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第九十六話

芙蓉は、元気な男の子を産んだ。


一歳半になった一の宮と共に宿下がりした左大臣邸では、母中将の御方が待っていて、何くれとなく世話を焼いてくれた。


中将の御方は左大臣の北の方だから、今では北の方さまと呼ばれて左大臣邸の北の対に住んでいる。


一の宮は、生まれたばかりの弟宮を、物珍しそうに突っついている。


芙蓉は、一の宮を愛しそうに見つめた。


一歳半になる一の宮は、目に付くものすべてを物珍しそうに触って歩いている。


一の宮も、二の宮も、どっちも可愛くてたまらない。


でも、次は姫宮かしら。


可愛い着物や小物類を一緒に選んだりしたいもの。


気が早いとわかっているものの、そんなことを考えてしまう。


一の宮も二の宮も、大切な御子たちだけど。


未だ自分一人しか女御を置いていない東宮。


いまの状態を持続していくためには、子供をたくさん産んだほうがいいのかなあ。


そんな心配もしてしまう。


東宮さまを独り占めしたい。


そんな気持ちが、芙蓉の中に芽生える。


独り占めなんて出来るわけない。


ただ人ではない。


あの人は東宮だから。


私だけのものにはならないのだから。


そう理解していたつもりだけど、東宮を知れば知るほど、恋すれば恋するほど、愛すれば愛するほど。


独り占めしたいな。


そんな思いがちょっとずつちょっとずつあふれてくる。


あふれてくる度に、そんなのダメって自分に言い聞かせて胸の奥にしまいこむのだけど。


ずっとこのまま。


ずっとこのまま幸せな時間が続けばいいのにな。


今が幸せだから。


今が幸せすぎるから。


これから先訪れる未来が怖くて怖くて仕方ない。


未来が不幸だとは決まってないけど。


今が幸せすぎて、これよりも幸せになれると思えなくなっちゃうんだ。



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