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22 グルメ

 現れたのは大きいトカゲのような魔獣である。

「ドラゴン?!」

 寛介は叫んだ、ノノは肯定する。

「はい、鈍竜(スロードラゴン)ですね。竜種の中では下位の方なはずです」

 鈍竜が襲い掛かってくる、寛介たちは避けるのでやっとだった。

「おい、どこがスローなんだ」

「違いますカンスケ様、速度じゃなくて……、えい!」

 ノノが矢を放つ、鈍竜の目に刺さるが反応がない。

「このように、痛覚が鈍いことから名前がついたらしいです」

「これで下位かよ、半端ないなドラゴン」

「竜種っていうのがそもそも上位の魔獣ですから、えい!」

 さらに放ったノノの矢が、鈍竜の目に更に刺さる。これで両目が潰れた。

「カンスケ様、鱗で矢が弾かれるので、うちにできるのはここまでです。後はお願いしますね」

「ああ、十分だ」

 鈍竜は急に無くなった視界に、少し混乱したのかあたりかまわず暴れだした。

 ダガーを取り出した寛介は魔力操作で刃を強化する。埋め込まれた宝石から光が広がり刃全体に広がる。

「行くぞ!」

 最初は暴れていた鈍竜であったが、血を流すにつれて次第に動きが鈍くなり、動かなくなった。

「上手くいったか」

 寛介はそのままドラゴンの脳を[鎧通]で破壊し、止めを刺した。

「流石ですカンスケ様、かっこよかったです!」

 ノノがキラキラした目でカンスケを見つめている。

「ノノのサポートがあったからだよ」

 はたから見たらバカップルであるが、残念ながら寛介にそのつもりはない。

「寛介様との共同作業……」

 などと言いながら、ノノは腰をくねらせている。

「どうしたんだ?」

「い、いえ、なんでもありません」

 我に返ったノノは、鈍竜の鱗を剥ぎ取り始めた。

「竜の鱗は装備品にも薬にもなって高く売れますから、少し取っておきますね、あと、ジュルリ」

 ノノは舌なめずりをしながら寛介に言う。

「ドラゴンステーキって美味しいらしいんですよ、カンスケ様」

「は?」

「すぐ用意しますから、ちょっと待っててくださいね」


 目の前に置かれたのは、美味そうに焼かれた肉であった。食欲をそそる香りが寛介の鼻孔をくすぐる、すぐにでもかじりつきたい衝動に襲われるが、

「魔獣の肉なんだよなぁ……」

 ノノが寛介を見つめながらステーキを勧める。

「カンスケ様、騙されたと思って食べてみてください、とても美味しいですから」

 味見は既に済んでいるのだろう、ノノの口元は脂で汚れていた。

 ノノは肉を切り分け、寛介の口元まで運ぶ。

「はいカンスケ様、あーんしてください」

「わかったわかった、自分で食うから!」

「えー、うちが食べさせてあげますって」

 寛介は勘弁してくれとフォークを自分で持った、ゴクリと生唾を飲む。覚悟を決めてドラゴンステーキを口に入れた。

「……美味い」

 じゅわりと広がる脂の甘味、しっかりとした肉の味わい、焼き具合も最高で肉の旨さを十二分に引き出していた。

 十分に咀嚼し味を楽しんで嚥下すると、寛介の体に力が漲ってくる。

「ね? 美味しいでしょカンスケ様? まだまだありますからどんどん食べてくださいね」

「あ、ああ。ありがとう、ノノもちゃんと食べるんだぞ」

「えへへ、もうたくさん頂いてます」

 言われるまでもなく、既につまみ食い――と言うには量が明らかに多いが――を繰り返していた。

「もうお腹いっぱいだ……、ご馳走様」

「お粗末さまでした、うちの料理、満足いただけましたか?」

 ノノは寛介に料理をふるまえて、とても幸せそうである。

「ああ、とても美味しかったよ、これからも頼むな」

 何気なく言ったその言葉であり、寛介に他意はなかった。しかし、勘違いしているノノは顔を赤くして口を開いた。

「はい、もちろんです!」


 少しの食休みを挟んで、二人は先に進んでいく。しばらく歩いていると、少し開けた場所に出た。

「カンスケ様……」

「ここだな」

 今までとは瘴気の濃さが段違いであることに二人はすぐに気が付いた。

「カンスケ様、あれ!」

 広場の奥にある宝箱に気づいたノノが指をさして伝える。

寛介が近付こうとすると、地震が起こって地中から何かが現れた。それは土でできた巨大なゴーレムであった。

「でかい! だけど――」

 寛介はゴーレムの懐に飛び込むと、流れるように[鎧通]を使用して足を破壊する。

片足を破壊されたゴーレムは自重を支えることができず、その場に沈むように倒れてしまう。

「やりましたね、カンスケ様!」

「……いや」

 何かがおかしい、そう感じた寛介は警戒を解かなかった。

 崩れたゴーレムに黒い光が集まっていく。すると、ゴーレムの体が再生されていった。

「えっ!? 嘘……」

「だよな、そう甘くないよな」

 次はこっちの番だといわんばかりに、ゴーレムは腕を振りかぶり、拳を繰り出してきた。直撃するとひとたまりもないだろう、幸いにも動きが遅いため、寛介たちは余裕をもって回避できた。

 ゴーレムの腕が黒く光る、すると地面から石柱が生えてきた。ゴーレムは腕を振りかぶるとその石柱めがけて、拳を繰り出した。衝撃音が響き渡ると、大きな力によって加速させられた岩の礫が二人に襲い掛かる。

「危ない!」

 寛介が咄嗟にノノをかばう、人間のこぶし大の岩が複数寛介に命中する。中にはとがった岩もあったようで、寛介の腰に刺さっていた。

「ぐっ、大丈夫か、ノノ」

「か、カンスケ様! しっかりしてください!」

 攻撃に有効性を確認したゴーレムが再度石柱を発生させる。

「ぐっ、なめるなよ!」

 寛介はノノを抱えて走り出す、ゴーレムの広範囲攻撃を辛うじて回避した。

「か、カンスケ様、大丈夫ですか?」

「ああ、なんとかな」

「ヤバいな……、とにかく血を止めないと」

「お、お任せください!」

 ノノが寛介の傷口を小さな舌でチロチロとなめる。

「ろーれすか? いはくなひれすか?」

 ノノが傷口を舐めていくと、傷口は塞がっていく。しかし、舌が傷口を這うたびに寛介はビクッと反応してしまう。妙な気持ちよさから出てしまいそうな声を必死に我慢する。

「ふう、これで大丈夫ですね!」

 にこやかにそういうノノの顔をまともに見られない寛介であった。


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