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34 一転

「準備もできたし、そろそろ行くか」

「そうですね、日が暮れる前に終わらせましょう!」

 二人はギルドを出発し、南門まで歩いてきた。帝国でも亜人への差別意識はあるようだが、ノノを見てヒソヒソと話している声は聞こえてくることはあっても、特に絡まれることはなかった。

 南門を出ると草原の中に一本街道が続いており、遠くに小さく森が見える。あの森が依頼のコボルドが住み着いてしまった森であろう。寛介たちは森に向かって歩をすすめることにした。

「それにしても住み着いたコボルドってどのくらいなんだろうな」

「コボルドは繁殖力がとても強いと言われてますので、住み着いてからの時間次第では恐ろしく多いかもしれません」

「そうか、気をつけないとな。無理するなよ、今日は遠くから弓で援護してくれ」

「わかりました、カンスケ様もどうかお気をつけて」

 歩いていると森に到着した。街道から森に向けて獣道が何本か続いている、狩人たちはいつもこの辺りから森の中へ入っているのだろう。寛介たちも一つの獣道から森へ入ることにした。

「おお、案外広いんだな」

 街道から森を見たとき木々が密集してるかと思われたが、中は意外と広い空間もあり、歩きやすくなっていた。ノノは鼻を鳴らしながら、森の奥を睨み、耳をピンと立てる。

「カンスケ様、奥から臭います、近いです」

 ノノのその合図に合わせて、寛介は右手に剣を構えた。木の陰からコボルドが飛び出して、襲い掛かってくる。寛介は構えた剣でコボルドを両断する。

「カンスケ様! まだ来ます!」

「ああ!」

 寛介の両側面からコボルドが二体襲いかかる、寛介は右側面のコボルドに回し蹴りを見舞い、左側面のコボルドに剣を突き刺した。

 回し蹴りを食らい吹っ飛んだコボルドは、背を向けて逃げ出しはじめる。

「逃しません!」

 ノノの射た矢がコボルドの右腕に突き刺さる。悲鳴を上げながらも、スピードを緩めずそのまま逃げていった。ノノはシュンとしながら謝罪を口にする。

「すみません、カンスケ様……逃してしまいました……」

「気にするな、それに見ろ」

 寛介はコボルドが逃げていった方向を指差す。コボルドは森の奥に逃げていったようだ。

「住み着いてるってことは仲間のところに逃げた。血の跡を追えば一網打尽にできるかもしれない、お手柄だな」

 思いがけず寛介に褒められたノノは非常に嬉しそうだ、先程まで倒れていた耳がピンと起き上がっている。

「あ、ありがとうございます!」

「まずは今倒したコボルドの耳だけ切り取ろう」

 寛介はコボルド二体の右耳を切り取った。生き物へ刃を入れる事にもう抵抗感は無い。切り取った耳は、予めジョゼフィーンから預かっていた麻袋に入れた。

「これでよし……っと」

 麻袋をウエストバッグに括り付け、寛介たちは先へ進むことにした。先程のコボルドの血痕を頼りに進んでいく。


 血痕を追い進んでいると、ノノが何かを感じ取る。地面を指差し、小声で寛介にそれを伝える。

「カンスケ様、そこ危ないですよ」

 ノノが指を指したところには落とし穴があった、穴の底には先の尖った杭が設置されており、落ちたらただでは済まなかっただろう。

「全然気が付かなかった、よく気がついたな、ありがとう」

「うちたちも狩りのときにこういうのを作ってたので」

「それにしてもコボルドは罠を使うのか。案外賢いのか?」

「いえ、これは狩人が仕掛けたものだと思います、少しわかりにくいですが目印があったので」

 他にもあるかもしれません気をつけましょう、とノノが言い、二人は再度進み始めた。

その後も様々なブービートラップがあったがノノの観察力で回避することができた。その中で寛介やノノは少しずつ違和感を持っていった。

「ノノ……、おかしくないか?」

「はい、うちもそう思います」

 回避してきた罠は落とし穴やトラバサミなど野生の動物向けの罠などがほとんどである。しかし、問題はその配置であった。途中からコボルドの血痕は消えており、まるで罠が二人を誘い込むように設置されていたのである。

「戻るか……?」

 しかし、寛介たちに悩む時間は与えられなかった。

「え!? そんな――」

 ノノが動揺する声を上げる。

「囲まれた!?」

「そんな、気付けないなんて……」

 ノノが混乱している、今までは優れた嗅覚と観察力で接敵に気づいていたのだから当然である。

「ノノ、落ち着くんだ。こうなったらやるしかない」

 そう言って覚悟を決める寛介の前に現れたのはコボルドだけではなかった。コボルド、ヘルハウンド、オークを従えた鎧を身に着けた男が現れる。

 姿だけを見れば帝国の騎士に見えないこともない。しかし、浅黒い肌に頭部から生える二本の角といった身体的特徴が、目の前の男が“人間”ではないと伝えてくる。

「こいつは……やばいな……」

「――ッ!」

 鎧の男から溢れ出している瘴気にあてられたノノは声をだすことができない。

 寛介は冷や汗をかきながらも、剣を構え男へ問う。

「何だ……お前たちは、ここで何をしている」


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