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第百三話

我に返って、あたりを見回すともう一人、見物客がいることに気づく。


「六の宮さまの姫さまですわ」


牡丹宮が紹介する。


「すまないがあなたが入内しても、不幸になるだけだ」


そう単刀直入に言う東宮に、紅梅姫は笑みを隠さない。


「私、入内を嫌って家出して参りましたの。


こののちは桐壺さまの女房にでもなり、どこぞの大貴族の奥方になりとうございます」


そう淡々と話す紅梅姫。


彼女には彼女なりの覚悟があるのだろう。


しかし、そんな紅梅姫の甘さを牡丹宮が指摘する。


「紅梅姫。


重ねの色目のお勉強やお香のお勉強、縫い物くらいは、せめてお出来にならないと、女房にはなれませんよ。


宮中では何も出来ぬ女房なぞ邪魔です」


・・・なんだかどこかで見たことのある気がする姫君である。


デジャヴ???


頭中将も同じ人物を頭に浮かべているのか、顔をしかめる。


三の君みたいな姫君が、こんなところにもう一人いたとは・・・


牡丹宮に指摘されて紅梅姫は顔を歪める。


下手に口出しして、本当に桐壺に来られてはたまらない。


芙蓉は何も言わず、話の行方を見守る。


ただ、東宮がはっきりと断ってくれたという事実が、やたらと心にくっきりと刻まれる。


なんとはなしに、顔がほころぶ。


ふと気づくと、芙蓉はまだ東宮の腕の中にいた。


芙蓉は急に恥ずかしくなって、顔を赤らめる。


恥ずかしいから、東宮の腕から逃れようとするが、東宮は腕を離そうとしない。


牡丹宮は、そんな東宮を一瞥して、そのまま話を続ける。


簡単に家出と言っても、紅梅姫の父 六の宮は絶対に必死で捜索するだろう。


下手に手を貸したことがばれたら、政治問題にも発展しかねない。


「ホント、家出姫たちには困ったものですわ!」

牡丹宮が大袈裟にため息をつく。


芙蓉は、返す言葉もない。


紅梅姫は、気にする様子もない。


絶対、宮筋の姫はずぶとい!!

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