表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/117

第百一話

「だから私、家出いたしましたの」


「はひっ?!」


思わず、耳を疑う。


自分も家出中だけど。


「私、それで牡丹宮さまのところに来てみたのですわ」


紅梅姫はふふっと楽しそうに笑う。


「まさか桐壺さまにお会いするとは思いませんでしたけど」


そんな言葉に、芙蓉は苦笑いするしかない。


「私、もう父のもとに帰るつもりはございませんの。


で、私を真ん中にしてくれる人を探す手助けをしていただこうと思いまして」


穏やかに微笑みながら、しれっとそんなことを言ってのける。


「宮筋の姫君って、むしろ・・・」


ものすごーくしっかりしすぎててコワい。


そんな口をついて出ようとした一言を、芙蓉は寸前で飲み込んだ。


側にいた頭中将は何も言わずうなずいている。


「って・・・牡丹宮さま、どうなさるおつもりですの?」


牡丹宮のほうを振り返る。


「どう・・・しましょう・・・」


牡丹宮にしては弱気な発言。


「牡丹宮さまのところにいらしても、殿方と会えるようには思えませんけど」


もしかしたら東宮に入内するかもしれない姫君に、芙蓉はどうしても心から優しい気持ちになれない。


「そうでございますわよね!


で、私、いい考えを思いつきましたの」


なんとなく梅壺の女御を目の前にしているような気分がしてきた・・・


そんな、ものすごく嫌な予感を覚えながら、芙蓉は話しを聞く。


「私、桐壺さまに女房としてお仕えすればよいのですわ!


宮中にいれば、殿方との出会いのチャンスも大幅増加間違いなしですもの!」


そう言って紅梅姫は、はしゃいでいるけれども、芙蓉ははしゃぐ気分ではない。


東宮と出会っちゃったらどうするんだ。


牡丹宮も、頭を抱えている。


頭中将にいたっては、いつのまにか姿を消しているではないか。


ずるいっ!


私も、消えちゃいたい!


ちょっと本気でそう思い始めている芙蓉。


紅梅姫は、嬉々として一人はしゃいでいる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ