第四十七話
牡丹宮は、芙蓉に挨拶したかと思うと、何かと東宮にべたべたとしながら話を続ける。
その話の内容というのが、牡丹宮が宮中で暮らしていたころの、帝や東宮、式部卿宮との思い出話ばかり。
そのころは、宮中にいなかった芙蓉が、中に加われない話ばかりである。
最初は腹立たしかった芙蓉だったが、いつまでも腹を立てていてもつまらないと、東宮の幼いころの話を黙って聞いていることにした。
東宮が、芙蓉が加われる話に戻そうとするたびに、牡丹宮が思い出話に持っていってしまう。
自分たちだけがわかる話をして、自分と東宮の仲のよさを見せ付けようとしているかのようである。
・・・せっかく、東宮さまと二人で過ごせる時間だと思ったのにな・・・
芙蓉は、落ち込んでしまう。
だんだん元気のなくなってきた芙蓉を見て、東宮が芙蓉に、そろそろ休んだほうがいいのではないかと言い出した。
「では、私たち、そろそろお暇いたしますわ。ねえ?」
牡丹宮は、そう言うと東宮を連れて部屋を出て行ってしまった。
芙蓉は、ふうーっとため息をつく。
東宮が帰ってしまったのは、残念だけど、今はそれよりも牡丹宮が帰ってくれたことが嬉しかった。
なんとなく、ぐったりとする。
気疲れしてしまったのだろうか。
牡丹宮が、早く宮中から退出してくれたらいいのに。
ついつい意地悪なことを考えてしまう芙蓉だった。
次の日、その牡丹宮が再びやってきた。