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3 地下へ

 森へ入った一行であったが、そこは昨日と変わらず静まり返っている。失踪者が出ている森とは思えないぐらいで、逆に不気味さを醸し出していた。

「蛇は臆病な性格をしているものもいると聞いたことがある。初めは警戒して人間を襲うことはなかったんだろうけど」

 寛介は考えを整理しながら、ゆっくりと話し始めた。

「今回のことで人間の()を覚えたかもしれない。次は村が直接襲われる可能性がある」

 ここでいう味というのは、美味かどうかだけでなく餌として確保することが容易であるという意味も含まれる。寛介は元居た世界で聞いた人喰い熊の話を思い出していた。

「大変じゃないですか! すぐに村の人に伝えましょう!」

 ノノが焦ってそう提案するが、寛介が首を振る。

「それを追うように“食料”を求めて移動するだけだ、そして次は他の町の人が犠牲になるだけだろう。やはり俺たちで何とかするしかない」

 ナルが「そうはいってもさー」と口を開く。

「どこにいるかもわからないのに一体どうするつもりなの?」

 寛介もそれを先ほどからずっと考えていた。しかし、疑問を解決するだけの材料を誰も持っていないため結論は出ない。

 ノノが鼻や耳をいじっている、それが目についた寛介が何をしているのかとノノに尋ねる。

「いや、うちの鼻や耳が詰まってるのかなって」

「ノノちゃん先輩ってほんと天然だよねー」

 その会話を聞いていた寛介はハッとなる。

(ノノの探知能力は発達した鼻や耳の能力によるもの)

 ノノは周囲を警戒する際は野生の勘などではなく、空気中を漂ってくる匂いや音を頼りにしている。

(つまりノノが感じているのはあくまでこの森に大蛇がいるかどうか、だとすれば――どこかにきっと入り口があるはずだ)

 状況証拠から結論を導きだす。根拠としては薄いが、手詰まっているこの状況ならば確かめる価値は十分にある。

「ノノ、ホリーさんに似た匂いは感じるか?」

 突然の寛介の質問に、戸惑う様子を見せたノノであったが集中して周囲の匂いを嗅ぎ分ける。

「っ! うっすらとですが、感じます!」

「それを辿ってくれ」

「はい! わかりました!」


 ノノに従って歩いて行くと、この森には似つかわしくない大岩に突き当たる。

「この岩の周りで匂いが途切れてますね……」

「ナル、この岩は魔法で作られたものか?」

「恐らくね。この岩からは薄く瘴気を感じるよ」

 隣のナルがそう答えた。

「読みが当たったか」

『さすがご主人様、鋭い読みだったね』

 いつの間にか剣状態になっていたナルが話しかけてくる。説明を待つことに耐えられず、パスを介して直接寛介の思考を読んだようだ。

 寛介はおもむろに岩に手を当て、スキル[鎧通]を発動した。

「キャッ!」

 魔力を込めすぎたのか、爆発するように破壊された大岩にノノが驚く。

「あったぞ、地下への入り口だ」

 破壊された大岩の下から、地下へ続いているであろう穴が現れた。

現れた穴を通って恐る恐る寛介たちが中へ入っていくと開けた空間に出る。

「カンスケ様、ホリーさんに似た匂いが奥へ続いています」

「先へ進もう」

 周囲を警戒しながら、先へ進むことにする。広い空間と空間が細い道でつながっていた。まるでアリの巣のようだなと思いながら進んでいくと、ナルが急に立ち止まる。

「っ! 何これ……」

 ナルの目には、瘴気が強風に乗り押し寄せてくるようなイメージが見えていた。つまりはこの通路の先に、強力な魔獣や魔族がいるということだ。

 戦闘態勢を取りながら、通路を抜けるとそこにいたのは寛介たちの予想をはるかに超えたものだった。


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