30 ビンタ
一つの目標であった総合評価100ポイントへ到達することができました。
次は500ポイント目指して頑張ります!
今後とも努力していきますので、評価・ブックマーク・アドバイス等是非宜しくおねがい致します。
美子の様子を確認した後、魔獣の打ち漏らしが無いか、警戒をしながらメソへの帰路につく。寛介がメソの町へ戻ると、人影が走り寄ってきた。
「カンスケ様!」
ノノが寛介へ抱きついてくる。寛介が頭を撫でると、彼女は心底嬉しそうな表情を浮かべた。
「トラさんは大丈夫か?」
「はい、治療して今は眠っていらっしゃいます」
ノノは赤い顔を寛介の胸にうずめながら答えを返した。しばらくされるがままであった寛介へ、声がかかる。
「カンスケ……」
「ホリーさん」
ホリーが涙目で寛介を見つめていた。
「怪我はない、みたいね」
「ああ、俺は大丈夫」
「これで三回目だね、助けてもらうの、本当にありがとね」
「礼なんて……」
二人が話をしていると、辺りがざわつき始める。
「おい、あいつ。王国から手配されてる、王殺しの」
「いやでも、手配は解除されてたはずだよ」
「何か怪しいから手配されたんだろ? 結局は危ない奴じゃないか」
「ああ、それにこないだホリーちゃんを襲ったやつだ」
「それにあの亜人、さっきカンダさんのところの社員を連れて帰ってきたやつじゃないか、犯罪者の仲間だったのか!?」
話は段々と尾ひれがついて大きくなり、騒ぎは町中に広がっていった。
「待ってよ、皆! この人は――」
「かわいそうに、脅されてるんだろホリーちゃん、今助けてやるからな」
(しまった、フードさえ被っていれば……)
自身の油断に心のなかで舌打ちをしながら、対応を考える。
「おい、犯罪者! 今すぐホリーちゃんを返せ!」
いきり立った青年が、寛介へ殴りかかってくる。寛介は防ぎもせずに、頬で拳を受けた。
「ちょっ!?」
「カンスケ様!?」
「大丈夫、下がってるんだ、二人とも」
殴られても痛がる素振りすら見せない寛介に自尊心を傷つけられた青年は、更に逆上し寛介を何度も殴打し続ける。
「くそっ!クソっ!」
息をきらした青年の手が止まる。腫れた顔で、しゃべりにくそうにしながら寛介は口を開く。
「満足したか? なら話を聞いてほしいんだけど」
「うるせぇ! 誰がお前の話なんて聞くかっ!」
「やめんかい、ゴラァ!」
周りで野次を飛ばしていた見物人たちだけでなく、我を忘れて暴走する男ですら驚いて振り向くほどの怒声がその場に響き渡った。
「あんたは、カンダさんのところの、もう体は大丈夫なのか?」
「おかげさんでな。ところでワイを助けてくれた恩人囲んでオドレら何やっとるんや」
「何を言ってるんだ、こいつは――」
「魔獣の群れにやられかけとったワイを助けてくれたんは、この人や」
野次馬の間でざわめきが起こる。自分たちが囲んでいる人物がトラの恩人であるとすれば、この町を救った恩人ということだ。その場にいたほとんどの人間が混乱していた。
「そんなの関係ない、ホリーちゃんへひどいことをしたことにはかわりないんだ!」
自己満足の義憤に燃え、もはや引くことのできない青年は自分の非を認めようとしない。ホリーは青年へ近づいていき、手を振り上げる。
「え?」
バチンと高い音が鳴った。痛みよりも、驚きの方が大きかったのか、青年は目を丸くしている。
「いい加減にして! 少しは彼の話しを聞いたらどうなの!?」
鬼気迫る勢いに、青年は何も言い返せず黙り込んだ。 そんな中、野次馬の中から男が一人声をかけてくる。
「なら、俺が聞こうか」
「父ちゃん!?」
「セガールさん……」
父親が言うならと野次馬たちはその場を離れていき、寛介たち一行は、続きの話はセガールとホリーの家でするとして、その場から移動することになった。