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第四十話

桐壺の女御の懐妊は、宮中の隅々までその日の内に、広まっていった。


話を聞いた人々は、悲喜こもごもといったところか。


藤壺の女御以外の帝の女御たちからも、祝いの品が届けられたものの心中穏やかではない。


桐壺の女御の懐妊と同時に、内々に話を進めていた東宮に他にも女御を入内させるという話がすべて流れてしまった。


どの大臣家も、宮家も、あわよくば自分の娘が産んだ皇子が、帝として即位してくれることを願わずにはいられない。


けれども、皇子を産むにはまず、入内しなくてはならない。


そこを止められてしまったら、彼らの権力に対する思いは決してかなわない。


左大臣にごまをするもの、桐壺の女御が姫宮を産むことを祈るもの・・・。


色々である。


今の彼らの興味は、桐壺の女御が産むのが皇子なのか姫宮なのかということ。


皇子ならば、左大臣の政権は磐石になる。


姫宮ならば、自分にもまだ帝の祖父となる可能性が残されているということ。


左大臣も、皇子が生まれるようにと、さっそく社寺に祈祷を依頼している。


左大臣にとっては、もうひとつ嬉しい知らせが舞い込んできていた。


三の君である式部卿宮の北の方、つまりは自分の本物の娘が姫君を産んだのである。


式部卿宮の子供であるから、男であれば、もしかしたら帝位につく可能性がないとはいいきれない。


女であれば、いずれは帝や東宮に入内させることも出来る。


左大臣にとっては、どちらでも万々歳である。


式部卿宮の北の方に姫君が生まれたとの知らせは宮中にももたらされた。


芙蓉は、母子共に健康であることを無邪気に喜んでいる。


中将はこっそり東宮のところに、式部卿宮の北の方に姫君が生まれたことを報告しに行った。


姫君だったと聞いて東宮は、あからさまにほっとする。


式部卿宮は、今現在東宮の次に帝位に近い人である。


もし、自分の本当の娘との間に男の子が生まれていれば、その子は帝位に四番目に近いということになる。


そうなれば、生まれるかどうかわからない帝や東宮の皇子よりも、すでに生まれている自分の孫宮を帝位につけようと左大臣が動かないとも限らない。


東宮、そして芙蓉の母である中将にとっては、姫君誕生こそが東宮の地位を安泰にしてくれるものであった。


東宮と芙蓉との間の男御子が生まれるまでは、式部卿宮家に男の子が生まれてもらっては困るのだ。

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