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50 清算

「魔族と人族が……、正気か?」

 否定の声を、寛介は首を振って逆に否定する。

「大事なのは種族じゃない、何を大事にするかだ」

 寛介がノノやナル、ララを見てそう言った。彼女たちも、首を縦に振って寛介の言葉を肯定する。

「現に、俺たちは今まで一緒に戦ってきた。だから、あんたとも上手くやれるはずだ」

 そう言った寛介が、握手を求めて手を差し出した。ボーマンは青臭く理想論を語る若者の手をじっと見ている。

 しばらくそうしていた彼は、フッと相好を崩す。かつての主の面影が寛介に重なった。

「おかしな方だ。だが、貴殿の言うことに惹かれてしまった我も、同様におかしいのだろうな」

 そう言って、差し出された手を力強く握り返した。


「ところで確認だが、貴殿が今、お嬢様を庇護されているのだな?」

「庇護? そんなのじゃないよ、俺達は仲間だし」

「なるほど。ならば我は新たに貴殿へ仕えさせてもらう、これからよろしく頼む」

 突然、そのようなことを言い出され寛介が反応に困っていると、横からララが申し訳無さそうに声をかけてくる。

「昔から融通がきかないんです、話が長くなるだけなので諦めたほうが良いと思います。後日、私の方からうまく言い含めておきますので」

「頼んだ」

 寛介はその言葉に甘えて任せることにした。

「でもカンスケ様、ララさんはまだ誤魔化せないこともありませんでしたが、ボーマンさんは流石に……」

 ノノの言う通り、ボーマンは帝国の襲撃において多くの者に顔を見られているため、共に行動するには無理があるだろう。

 暗い雰囲気を振り払うように、カナエが口を開いた。

「それは私に任せておけ、いい魔具がある」

「カナエもん!」

 寛介も、場を明るくしようと悪ノリする。

 カナエのこめかみ辺りがピクリと動き、殺気が溢れだす。

「そうか、死にたいのか」

「冗談だって!」

「問答無用だ!」

 青い体、もとい青い髪のカナエが寛介の頭にげんこつを振り下ろした。

 鈍い音とともに、寛介の意識は闇へ落ちていった。


「ほら、受け取りな」

 カナエがボーマンへ仮面のようなものを手渡す。

「これは?」

「それには整形(シェイプ)の魔法を付与してある。魔力、もといお前なら瘴気を込めることで効果が発動する」

 ボーマンは仮面をつけると、瘴気を込める。仮面から溢れる光がボーマンの身体を包み込む。

「ぐっ……!」

「いい忘れていたが、骨格から変化させる魔法だ、かなりの痛みを伴うぞ」

 あまりの痛みに、そのような大事なことは最初から言ってほしかった、などと抗議の声を上げることもできない。

 しばらくして光が落ち着くと、先程までとは顔の造形や身体のつくりが明らかに変わっており、どこからどう見ても人族の壮年の男性だった。

「すごい、これなら大丈夫ですね」

 ノノの言葉に、ララも頷いている。

「ちなみに、その仮面に以前の顔の情報が残っているから、もう一度発動すれば元に戻せる」

 その際も同様に痛みを伴うがなとカナエは付け加える。ボーマンはもう二度とごめんだと言いたげな顔だ。

「後は私と同じように名前も変えないといけませんね」

 ララがそう言うと、ボーマンが口を開く。

「ならば、我の幼名であったガレスと名乗りましょう」

「ガレス、いい名前だな。これからよろしく」

 寛介はそう言うと、改めて手を差し出す。

「こちらこそ」

 握手を交わした二人は、過去の因縁を乗り越えて笑いあった。


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