7 再認識
ようやく野宿に適した場所を見つけた一行は進行を中断し休むことにした。ノノは手慣れた様子で火を起こし、食事の準備を始める。
「ところでカンスケさんはなぜ冒険者に?」
「確かに時間もあるし話しておかないとな」
ララは一喜一憂しながら寛介の話を聞いている。中でも賢者の話になると、まるで自分のことのように感情移入した様子を見せた。
寛介がすべてを語り終えると、ちょうどノノも食事の準備が終えたようだ。
「簡単ですがご飯ができましたよー」
簡単といっても野宿で温かい食事が出てくることは珍しい。これを可能にするために、ノノはバックパックの中に調理器具一式を入れ持ち歩いている。
食材は現地調達することになっているので野宿場所を確保するのに時間がかかるということが難点だが、旅先でおいしい食事がとれることは旅慣れない寛介にとってはとてもありがたいことだ。腹持ちのする保存食も持ち歩いているので、食材調達ができない場合も心配はなく、問題が起こったことはない。
「すごく美味しい」
ララも温かい食事に最初こそ戸惑いを見せたが、食べ始めると手が止まらない様子だ。
「四人だからできるだけ多めに作ったんですが、満足されましたか?」
「ああ、十分だ」
「私はそもそも食事をとる必要がないからねー」
寛介とナルの答えを聞いたララも続くように返事をする。
「は、はい。とても満足しました」
しかし、鳴り響く腹の音がその言葉が嘘であるということを証明してしまう。
三人の視線を浴びたララが顔を赤く染め、恥ずかしそうに俯いてしまう。正直、寛介は心の中で「まだ食えるのか……」と呟いたが実際に言葉にすることはない。
「次からはもっとたくさん作りますね」
ノノも自分の作った食事を喜んで食べてもらえて悪い気はしない。
「いえ、本当に――」
また正直な腹の虫が鳴いている。もはや言い逃れはできない。
「よ、よろしくお願いします」
三人から暖かい視線を向けられたララはいたたまれない様子で顔を強く赤らめていた。
「ところでカンスケさん、ガウスという者のことですが」
まだ少し顔が赤いララが、切り替えようと話を切り出す。
「冥界軍の四死将の一人と同じ名前ですが、偶然でしょうか」
「なっ!?」
想定外のララの発言に寛介は言葉を失う。
外見などの特徴も一致し、どうやら同一人物である可能性が高い。もしこれが事実であれば、王国では救世主のような扱いを受けているというガウスが冥界軍の幹部、繋がりがあるなどという程度の話ではないということだ。
「それって賢者は人間じゃないってこと?」
その場を代表してナルが疑問を尋ねる形となった。
「いえ、魔王の邪法により不老長寿の力を得ている点を除けば、ガウスは紛れもなく人間です」
邪法とは魔王が用いることができると言われている強力な魔法で、生や死を直接操る力を行使できる力である。
本質的には魔法と変わらない(魔法陣を用いて発動される)が、あまりの強力さと恐ろしさから区別されている。
「カンスケ様、それって……」
「ああ、認識を改める必要があるな。これは冥界軍による再侵攻なのかもしれない」