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28 本題

 声の主を確認すると、カナエが慌てて叫んだ。

「危険だ!」

 寛介は頷きながら、ラザールを確認する。

『魔力が暴走しているのか? 』

『そうみたいだね、この間のと同じ状態だよ』

『頼めるか?』

『まっかせてー』

 寛介は魔族へ剣を突き刺す。ナルにより呪具の経路が切断されると、呪具の魔力増幅が止まる。

 やがて覚醒珠の効果は消失し、暴走していた魔力は次第に落ち着きを取り戻していった。ラザールは気を失うようにその場に倒れ込んだ。

「なんとかなったか……」

「なんとかなったか、じゃない!」

 その声とともにカナエの拳が彼の頭に落ち、鈍い衝撃と痛みが走った。

「成功したから良かったものの、失敗してたら跡形もなく吹き飛ばされていたんだぞ?」

「ごめんなさい……」

「だが、助かったのは事実だ。ありがとう、寛介」

「カナエさんが無事でよかった、――ッ!?」

 寛介は突然カナエから顔をそむける。その顔は真っ赤になっていた。

「ん? どうした、寛介」

「か、カナエさん、ふ、服が!」

「何? 服がどうした……ああ――」

 自身のあられもない姿に気がついたカナエの頬は少し赤く染まり、腕を組むようにして大きな胸を隠した。

「と、とりあえず、これを」

 そう言いながら、寛介は着ていた外套をカナエへ差し出す。

「ありがとう、助かる」


「ともかくだ、もうあんな危険な真似はしないように」

 受け取った外套を着用したカナエがそう言った。

「……」

 不満顔の寛介へ、呆れたようにカナエが言い含める。

「そんな顔をするな、状況を適切に判断しろと言うことだ。この魔族が爆発していても、私だけであれば耐えきれた。自分の命を簡単に賭けるんじゃない」

「カナエさんは大事な人だ、別に簡単に賭けたわけじゃない」

 予想外の不意打ちを受けたカナエの頬は真っ赤になる。その顔を寛介に見られないよう背を向けた。気恥ずかしさからか、怒りの声も小さくなる。

「ば、馬鹿、そういうことじゃなくてだな……」

「ん? どうしたんだ、カナエさん?」

「なんでも無い!」

 あまりにも無神経な態度に、イラッとしたカナエは寛介を突き放した。取り付く島もないその態度に、寛介は口を閉ざすしかなかった。

(……ノノちゃん先輩も、魔女さんも大変だなー)

 やり取りを見ていたナルは、そんなことを胸の内で考えていた。自分の胸もモヤモヤとざわめいている気もしたが、気のせいであると無視をすることにして。


「カンスケ、無事で良かった!」

 カナエと寛介が屋敷に入ると、出迎えたマクスウェルが寛介の手を握る。

「すまない、危険なことは全て任せてしまって……」

「ああ、本当にな」

 寛介はニヤリと笑いながら、軽口を叩いてみせる。顔を見合わせた二人は、こらえきれなくなってどちらからともなく笑い声を上げた。

「カナエさんと話はできたのか?」

「それが、話そうとしたときに襲撃があってね」

「なら、続きを話すとしようか」

 そう言いながら、カナエが応接室へ入ってくる。服装が変わっており、体のラインが際立つロングドレスに、品のあるボレロを纏っていた。

「ほら、返すよ寛介」

 そう言うと、寛介から借りていた外套を手渡す。先程までカナエの胸部が直に触れていたことを思い出した寛介は気恥ずかしそうに受け取った。

『スケベ』

『うるさい……』

 ナルの言葉に、後ろめたい気持ちしか無い寛介は力のない声色でそういうのが精一杯だった。


「それでは、話の続きといこうじゃないか」

「はい。ですが……」

 マクスウェルは寛介を気にしながら、言葉を濁す。

「ああ、心配しなくていい。寛介には私の過去を既に伝えている」

「そうでしたか。それでは改めて」

 マクスウェルはカナエの目を見て、口を開いた。

「本日は、私達王国融和派へ星の勇者としてご協力をいただきたく、お願いに参りました」

「ほう? お前が私にそれを言うのか」

「っ!?」

 あまりにも冷たい、想像すらしていなかったその一言にマクスウェルは何も返答することができない。

「カナエさん!?」

「黙っていろ、寛介」

 一言で寛介を制すると、カナエは冷たい表情のまま言葉を続ける。

「結局はお前も賢者と同じく、私の力を利用しようというのだろう?」


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