第十八話
夜を待つ間に、後宮の女性たちの後宮勢力図についての中将による講義が行われた。
後宮には今現在、帝の女御が四人いる。
一人目は、左大臣の娘である藤壺の女御。帝と年も近く、二人の内親王を産み、今もっとも寵愛を受けている方である。
二人目は麗景殿の女御。
帝より少し年上で、一番早く入内した。
他の女御たちが入内して、影が薄くなってしまった方である。
亡き太政大臣の孫であるが、後ろ盾が弱く、最近は部屋に籠もりがちであった。
三人目は梅壺の女御。
内大臣家の娘で、何かと藤壺の女御をライバル視していた。
左大臣につぐ地位である内大臣の娘であるだけあって、後宮内での勢力も強い。
気が強くて、何かと派手好みな方である。
四人目は、王女御。
先帝の五の宮の娘で、承香殿に住んでいた。
気位の高い方である。
四人の方々は、表向きはそれなりに仲良くすごしていたが、水面下ではかなり激しいバトルが行われているという。
後宮での勢力図や帝の寵愛が、後見をしている者の宮廷における勢いにも関係しているだけに、女御自身はもちろん、側に仕える女房たちも、必死であった。
その中でも藤壺の女御は、内親王たちもおり、寵愛も深いだけに、他の三人に差をつけている。
そのせいか、比較的穏やかに生活されていた。
藤壺の女御腹の女一の宮と女二の宮は、まだ幼いので藤壺で母女御と共に暮らしている。三つと二つの可愛いさかりである。
東宮には、まだ芙蓉の他には女御はいない。
ここまで聞き終わるころには、陽がとっぷり暮れていた。
芙蓉は夕餉を食べて、衣装を整える。
いよいよ梨壺に渡るのかと思うとドキドキである。