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34 消耗

(くそっ、ホリー!!)

 振り下ろされる棍棒を確認し、寛介はさらに速度を上げてホリーのもとへ向かうが、僅かに時間が足りない。

「くそ、間に合わないっ!」

「[雷撃(ライトニング)]!」

 その声が聞こえたかと思うと寛介を掠めるようにして、閃光が走る。それは寸分違わずに小鬼の頭を打ち抜いた。高電圧により小鬼は炭化し、崩れるように倒れた。

「ありがとう、ララ!」

 ララの魔法により辛うじて間に合った寛介はホリーをかばうように魔獣たちの前に立ちふさがる。

「カンスケ……」

 涙を流しながらホリーは消え入るような声で寛介の名前を呼ぶ。

「遅くなってごめん」

 寛介は謝罪すると、襲い掛かってくる魔獣をものともせず倒していく。

 

 しばらくすると、魔獣たちの様子がおかしいことに気が付いた。寛介が攻撃をしていない魔獣たちまで、その場に倒れていくのである。大量にいた魔獣の全てが倒れ、地面へ吸収されていった。

「一体何が……」

 寛介が逡巡していると、耳と尻尾をピンと立てたノノが警戒の声をあげる。

「カンスケ様、何かきます!」

 すると地面が割れ、何かが寛介へ向かってきた。ノノの声のおかげですんでのところで回避することができたが、目の前の光景に目を見張った。

「っ!」

 荒野の辺り一面から人間の太もも程度の太さを持つ蔓が地面から生えている。

「カンスケさん、あれが巨人樹の本体です!」

 ララが示す方向に目を向けると、遠近感が狂ったかと思うほどの大きさの巨木が現れていた。

「キャー!」

 背後の叫び声に嫌な予感がしながらも顔を向けると、ホリーが蔓に締め付けられていた。

「ホリー! くそっ、邪魔だ!」

 助けるために近づこうとするが、その寛介を大量の蔓が阻む。切っても切っても襲い掛かってくるそれに、寛介は押されてしまっている。

 

「はあっ!」

「[エアバースト]!」

 ノノが軽やかな動きで近づくとホリーを捕えていた蔓を、双剣を用いて鮮やかに刈り取り、ララが魔法で周囲の蔓を吹き飛ばした。

 だが、この行動により彼女たちもまた攻撃対象となってしまう。再生した蔓が彼女らを捕えようと襲い掛かってきた。

「ナル!」

『オッケー!』

 [限界突破]が発動した寛介の全ての力が強化される。三人を襲う蔓へ一瞬にして近づくと、またたく間に全てを切り落とした。


 切り落とされた蔓は再生し、寛介たちを襲う。寛介はその蔓を切り落とし、蔓はまた再生する。この繰り返しがしばらく続いた。

「くそ、キリがないっ」

『ご主人様、もうすぐ時間切れだよ』

 繰り返すうちに、スキルの効果時間もあとわずかとなってしまった。寛介は焦った様子でララへ尋ねる。

「ララ、しばらくの間ノノとホリーを守れる魔法は無いか?」

 急に尋ねられたララは慌てながらも、思案した後、はっきりとした口調で答える。

「あります、魔法ではないですけど……」

「本当か!? 頼む、このままじゃいずれ押し負ける、だから俺は直接アレを切ってくる!」

「そんな、カンスケ様、危険です!」

「ノノ、ララ、……ホリーを守ってやってくれ!」

 寛介はそういうと巨人樹へ向けて走り出した。寛介を追う蔓もあったが、多くの蔓がノノたち三人を捕えようと襲い掛かる。

 ララは、ノノとホリーへ抱き着きながら、

「少し、我慢してくださいね」

 というと、目をつぶった。


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