくい。
「やりにくい?」
「ああ」
「ならもういいよ」
彼女が俺に優しい言葉をかけてくれたのか?
「全然気持ち良くないし」
優しい言葉なんて出てこないか。
一度でいいから彼女のツンデレのデレを俺にも見せてほしい。
「ねえ、みかんを剥いてよ」
「はいはい」
俺はみかんの皮を剥いて彼女に渡す。
「あ~ん」
彼女は口を開けてみかんが入ってくるのを待っている。
仕方ないやつだ。
俺は彼女の口にみかんを入れる。
「おいしい。もっと頂戴」
彼女はまた口を開けて待っている。
俺はお前のお母さんなのか?
俺は子供にみかんを食べさせているのか?
彼女はみかんを食べるとベッドで眠った。
俺は寝ている彼女の顔を見る。
本当に可愛い顔だ。
でも、俺が彼女を好きになったのは顔じゃない。
あれは俺達が小学生の頃。
◇◇◇◇
「ねえ、何で私には友達があなたしかいないの?」
「それは君が優しい言葉をみんなにかけないからだよ」
「優しい言葉?」
「相手の気持ちになって言う言葉だよ」
「そうすれば私にも友達はできるの?」
「できるよ」
「分かったよ。やってみるね」
それから彼女は努力をしていた。
相手の気持ちを考えながら発言したり、誰かの悩みの相談にのってあげたり。
そんな頑張る彼女を見て、俺は好きになったんだ。
俺に冷たいのは、本当の彼女だと俺は知っているから何でも我慢ができるんだ。
彼女が俺にだけは本当の自分を見せてくれているんだって思えるから。
俺は彼女が寝ている、俺の部屋から出てリビングでテレビを見ていた。
「ねえ、眠いから家までおんぶしてよ」
彼女が目を擦りながらリビングに来て言った。
「分かったよ」
俺は彼女をおんぶして隣の彼女の家まで送った。
「部屋までおんぶしてよ」
俺は彼女の部屋までおんぶをした。
彼女をベッドに寝かせた。
「おやすみ」
俺はそう彼女に言って彼女の頭を撫でた。
「ねえ、いつ気付くの?」
彼女は俺を見つめて言った。
「どうしたんだ?」
「ねえ、分からないの?」
「何が?」
「私がいつもあなたにしてることよ」
「俺にしてること?」
「あなたにだけ特別なことをしてるのに」
「俺だけ?」
「あなたにだけ甘えてるのよ」
彼女は顔を赤くして言った。
甘えてる?
どこが?
俺をパシリのように使ってたんじゃないのか?
「だって朝、眠いからって俺に引っ張ってもらうのに意味があったのか?」
「うん。あれはあなたと手が繋げるからよ」
「電車の中で俺の胸で寝るのは?」
「あなたに抱き締められてるみたいだからよ」
「肩を揉ませるのは?」
「あなたに触れてほしいからよ」
「みかんを食べさせるのは?」
「あ~んして食べさせてもらうのは恋人みたいだからだよ」
「じゃあ、家まで送らせたのは?」
「あなたと少しでも長くいたいからよ」
「待ってくれ。それなら男子に対する態度はどう説明するんだよ」
「それはあなたが教えてくれたからよ。あなたが友達を作る方法を教えてくれたのよ? それをずっと実践してるの」
ちょっと待ってくれ。
頭がこの展開に追い付いていかない。
彼女は俺に甘えていた?
俺だけに?
分かりにくいだろう?
誰だって分からないよ。
「それじゃあ、君は俺が好きってことなのか?」
「そうだよ。大好きよ」
彼女は俺に他の男子に見せる笑顔を見せた。
いや。
違う。
他の男子に見せる笑顔よりももっと可愛い笑顔を俺に見せてくれたんだ。
俺が見たかった笑顔だよ。
なんて幸せなんだ。
俺は幸せ者だ。
「ねえ、キスしてよ」
「えっ」
彼女が甘えている。
可愛い。
いつものような言い方なのに俺には彼女が甘えているのが分かる。
「それなら目を閉じて」
俺が言うと彼女はゆっくり目を閉じた。
いつもは彼女が俺を動かすのに、今は俺が彼女を動かした。
それも嬉しかったが、彼女とのキスはもっと嬉しかった。
彼女はキスの後、照れながら笑顔を見せてくれた。
俺の恋人はツンデレのツンしか見せてくれない。
でも俺はそれが間違っていることに気がついた。
「ねえ、眠いから引っ張ってよ」
「俺と手が繋ぎたいんだろう?」
「もう。言わないでよ」
彼女は顔を赤くして言った。
そんな彼女と手を繋ぐ。
電車に乗って彼女がいつものように言う。
「ねえ、眠いからいつものしていい?」
「抱き締めてほしいんだろう?」
「もう。また言うの?」
「でも電車の中ではできないよ」
「どうして?」
「君に、空間を作らないと君は嫌だろう?」
「何、言ってるの? 私はあなたとくっつきたいのよ」
「それはどういう意味?」
「空間なんていらないよ」
彼女は俺を見上げて言った。
なんて可愛いんだ。
上目遣いがこんなに可愛いと思ったことは今までないよ。
俺は彼女を優しく抱き締めた。
「落ち着く」
彼女は小さな声で言った。
駅につくと彼女の顔は笑顔だ。
そしていつものように男子に声をかけられる。
「あれ? 姫。今日はどうしたの?」
「何が?」
「すごく嬉しそうだね」
「うん。私の彼が甘えさせてくれるの」
彼女はそう言って俺に笑顔を見せてくれた。
「えっ、恋人?」
「そうだよ。私の大切な人」
「姫ってみんなのモノだと思っていたよ」
「私はずっと彼のモノよ」
彼女はそんな言葉を普通に言う。
俺が恥ずかしい。
「でも、今日の姫は今までで一番、可愛い笑顔だよ」
彼女は男子に言われて嬉しそうに笑っていた。
そして俺は自分の教室に入る。
「お前のそんな顔、初めて見たよ」
俺の友達が話しかけてきた。
「それは彼女と俺が同じ気持ちだったからだろうな」
「それって、姫がお前を選んだってことなのか?」
「そうだよ」
「お前は幸せ者だな」
「当たり前だ」
「俺は姫がお前を選ぶのは分かってたけどな」
「はあ?」
「どう考えたって姫はお前のことが好きな態度をとってただろう?」
「どこが?」
「俺達には見せない彼女の態度だよ。お前にしか見せない態度で気付けよ」
「何で教えてくれないんだよ」
「俺だって姫をお前のモノにしたくないんだよ」
「お前、それでも友達か?」
「俺はお前達を見守っていたんだよ」
「そんなこと言っても許さないからな」
「それならお前の機嫌がよくなる言葉を言ってやろうか?」
「何だよ」
「男子が口を揃えて美少女と言う姫を恋人にできて良かったな」
「なんなんだよ」
「顔がにやけてるぞ」
「うるさい」
そう。
俺は顔がにやけるほど彼女を恋人にできて嬉しい。
今日は彼女と一緒に帰る。
「ねえ、私のどこが好きなの?」
「君の何でも一生懸命に頑張るところ」
「私はあなたの優しいところと」
そして彼女はもう一つの俺の好きなところを俺の耳元で言う。
「私の全てを受け入れてくれるところ。私の全てはあなたのモノよ」
俺は顔が赤くなっているんだと思う。
それでも嬉しくて彼女を見つめる。
「なあ、キスしていいか?」
「うん」
彼女は嬉しそうにうなずいた。
彼女のツンデレのデレは中毒性があるみたいだ。
もっと彼女のデレを見たいと思った。
ここで俺は気付いたんだ。
彼女は俺の前でだけツンデレなんだって。
読んで頂きありがとうございます。
ツンデレ彼女はいかがでしたか?
楽しんで読んで頂けたら幸いです。