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第三十三話

帝が、藤壺の部屋の中に入っていくと、藤壺の女房たちは、明らかにほっとした空気になっていく。


「おや、梅壺の女御が藤壺のところに来るなんて、珍しいこともあるものだね。


お二人が仲良くしてくださると私も嬉しいですよ」


帝に上座を譲るために脇に動きながらも、藤壺の女御は帝に、にこりと微笑んだ。


「帝!


私の御子が流産したのは、藤壺さまが呪詛したからに相違ありませんわ!!


藤壺さまと左大臣のせいなのです!!」


梅壺の女御が必死で訴える。


梅壺の女御付きの女房たちは、そわそわと落ち着きがない。


「梅壺の女御が流産したという話は、私も先ほど梅壺の女御から報告を受けたよ。


いつ流産してしまったのかな?」


帝は、穏やかにたずねる。


「き、昨日ですわ」


「なぜ、呪詛が行われたと言うのだね?」


「じゅ、呪詛に決まっていますわ!!」


梅壺は、少し動揺を見せ始めた。


「証拠もなしに、そのようなことを言うものではない。


第一そのようなことが行われたはずがない。


左大臣も藤壺の女御も、そのようなことをする人ではない。


藤壺の女御に謝りなさい」


「で、でも・・・」


梅壺の女御は、なおも言いつのる。


帝は、さっと人払いをする。


「私が先日梅壺を通りかかった折に、このままでは梅壺の女御が懐妊していないことはいずればれてしまう。どうしたらよいのか・・・と梅壺の女房たちが相談しているのを聞いた気がするのだが、どう思う?」


梅壺の女御は、急に真っ青になる。


「そ、それは・・・」


中将は、あきれて物も言えない。


「そもそも、いもしなかった御子を、どうやったら流産できるのか、伺いたいものだ」


帝は、うんざりした様子である。


梅壺の女御は黙り込んでしまった。


「あなたが、つまらない嘘をついたものを、藤壺の女御のせいにするのはおかしかろう。


表ざたになると、内大臣家の失脚につながる事件ですよ」


梅壺の女御は、次第に青くなってきている。


「藤壺に、きちんとあやまりなさい。


あなたは、流産したことにしておくから、しばらくおとなしくしているように。


藤壺は、それで良いか?」


藤壺は、傍らで静かにうなずく。


「・・・ごめんなさい・・・」


梅壺の女御は、つぶやくように謝った。


そして、すっと立ち上がると、藤壺の女御をきっとひとにらみし、さっさと梅壺に帰って行った。


「すまないね。


梅壺がまさかこんなふうに騒ぎ立てるとは思いもしなかった」


帝が藤壺の女御に謝る。


「いいえ、気になさらないでください。


梅壺さまも、反省していらっしゃると思いますわ」


藤壺は、怒った様子を見せない。


「あなたは穏やかで助かるよ」


帝は、はあーっと大きくため息をついた。

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