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第六十四話

寝殿の芙蓉の部屋では、女房たちが右往左往している。


芙蓉の横にいる三の君も、おろおろするばかり。


芙蓉の側にかけつけた中将の御方は、女房たちを一喝する。


「あなたたちが落ち着かないでどうするのです!!」


その一声に、女房たちが堰をきったように動き出す。


出産のための白い衣装に着替えさせられた芙蓉は、同じく白い衣装に着替えた中将の御方や三の君に付き添われて産屋へと向かう。


芙蓉の出産が始まったという知らせは宮中にももたらされる。


ちょうど宮中に出仕していた左大臣は大慌てで邸へと戻ってくる。


東宮も、梨壺の中で気が気でないようで、何回も何回も使者をよこす。


桐壺の女御の安産を願う加持祈祷が、今までよりもさらに激しく行われている。


陰陽師などの声も加わる。


左大臣邸の中は騒然とした雰囲気である。


左大臣は、産屋の側の廂を行ったり来たり、落ち着きがない。


今度こそ男子を!!


そんな思いでいた左大臣だったが、いざこの場に立つとそんなことはどうでもよく思えてくる。


芙蓉と生まれてくる宮さまがご無事でありますように。


そんな祈りにも似た思いだけが心の中にある。


幾たび産屋の側を往復したころだろうか。


遠くのほうから、ふぎゃあという声がした。


「産まれたかっ!!!!」


左大臣は産屋の側まで駆け寄る。


女房の一人が産屋から出てくる。


「おめでとうございます!!


若宮さま、ご誕生にございます!!」


その言葉に左大臣は思わず女房の手を握りしめる。


「おおっ!!して・・・して、女御さまはご無事か?


若宮さまはお健やかでいらっしゃるのか?!」


左大臣に気おされしたように、こくこくっとうなずく女房を見て、左大臣はこおどりする。


こおどりしていたかと思うと座り込む。


「よかった・・・よかったのう・・・」


そして、思い出したように東宮の使者のもとに駆け寄って、女御出産の知らせを伝える。


心配していた藤壺の女御のもとにも、使者を出す。


左大臣邸は、喜びに沸いていた。


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