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第九話

東宮は、ニヤリと微笑んだ。芙蓉は顔面蒼白である。


「どうか…どうかご内密にお願いします…」


東宮は、ははっと笑った。


「心配しなくても言わないよ。式部卿宮が左大臣と敵対するのも、左大臣の失脚も、僕は望まないから」


それを聞いた芙蓉は、ふうーっと息をはいた。


「よかった……」


いつのまにか、頬に涙がつうーっとこぼれているのに気づき、あわてて拭う。


「ふーん。君が入内してきたら、ちょっと面白そうだな」


そう言うなり東宮は、芙蓉の頬を両手で包んだ。


「ひゃっ」


芙蓉にとって、男の人とこんなにも近い距離にいるのは初めてである。


心臓がぴくんっと跳ね上がりそうだ。


なぜこんなにもドキドキしているのかわからない。


「中将の御方から、よく君の話を聞いていたよ」


東宮が話し始める。芙蓉は、どうすればいいのかわからず、動けない。


「なんでも一生懸命に勉強する頑張りやさんだけど、まだまだ幼いのが心配だってさ」


芙蓉は、かあーっと頬が熱くなるのを感じた。


「母さまったらあ〜」


恥ずかしすぎて、また泣きそうである。


東宮は、そんな赤くなったり青くなったりしている芙蓉の頬から手を離そうとはしない。


じっと芙蓉のことを見つめている。


「可愛い」


そうぽつりと言うと、東宮は芙蓉の額にキスをした。


「え」


言葉を失う芙蓉。


そんな芙蓉からようやく手を離した東宮は、芙蓉の頭をぽんっと叩くとさっと庭へと去っていった。


そのまま、床にぺたんと座り込んでしまった芙蓉は、体から力が抜けてしまったようで動けない。

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