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20 防衛

 ――マクスウェルに依頼され、有事の際の後詰めとしてリアンで待機していた左目から頬にかけて大きな切り傷を持つ大男ベン・ブラウンは拳を手のひらに叩きつけ、意気込んだ。

「よおし、久しぶりに思い切り暴れられるなぁ」

 ベンは名の通った元軍人で、現在は王国融和派として活動しながら、冒険者としての顔も持っている。リアンの住民にもその実力はよく知られていた。そのため彼がいるならと住民たちは安心し、メソに比べ、大きな騒ぎとはなっていなかった。。

(とはいえ、数も数だ。こちらももっと戦力が欲しいところだが……)

 戦力として数えられるのはベンを入れて数人、彼我の戦力差としてはメソの町よりもひどい有様である。

(やるしかないな、こんな肌がヒリつく戦いも久しぶりだ)

「行くぞ!」

 武器の大剣を背負い、ベンは冒険者を引き連れて魔獣の群れへ攻め込んだ。

「おらぁ!」

 ベンが大剣をフルスイングすると、何匹もの魔獣が吹き飛ばされて息絶える。冒険者たちも果敢に立ち向かっているが、倒しても倒しても、更に背後から襲いかかってくる魔獣に数で押されている。ベンは冒険者たちに向かって叫んだ。

「必ず複数人で背後をカバーしながら戦え! 数は俺が減らす、打ち漏らしの各個撃破を頼んだ!」

 そう言うとベンは魔獣の群れへ突撃する、身の丈ほどある大剣を豪腕で振り抜くたびに複数の魔獣が散る。鬼神の如き攻めを命からがらかいくぐった魔獣たちも冒険者たちに討ち取られていった。


「終わったか……?」

 三十分ほど戦い、ようやく最後の魔獣を討ち取った。

 息をついたベンは冒険者たちへ労いの言葉をかけようとするが、

「っ!?」

 濃密な殺気を帯びた気配を感じ取ってとっさに身構える。

「あれだけいてこのざまとは、所詮は出来損ないの獣か」

 現れた男は、褐色の肌に額から生えた二本の角を持っていた。細身ではあるが、ひ弱ではない。むしろその逆で、見るからに凶悪な強さを持っていることがわかる。

「亜人……、いやこの雰囲気は、魔族。その角、鬼人種か」

「それを知ったところで、どうする? お前はここで終わりだっつ―のによぉ!」

 そう言葉を発した瞬間、男は五メートルほどあった距離を詰めてベンへ急接近する。

「っ!」

 そして目で追うことも難しい高速の鋭く硬い貫手が、ベンの腹部へ襲いかかった。

「なにっ!?」

 しかし、その貫手はベンの腹部を貫くどころか、傷をつけることすらできなかった。男は「ありえない」と目を見開いた。

「生身で俺の攻撃を防げるわけがねぇ、お前、本当に人間か!?」

「失礼なやつだ、俺はれっきとした人間だ。さて、次は俺の番だ、なっ!」

 言い終えると同時に、ベンが強烈なボディブローを叩き込む。鈍い音が周囲に響き渡った。

「がはっ!」

 男の体が、くの字に折れ曲がり、膝から崩れ落ちる。さらに頭を掴み、膝蹴りで追撃する。よろめいた男は後方へ倒れこみ、後頭部を地面に打ち付けた。

「おお!」

 冒険者たちから歓声が沸いた。

「さすがベンさんだ! 魔族を圧倒するなんて!」

(いや……)

 彼らの明るい表情とは対照的に、ベンの様子は優れない。彼はさらに追撃を加えるため、男へ接近するが、途中で断念する。冒険者たちはわが目を疑った、男が立ち上がったのだ。

「あー、痛ぇ……」

 その立ち上がり方はまるで朝ベッドから起き上がるかのように自然な動きであった。

 男は首を左右に曲げて鳴らしながら、不敵にベンを見据えた。

「全く、油断したぜ。人間にしてはやるじゃねぇか」


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