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76 宣戦布告

「――その後は、カンスケくんも知っている通りだ」

「一体何のために……」

「勇者の加護の転写・利用が目的だそうだ」

 勇者召喚には大きなコストが必要だが、その加護を転写できるのであれば低コストで戦力を増やすことができる。

 ルグナーによってまとめられた内容は次のとおりである。

 ・被験者に自我の喪失が発生する

 ・被験者が狂暴化する。狂暴化の程度と被験者の年齢には線形な関係が存在し、傾きは正である

 ・十二歳未満の被験者には狂暴化の症状は見られない

 ・十二歳未満の被験者の成長における狂暴性の増大については不明(観察中)

 ・自我の喪失した被験者に調教処理を行うことで単純な命令を実行させることができる

 ・転写する加護の強度と狂暴性に相関関係はない

 ・加護が発現している被験者に転写を行うと衝突が発生して死亡する


「本当に勇者の加護を転写することが可能であれば、由々しき事態だな」

「一人でも敵にすれば脅威なものが、複数いたらなど考えたくもない」

「戦力として利用可能なレベルであれば、王国がすぐにでも攻めてきてもおかしくないかもしれないな」

 アクセルとハインツが感想を述べる。フリードも同意するように頷いていた。

 そして総じて、そのように口にしたことは現実として起こることが多い。

 突如、会議室の扉が叩かれたかと思うと、こちらの返事を待たずに伝令が部屋へと入ってくる。その伝令は額に汗を浮かべ、見るからに狼狽していた。

「お、恐れ入ります。王国より宣戦布告がなされました!」


 ――前王が崩御し、国民が悲しみに立ち向かっている中、魔族と手を結んでの我が国領内の町への侵攻などソロン帝国の数々の暴虐は看過できない。よってバルスタ王国第一王子ジェームズ・バルスタ並びに原初の賢者キェルケの末裔ガウスの名においてソロン帝国へ宣戦布告する。


「……なんだこれは正気か?」

 宣戦布告文を読んだアクセルは、目元を押さえながらため息をつく。どこを読んでも事実は存在せず、まさに言いがかりとしか言えないそれに酷い頭痛を覚えた。

「力ずくで真実にするつもりなのでしょう。つまりそれを可能にするだけの戦力をそろえた」

 フリードの言葉にハインツが頷く。

「十中八九、転写とやらに成功したのだろう。そうでもないと王国が我ら帝国に宣戦布告などしようがない」

「急ぎ国境の守備を固める。自治協会にも協力を依頼し、異変があれば軍へ報告させよ」

 アクセルはそう伝令へ指示を行うと立ち上がる。

「私は皇帝陛下に事情を説明する。ハインツ殿、ともに来てもらえるか」

「了解」

「フリード殿は指揮系統の整理と守備計画の立案を頼む、カミヤ殿もぜひ自治協会への依頼に協力していただけると助かる」

 二人からの返事を待つ間もなく慌ただしくアクセルは退室していった。

「このような力業、奴らが追い込まれているということでもあると思う。ここさえ乗り切れば、事態は好転するはずだ」

「これ以上不幸な人を増やさないためにも、ガウスはここで止める」

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