第二十一話
そして、とうとう宴の当日がやってきてしまった…。
女房たちは、朝からバタバタと落ち着きがない。中将は、どことなくソワソワしている。
宴は梅壺で行われる。
芙蓉は、梨壺以外へ行くのは初めてなので、梅壺に行く道すがら、ついついキョロキョロしてしまいそうになる。
けれども、几帳に遮られて、何も見えない。
芙蓉が一歩進むごとに、几帳も動いていく。
芙蓉は、ふうーっと長い溜め息をつくと、あきらめてそのまま真っ直ぐ前を見て歩き出した。
女御ってめんどくさいなあ。
そんな気持ちが聞こえてきそうな溜め息である。
梅壺には、御簾でしきられた部屋の中に、屏風や几帳で、それぞれの女御の御座所を造られている。
芙蓉は、自分用に作られた御座所に入って行った。
中将や数人の女房たちが、芙蓉の後ろに控える。
他の女御たちも、それぞれやってきた。
帝の寵を競う女御方だけあって、さすがにみな華やかである。
他の女御方への対抗意識もあるからであろうか、一目で気合が入っていることがわかる。
藤壺の女御は、芙蓉から少し離れたところに座っている。
久しぶりに見かける藤壺の女御は、さすがに美しい。
新しく入ってきた女御とは言うものの、自分の妹であるということで、ゆったりと構えている。
他の女御たちは、桐壺の女御に興味津々である。
女房たちにいたっては、その興味を隠そうともしない。
かなり不躾な視線が送られる。
芙蓉はといえば、今まで左大臣邸の部屋の中で読んでいた絵巻物の中でしか見たことのない世界が繰り広げられていることに興奮していて、あまり気にしていない。
一応、扇で顔を隠すことは忘れていないものの、その目は扇の陰できょろきょろと忙しく動いている。
仕方ない・・・と中将はため息をつく。他の女御たちと女房たちの視線に萎縮されるよりはマシである。