表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/117

第三十話

そんなある日、芙蓉は、藤壺の女御に会いに行くことになった。


姉妹となっていても、後宮の中ではなかなか本人同士が行き来することは難しい。


先日、梅壺の女御の宴で見かけて以来、きちんと対面するのは入内して以来初めてであった。


「藤壺の女御さまにおかれましては、ご機嫌うるわしゅうございます」


形どおりの挨拶をおこなう。


「桐壺の女御におかれましても、ご機嫌うるわしくて、何よりです」


藤壺の女御が悠然と微笑む。


その美しさに、まわりの桐壺付きの女房たちからは、思わずため息がもれる。


藤壺の女御が、さっと人払いすると、藤壺の女房たちも桐壺の女房たちも、するすると出て行った。


「芙蓉、久しぶりね。


中将の御方も会いに来てくださって、嬉しいわ」


中将は、あわてて挨拶する。


「藤壺さまにおかれましても、お元気そうで何よりでございます」


藤壺の女御は、顔をしかめる。


「中将ったら、そんな他人行儀な挨拶しないでちょうだい。


元気なわけないわ。


梅壺の女御が懐妊したという噂が流れているというのに」


藤壺の女御は、ため息をつく。


「私か芙蓉が懐妊して、皇子を産まなければ、左大臣家の権力はなくなってしまうわ。


今は、帝が守ってくださっていると思っていたのに、梅壺の女御が懐妊してしまうなんて」


藤壺の女御は、またため息をつく。


「でも、帝がいてくだされば、権力がどうなっても、いいのではないこと?」


芙蓉が、聞く。


「芙蓉ったら・・・。


権力がなければ、帝や東宮の側にいることも出来なくなってしまうのよ」


藤壺の女御は、芙蓉を困ったように見つめた。


「芙蓉は、権力に興味ないかもしれないけれど、東宮のお側にいるためには、左大臣家の権力が必要なのよ」


そうなのか・・・。


後宮に、東宮の側にいるためには、権力が必要なのか。


そんなことを学んでしまった芙蓉だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ