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41 謀略

 ――事の経緯をフリードが説明し終わると、おもむろに寛介に頭を下げる。

「北と南からの襲撃、まさか魔族が攻めてくるとは思わなかったが、君の情報で臨戦態勢を敷いていなければ、後手に回って更に甚大な被害となっていたことだろう」

「まさか、魔族までこのタイミングで攻めてくるなんて……」

 二人が話していると、ボーマンが大剣を支えに立ち上がる。その呼吸は荒く、立っているのがやっとの様子だ。額に青筋を浮かべ、怒りを乗せて言葉を発する。

「我にとどめを刺さずに談笑とは、余裕のつもりかっ! 人間っ!」

「まだ立つのか!?」

「さすがは魔族といったところだな」

 起き上がったボーマンに驚愕し、寛介が身構えるのとは対照的に、フリードは驚くほど落ち着いている。まるで立ち上がることがわかっていたかのような様子だ。

「我は冥界軍の騎士であるぞぉ! このままではすまさん!」

 血走った目で二人を睨みつけながら、懐から何かを取り出した。

 ボーマンはその魔具に力を込めると、身体を淡い光が包み込んでいく。

「覚悟しろ貴様ら、魔王様から授かった覚醒珠で……」

 取り出された魔具を見て、寛介は自分の目を疑った。覚醒珠と呼ばれたそれが、先日森でバーサクから襲撃を受けた際に部下の男が使用した魔具と同じ形状をしていたからである。

(どうして魔族が……?)

「すごい、力が溢れてくるぞ――」

 包み込んだ光は次第に熱を持ち始め、それはみるみるうちに大きくなっていく。

「っ!?」

 初めこそ力が湧き上がったかのように感じていたボーマンも、たちまちうめき声を上げて膝をついた。

「――うわあ、これは……」

 焦る寛介のもとへ、ぴょこぴょこと駆け寄ってきたナルがボーマンの様子を見てオゲェと舌を出す。

「起動者の魔力を増幅しながら循環を繰り返して、耐えられなくなったところで暴走・爆発させるなんて、とんでもない道具だね」

「止める方法はあるのか?」

「うーん、魔具とあの魔族の間につながってる魔力の経路を断ち切れば止まるかもしれないから――」

 ナルの目は魔具とボーマンの間の魔力の流れを捉えていた。

「私の能力を使えば、なんとかできるかもね」

 失敗したら死んじゃうけど、と続けたナルに対して寛介は間髪をいれずに尋ねる。

「どうすればいい?」

「即決かあ、流石だね。ご主人様は何も考えずに私で斬りかかってくれたらいいよ」

 はいどうぞ、とナルは自分の小さな手を寛介に差し出した。その手を取ると、ナルはその身体を一瞬にして剣に変える。しっかりと剣を握り締めた寛介は迷わず、その剣を打ち下ろした。

「き、貴様っ――」

 ボーマンは不意の攻撃に驚きを見せた。握っていた魔道具はポロポロと崩れ、彼を包んでいた熱が、何事もなかったかのように霧散していく。

「何が起こったんだ……?」

 寛介が困惑していると、握った剣(ナル)からの念話が届いてくる。

『[魔力喰い(マナイーター)]だよ』

 対象から魔力を奪うスキル、[魔力喰い]。これにより魔力経路を構成していた魔力を奪われ、魔具の動作が停止した。

 増幅されていた魔力を失って魔力欠乏を起こしたボーマンは気を失い、その場に倒れ込んだ。


「わかってたことだけど、魔族の魔力、マズ―い!!」

 人型に戻ったナルがしかめっ面をしながら口をゴシゴシと擦っている。

「……助かった、ありがとうな」

「ふふん、どういたしまして」

 わかりやすく得意気なナルに、自然と寛介の口角も上がる。

「カンスケくん、今のは一体――」

 

「フリードさん、どうやら王国は冥界軍と繋がっているのかもしれない」

「……それは、どういうことだ?」

 当然の疑問である。すぐに受け入れるわけもなく、フリードは寛介に説明を求める。

「あの道具は自爆攻撃用の魔具で、俺は王国からの追手が持っていたのを見たんだ――」

 寛介は賢者から差し向けられたバーサクとの戦いをかいつまんで話す。説明を聞いたフリードは頷き、微笑んだ。

「君は俺の命の恩人だ、ありがとう」

 フリードが寛介に手を差し伸べる、寛介はその手を取り、ガッチリと握手をした。そうしていると、魔獣の軍勢を相手にしていた、兵士たちの方から歓声が上がった。

「終わったか、さぁカンスケくん兵士たちに紹介するよ、向こうへ行こう」


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