表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/117

第八十七話

春の除目で東宮の言葉どおり、右近少将は頭中将へと昇進した。


頭中将というのは帝のお側近くに仕える蔵人たちの役所の次官である。


帝の第一秘書・・・といったところか。


長官の蔵人別当がいるものの、実質的なトップは頭中将と頭弁の二人。


これで頭中将は、

出世コースに乗ったといえる。


藤壺中宮の弟にして、桐壺女御の兄。


東宮の一の宮の伯父。


牡丹宮の降嫁が決まっても、頭中将に自分の娘をもらって欲しいと言ってくる貴族は後を絶たない。


正妻である北の方は牡丹宮に決まっているが、妻は一人とは限らない。あわよくば、自分の娘も妻の一人に加えたい。


そして、あわよくば権力のおこぼれをもらいたいというのだ。


頭中将は、ため息をついた。


私が好きなのは、ただ一人。


いとこだった芙蓉だけ。


でも、今では芙蓉は妹だ。


どんなに想っても、けっしてその想いが報われることはない。


妹・・・になってしまったから・・・


最近になって、ようやく諦めがついた。


そこに畳みかけるようにして、牡丹宮降嫁が決まった。


ドキッとした。


東宮は、自分の想いを知っているのではないかと。


頭中将は、足下に転がっていた文の数々を手にとってほり投げた。


芙蓉以外の女性など誰でも同じ。


芙蓉でないのなら、どの娘でもどうでもいい。


それなら別に、牡丹宮でもいい。


まわりの同僚たちには、評判の牡丹宮を妻に出来ることを羨ましがられるが、正直どうでも良かった。


頭中将は、自分の情けなさにウンザリする。


「私は結局、芙蓉に気持ちを伝えることすら出来なかった・・・


情けないな・・・」


自嘲気味に酒をあおる。


そこに女房が客の訪れを告げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ