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21 迷宮攻略

 集中して観察してみると、寛介は瘴気に濃さがあることに気が付いた。

「瘴気が濃くなっていく方向へ進んでいけば良さそうだな」

 ノノが何かの臭いを感じ取ったようで、指をさして注意する。

「カンスケ様、そちらのほうから魔獣の臭いがします!」

「わかった、下がるんだノノ」

「はい、援護します!」

 寛介はウエストバッグからルーンナイフを取り出し、ノノは弓を構える。

 森の奥からコボルドが三体走ってやってきた。寛介は先頭のコボルド目掛けルーンナイフを投擲する。喉に突き刺さったコボルドはその場で息絶え倒れこむ、そのコボルドに足をとられ残り二体のコボルドが勢いよく転がった。

「これくらいなら何とかなるな」

「危ない、カンスケ様!」

 ノノの声に咄嗟に反応した寛介が飛び退くと、先ほどまで寛介がいた位置にドシンと巨大なこん棒がたたきつけられた。

「危なかった、助かったノノ」

「い、いえ、カンスケ様がご無事で何よりです、それよりも……」

「ああ、厄介だな」

「ウガアアア!!」

 響き渡る獣の声、そこに現れたのは緑の巨体に豚の頭、オークであった。更にコボルドも五体、オークの後ろに並んでいる。

「ウゴ!」

 オークが合図のような声を出すと、コボルドがノノに向かって走り出す、寛介が間に入ろうとするも、オークが寛介の動きを妨害した。

「ひっ、た、助けて」

 ノノがコボルドに囲まれる、腰を抜かしてその場にへたり込むノノは涙目で助けを求めた。

「ノノ!」

 コボルドがニヤニヤと下卑た笑みを浮かべている、目の前の雌は俺たちに敵わないようだ、そのような油断が彼らの反応を鈍らせた。

「えへ、なんちゃって」

 ノノが矢を直接目の前のコボルドの目に突き刺した。

「イギャアア!?」

 コボルドはたまらず悲鳴を上げる。ノノは懐からルーンナイフを取り出し、怯んだコボルドの首を切り裂いた。コボルドたちは予期せぬ反撃に慌てふためいている。その隙を見逃さず、ノノは距離をとり、弓をに矢をつがえ、次々にコボルドを打ち抜いていった。

 たまらずオークはノノに攻撃を仕掛けようと体を向けるが、それは大きな間違いだった。

「おい、どこに行くんだ豚野郎」

 寛介に背中を見せたオークはまずアキレス腱を切り裂かれた。魔獣とはいえ人型であるオークは筋肉や腱の構造は人間と似てるようで、自重を支えきれず倒れこんだ。

 オークの耳元で冷たい目をした寛介がつぶやく。

「ノノに手を出さなきゃ苦しまずに済んだのにな」

オークの顔が緑から真っ青に染まった。寛介はうつ伏せのオークの尻に手を置き、[鎧通]を発動した。オークの睾丸が弾ける。

「アギャアアアア」

 胃腸、腎臓、肝臓、右肺と臓器を順番に潰していくと、オークはどんどんと反応が薄くなっていった。

「カヒュー……、カヒュー……」

「これだけ潰しても死ねないなんて魔獣って大変なんだな、だけど止めはささない、後悔しながらそのまま苦しんで死ね」

 寛介がオークが苦しむ姿を見つめていると、ノノは寛介の服を引きながら言った。

「カンスケ様、もう止めを刺してあげてください」

「だめだ、こいつらはお前にひどいことをしようとしたんだぞ?」

 ノノは首を振りながら懇願する。

「お願いします、うちはカンスケ様がこんなひどいことするところ見たくありません。うちのために、カンスケ様にひどい人になってほしくないんです」

 寛介はノノの様子を見て正気を取り戻した。

「ごめんノノ、そうだよな、ちょっと変な気分になってたみたいだ」

 寛介はオークの心臓をつぶし、息の根を止めた。

「そういえば、さっきはすごかったな。それと、なんで俺のナイフを持ってんだ」

「なんだかカンスケ様のお役に立ちたいって思ってたら体が軽くて、全然怖くなかったんです。ナイフは鳥を捌いた時から借りたままです、てへっ」

 ペロッと小さな舌を出しておどけるノノに、起こる気力も沸かない寛介である。

「仕方ない、そのナイフはとりあえずノノに預けとくよ、俺もあと二本持ってるから」

「ありがとうございます、大事にしますね」


「はあ、はあ、結構歩きましたね」

「ああ、瘴気もかなり濃くなってきたな、大丈夫か?」

「は、はい、まだ大丈夫だと思います」

 先程から魔獣と遭遇することもあったが、小型の魔獣ばかりで、ノノがすべて弓で仕留めている。

「それにしても結構奥まで来たけど、全然景色が変わらないな」

 いくつか分かれ道はあったが、ここまでほぼ一本道である。

「そうですね、嫌な感じがだんだん強まってますし、ゴールには近づいてると思うんですけど……、ん、これでよしっと」

 ノノが先程から矢の羽に何やら血で書いている。

「何してるんだ?」

 寛介がノノに尋ねると、頬をかきながら答えた。

「えへへ、おまじないです。昔から矢をこうすれば、よく当たるんです」

「へぇ、このナイフと同じようなものかな」

 ノノが首を振る。

「寛介様のナイフみたいに、絶対当たるってわけじゃないので――」

 ノノの小さな鼻がぴくっと動いた。

「カンスケ様、来ます」

 ノノの合図に、カンスケは身構えた。


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