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第九十一話

そんなある日。


中将の御方が真剣な顔で芙蓉の前に座った。


「お話があります」


そんな中将の御方に、芙蓉は何となくソワソワしてしまう。


「何かしら?」


心の中は不安でいっぱい。


何を言われるのだろう。


「私、左大臣さまの北の方になるというお話を了承いたしました。


女御さまには、私がいなくても大丈夫だと思います」


その言葉に芙蓉は複雑な表情を見せる。


芙蓉だって、母の幸せを願っている。


自分のところに一生縛りつけるわけにはいかないことはわかっている。


でも、中将の御方が左大臣と結婚するということは、中将の御方が側にはいてくれなくなるということ。


そして、自分だけの母ではなくなるということ。


芙蓉は泣きたい気持ちだ。


でも、これが中将の御方が、母が一生懸命悩み抜いてだした結論であることはわかっている。


泣いたら、母を困らせるだけ。


ぐっと涙をこらえる。


「幸せになって下さい。


本当に良かった・・・」


母を心配させないように、頑張ってにっこり微笑む。


そんな芙蓉を見て、中将の御方はホッとしたような表情をみせた。



その夜。


芙蓉は東宮の腕の中で思いきり泣いた。


中将の御方が、母が宮中から退出してしまう。


と泣いた。


そして、次の日の朝、泣いたことなんてなかったように、頑張った。


東宮は何も言わず、ただ芙蓉の背をさすってくれた。


中将の御方は、芙蓉の寂しさも辛さも、すべてを分かった上で、芙蓉の側を離れる決心をした。


芙蓉は、もっともっと、大人にならなくてはならないのだ。

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