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第九十七話

そして事件は起こった。


とうとう東宮に女御が入内するという話が持ち上がったのだ。


なんでも、宮筋の姫で父宮が帝に泣きついているらしい。


是非にも自分の娘を女御にしてくれというのだ。


帝に入内させるか東宮に入内させるか、宮中ではひと騒動だとか。


帝も東宮も、出来れば自分は遠慮したいのだ。


それなりにうまくいっている愛しいひととの関係に、新たな火種を抱え込みたくはない。


芙蓉も、そんな噂を耳にして、ヤキモキする。


今は一の宮と二の宮を左大臣邸の母に預けての参内で、寂しく思っていたところにそんな噂。


最近、東宮も忙しいようで、会う回数も減りがちだ。


芙蓉の中で、ぷちんと切れるものがあった。


どうせ他の女御が入内しちゃうんだ。


芙蓉は、女房に化けてそっと桐壺の自分の部屋を抜け出す。


周囲にばれないように、細工はバッチリ。ぶちぎれて、尼になってやるぅっていうのもいいなぁ。


でも、髪を切っちゃったら、後悔先に立たずだし・・・


それにせっかくのこの黒髪、もったいない!


女御になって以来、前よりも更にいっぱいお手入れして頑張ってきれいに伸ばしたんだもの!


考えたあげく芙蓉は、家出することにした。


宮中からの出方はばっちり知ってる。


多分、ちょっとくらいなら大丈夫かな。


そう思って、御所を抜け出すことにしてしまった。


車宿に止まっていた、見覚えのある牛車に乗ると几帳の陰に息をひそめる。


どれくらいの時間、息を潜めていただろう。


うつらうつら眠たくなってきてしまった。


がたん


牛車の動き出す音に、はっと眼を覚ます。


牛車は、宮中の外へと動き出していた。

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