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43 再会

「申し上げます、北門は陥落の危機であります!」

(マクローが遅れをとったのか……?)

 マクローとフリードはともに一兵卒の時から戦場で一騎当千のはたらきをし続け力を認められた、所謂たたき上げの男だ。

 帝国は今もなお領土を広げるために局地的な争いを繰り返している。敗戦ももちろんあったが、“(マクロ―)が負けた”ところを見たことがないフリードが驚くのは無理もないだろう。

 そんな男を倒すことのできる相手、その脅威度は非常に高いと予想される。焦りを禁じ得ないフリードだったが、周りの兵士に動揺を広げないよう、できるだけ落ち着いて口を開く。

「北門へ行き、救援を行う」

 その言葉に周囲がざわつく。兵士たちもマクローの強さを十分すぎるほど理解していた。

だからこそ、このままフリードまで敗北してしまうのではないか、そのような重い空気が周囲を包む。

「俺も行くよ」

 そのような空気を意に介さず、寛介は動向を申し出る。

「いや、それは――」

 明らかな危険が予想される戦場である。一瞬逡巡したフリードだったが、

(いや、命の恩人を子ども扱いは失礼極まるな)

「――私は、冒険者カンスケ殿と共にマクロー大佐の救援へ向かう。動けるものは南門の守りを固めてくれ!」

ありがたく申し出を受けることにしたフリードは、兵士たちへ大きな声で命令したのだった。


 目的地へ近づくにつれ、寛介たちは異様な大きさの力を感じていた。

フリードは険しい顔をさらに引きつらせて口を開く。

「そろそろだ、十分に気を付けてくれ」


 襲撃を受けた北門前は倒れた兵士たちで埋まり、見るも無残な光景が広がっている。

その場に立っている者は二人のみだったが、今、ついに一人になった。

返り血をまとったその少女は空虚な目でうつ伏せに倒れた兵士を見下ろしている。

少女の顔を見た寛介は目を見開いた。

「あれは――」

 とどめを刺そうと少女は手に持った細剣を振り下ろした。

「美子っ! やめろ!」

すんでのところで、寛介は力いっぱいに妹の名前を叫んだ。

「っ!?」

 声に驚き、美子と呼ばれた少女の剣が止まる、後数秒遅れていれば倒れた男の命は失われていただろう。

 フリードたちもその様子を見て驚いている。

「その子が……」

「カンスケ様と雰囲気が似てらっしゃいますね」

美子の眼に光が宿る。声のした方へ顔を向けると寛介と目が合った。

「寛にぃ!? え、なんで――」

 手に持っていた細剣を捨て、美子は寛介に抱きつこうと駆け寄る。

しかし、念願の再開を果たした兄妹が抱きしめ合うことはできなかった。

「ぐっ! うああ!」

 美子は突然頭を抑えて苦しみ始め、その場にうずくまる。その身体はうっすらとした光に包まれていた。

「美子! 大丈夫か!?」

「か、寛にぃ、い、生きてたんだね……」

 痛みに耐えながら、寛介の顔を見て美子は口を開いた。

しかし、痛みが治まる気配はない、むしろ段々と酷くなっていくのが見てとれた。もはや口を開くのも辛そうだ。

「これは、呪術系統の魔法ね」

 美子の様子を見ていたナルがそう口にする。

「わかるのか!?」

「この薄暗い魔力はたぶん。といっても、ご主人様たちにはわからないよね。感覚的なものだし」

「さっき魔具みたいに、なんとかできないか?」

「んー、それは難しいんだよね」

 ナルが苦い表情を浮かべながらそう言う。

「ご主人様は魔法って何かちゃんと理解してる?」

「ああ、一応教えてもらったからな。魔法は――」


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