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第七十五話

人払いされた室内には、なんとも言えない空気がぴんと張り詰めている。


「左大臣さまは、二の君さまの婿君についてどうお考えでいらっしゃいますの?」


中将の御方の穏やかな口調がむしろ恐怖をあおる。


「い、いや・・・二の君の好きにすればいいのではないかと・・・二の君が宰相中将を気に入っていたとかいう噂を聞いたわりに、話が進まないから、ちょっと・・・」


左大臣が、言葉をにごす。


宮中では、帝と東宮に次ぐほどの、臣下の中では向かうところ敵なしの権力を誇る左大臣。


のはずである。


「・・・ちょっと煽ってみた・・・と?


桐壺で?」


にーっこり微笑んでそう言う中将の御方は、本人が思っているよりもだいぶ怖い。


左大臣は、否とも言わず視線をそむける。


「で、煽られた二の君さまは、真夜中に寝ていたら人の気配がしたから目を覚ましたら、宰相中将がいたから、大きな声を上げて、まわりの注目を浴びまくった。


そういうわけでございますね?」


「はい・・・」


二の君がうなずく。


「あんなに大きな声をあげては、桐壺だけではなく宮中の人すべてに、二の君さまのもとに宰相中将さまが通われているという噂がたつかもしれないなんてことはお考えですか?」


「・・・いいえ・・・」


二の君がうなだれる。


「姉君のお振る舞いいかんによっては、桐壺の女御さまの評判にも傷がつく可能性があるなんてことは、お考えでした?」


畳み掛けるように、中将の御方が言う。


「・・・ごめんなさい・・・」


二の君がうつむく。


「二の君さまは、仕方ありませんわ。


言っても不可抗力でございますものね」


ね。と言って、左大臣に微笑みかける中将の御方。


左大臣は、ぞぞぞっと背筋が凍りそうになる。


「い、いや・・・わしもまさか、宰相中将が桐壺で二の君を襲うだなどと考えてもみなかった・・・」


無駄かもしれないけれど、懸命に言い訳をしてみる。


「襲えとは言って無くても、桐壺に二の君さまが滞在していることなどはほのめかされたに決まっていますよね?


宰相中将さまを婿がねにしたいものだなどと言われたりしたのでは?」


宰相の御方が言うことすべてが、まるでその場で見ていたかのよう。


「どこで聞いてた・・・?」


思わず、口を滑らす。


「常識で考えれば、あの宰相中将さまが左大臣さまの許可なしに、忍び込むわけがありません」


こうして、左大臣は桐壺への出入り禁止を言い渡されてしまった。


一応、女御の父親という立場で・・・金銭的にも支えているスポンサー的立場のはずなのに・・・


二の君は、中将の御方も怖いし、左大臣のちっちゃな陰謀も判明したからには、さっさと左大臣邸に帰りたかったのだが、宮中でしばらく中将の御方に色々なことを習うことになった。




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