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第百七話

そんな間も、東宮は芙蓉の手を離さない。


頭中将への牽制なのか。


東宮も芙蓉も、お互いのことを愛してるから嫉妬してしまう。


愛してるから独占したくなる。


その瞳に自分以外の人の顔がうつることが許せなくなってしまう。


けれども、愛してるから幸せになってもらいたくなる。


たとえ、そのせいで自分が不幸になったとしても。


東宮と芙蓉の愛は二人だけのものであって二人だけのものではない。


お互いを愛してるけど、それだけではなりたたない。


二人の愛は、左大臣の権力の維持という器があってこそ成り立っているのだ。


東宮が芙蓉を側におき続けるためには、左大臣が権力を持ち続けること。


頭中将が次代の権力者の座についてくれること。


それこそが重要。


だから、東宮は牽制するように見せつけるように芙蓉を抱きしめるけど、決して頭中将を左遷することは出来ないのだ。


愛してるから。


芙蓉を。


頭中将も、東宮が無事に帝になることを願わずにはいられない。


そうなれば、芙蓉が中宮になって、さらにさらに遠いところに行ってしまうとしても。


芙蓉がそれを望むから。


それが芙蓉の幸せだから。


まあ、一応、東宮も昔馴染みの大切な友ではあるし。


権力欲など、ほとんど持ち合わせていない頭中将ではあったが、大事な人たちを守るためなら、頑張らないわけにはいかない。


頭中将にとって、紅梅姫はかなり邪魔な存在であるかもしれない。


帝や東宮に入内されても、話がややこしくなるし、牡丹宮がかくまっていても恨まれかねない。


別に六の宮程度、恨まれたところで痛くもかゆくもないが、敵は作らないにこしたことはない。


結局、頭中将は紅梅姫をさっさと六の宮邸に返すことにした。


その上で、根回しをして紅梅姫が尚侍の地位につけるようにした。


帝の側に置くことになり、姉中宮にうらまれるかもしれないが、女御に上がられるより、ましだろう。


帝や東宮が手を出さなきゃいい話なのだから。


しかも、女御に手を出す貴族はなかなかいないが、帝が手をつけていない尚侍になら手を出すやつもいるだろうし。


自分が手を出す気にはさらさらならなかったけど。


さて、芙蓉は頭中将に紅梅姫のことは気にしなくていいから、さっさと御所に帰るようにと促され、東宮と二人で帰って行く。


芙蓉は女房装束のまま、うまく宮中に入り込み、するっと桐壺に戻った。


東宮は、芙蓉がいないことに慌てふためいて、唐突に出てきたため、ばっちりバレてしまい、周囲にこってりと叱られた。

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