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第八十九話

春の終わりごろ、牡丹宮は頭中将に降嫁した。


帝の肝いりで行われる降嫁であるから、その儀式の数々は荘厳である。


頭中将は三日間、牡丹宮のもとに通う。


三日目の夜には、披露宴のようなものが開かれ、公達たちが集まる。


左大臣は上機嫌である。


何しろ、一人息子に内親王をもらえたのだから。


これで牡丹宮から姫君が生まれたら、宮腹の素晴らしい血筋の妃がね。


東宮の一の宮に入内させることが出来る。


左大臣の夢は膨らむばかり。


ウハウハである。


美貌の内親王の嫁。


早く孫が産まれて欲しい。


頭中将と牡丹宮が結婚したのは三日前なのに、もう期待している。


左大臣の頭の中には、出来てるかどうかもわからない孫のことだらけ。


「いくらなんでも早すぎだろ」


頭中将が、心の中で突っ込む。


頭中将は、三日前、初めて牡丹宮に会った。


初めて会う牡丹宮は、芙蓉とは正反対で。


でも、確かに美しかった。


どちらかと言えば、三の君に近いだろうか。


芙蓉はふわふわとした春の霞がかった桜のような美しさ。


それに対して、牡丹宮はくっきりはっきりした清廉さ。


でも、そのはっきりした性格は嫌いではない。


三の君を思い出させるからだろうか。


恋することが出来るかどうかはわからない。


でも、人として愛することは出来るかもしれない。


共に戦うパートナーとして。


たぶん牡丹宮も、同じなのではないだろうか。


頭中将には、牡丹宮が自分を愛しているようには思えなかった。


それでも、顔に嫌悪感を出すことはなかった。


さすが内親王というべきか。


牡丹宮を正妻として心から大切にするつもりだ。


子を成すのは我々の役目だろう。


だが、これから先、男として心から愛することの出来るただ一人の女性を探し続けてしまうのは止められないかもしれない。


見つけたたった一人は東宮のものになってしまったから。


決して手の届かない人になってしまったから。


なんて、宴の喧騒の中、ふと感傷に浸ってしまう。


我に返った頭中将は、隣りに座っていた牡丹宮に笑いかけた。

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