1 無能勇者の誕生
初投稿です。上手くなりたいのでどんどんアドバイスお願いします!
「ギフトが確定しました・・・勇者様の加護は[無能]です」
「は?」
――目の前が真っ白になる、無能? 何だそれ聞いてないぞ。
[無能]
強く生きよ。
成長補正:体力C- 筋力C- 敏捷C- 精神力C- 運C-
適職診断:特になし
特殊スキル:
「……は?」
成長補正オールC-、適職特になし、今後を考えながら真っ白だった目の前は真っ暗になっていく。
――始まりは半日前、俺が商店街で買い出しに来ていたときのことだった。
「ったく、すき焼きすんのに玉子買い忘れるってどういうことだよ」
○○高校の合格発表日、神矢寛介は無事合格を勝ち取り、今日はすき焼きパーティらしい。
「そもそも、今日の主役は俺だろ? 何で俺が買い出しなんかに……」
寛介がぶつぶつ言いながら歩いていると、隣から可愛らしい声が聞こえてくる。
「仕方ないよ、お母さんは料理から手が放せないんだから。それとも寛にぃはこんな可愛い妹をこんな時間に一人で出歩かせようっていうの?」
自分で自分を可愛いと称する可愛らしい声の主は確かに可愛かった。神矢美子、寛介の1歳下の妹で若干栗色がかった綺麗な髪をサイドテールでまとめている。並んで歩く兄妹だが、全く似ていない。
「はいはい、可愛い可愛い。お、もう着くぞ」
「あーっ、無視した! ひどいひどいひどい!」
「わかったわかった。おっちゃん、玉子1パックちょうだい」
「あいよ! 寛ちゃん、○高合格したんだって? これからも頑張ってくれよ!」
「相変わらず情報が早い商店街だな……。ありがと、おっちゃん」
玉子を手に入れた帰り道、不思議な声が聞こえてくる。
『――ケテ……タスケテ……』
「え?」
「どうしたの寛にぃ、素っ頓狂な声出して」
大きな目を細めながら、美子は言った。
「お前、今の声聞こえたか?」
「寛にぃの変な声でしょ? 聞こえたよ」
「ちげーよ! なんか助けてとか――」
『タスケテ……ユウシャサマ……』
「!?」
今度は美子にも聞こえ、更に地面が光り始める。その光は魔法陣になり、二人の体を包み始める。同時に二人の視界は暗くなっていく。
「何?! 何なの!?」
「大丈夫か美子!」
「怖いよ寛にぃ!」
二人を完全に包み込み込んだ光が消えたとき、その場所に二人の姿はなかった。
「美子!」
目を覚まし叫んだが、美子はいない。代わりに目の前には見知らぬ修道服を来た男が居た。年の頃は20代だろうか。
「ようこそ、勇者候補よ。この世界を救っていただきたい」
「勇者? 何、言ってるんだ……?」
寛介は男を見て言った。そして隣に美子が居ないことに気が付いた。
「そんなことよりも妹はどこだ?」
修道服の男は理解出来ないと言った顔で寛介に伝える。
「妹……ですか? はて、陣で召喚されたのはあなただけですが」
「ふざけるなよ! 確かに妹も隣りにいたんだ! そんなわけあるか!」
修道服の男が腕を組みながら言う。
「しかし単体召喚の陣で複数人が巻き込まれるという話、聞いたことが――」
バンッ、激しい音と同時に扉が開き、甲冑姿の男が大声で叫ぶ。
「賢者ガウス様、申し上げます! ソロンにて勇者召喚の儀が行われた模様!」
ガウスと呼ばれた修道服の男は何かを理解したようだ。
「なるほど、勇者候補よ。珍しいことだがあなたの妹殿は、我らと同時に儀式を行ったらしいソロンに召喚されたのやもしれません」
「なら俺をソロンに連れて行ってくれ、すぐに妹に会いたい。きっと妹も怖がっているに違いないし」
「それは無理です、ソロンは――」
ガウスが寛介に情況を説明し始める。
今この世界は大きく分けてバルスタ王国、ソロン帝国、冥界軍の三つの勢力で覇権を争っている。ガウスはバルスタ王国で宰相として王の補佐を行っているらしい。バルスタ王国は大陸で一番の歴史を持つ大国でかつては大陸の半分ほどを治めていることもあった。しかしそれも過去のことで、今は大陸の2割を治める程度である。ソロン帝国は近年武力を背景に支配地域を広げてきており、その破竹の勢いで王国にも匹敵するのではと言われてきている。明確な宣戦布告は無いものの、国境近くで小さな衝突が絶えないという。
国同士の衝突はともかくとして、今一番大きな問題は冥界軍らしい。冥界軍は魔王をトップとし、魔族や魔物で構成された集団である。大陸の南端にある冥門と呼ばれる大きな門から繋がる冥界からこの世界を侵略しに来たと言われている。魔族や魔物の力は凄まじく、低級の魔物でさえ兵士では歯が立たないほどであった。その圧倒的な力で人族は蹂躙されていた。
今となっては事実かどうかも怪しいそうだが、五百年前に原初の賢者キェルケが誕生した。キェルケは召喚術を使い強力な勇者達を召喚し、冥界軍の侵略を抑えこんだ。更にキェルケは女神の加護を用いて戦力を強化する術を編み出した。ギフトを与えられた人間はステータスが強化され、レベルを挙げることでさらなる成長を遂げ魔族達と戦えるようになったそうだ。どちらが言い出したのか定かではないが人間と魔族は停戦協定を結ぶこととなった。そこから魔族達との直接的な戦争は無いが、魔族の瘴気によって発生した野生の魔物や魔族が人間を襲ったりするようになった。
しかし、最近冥界軍が停戦協定を破り侵略を再開するという噂が聞こえてきているらしい。そこでバルスタでは勇者を召喚しそれに備えることとなった。召喚者に与えられる加護は珍しく、有用な加護になることが多く、初代勇者の加護は凄まじく強力であったという。
「そこで勇者候補には、加護の儀式を受けていただき勇者となっていただきたいのです」
「知るか! 好き勝手な事情に巻き込みやがって、早くソロンに連れていけ!」
「困りましたね……。」
ガウスはひどく底冷えのするような冷たい目で寛介を見ている。
「ならば……死んでもらうしかありませんね。死ねば妹さんにも会えませんがそれでよろしいですね?」
寛介は蛇に睨まれた蛙のように動けない。
「返事は無し……。残念ですがさようなら勇者候補よ」
ガウスは胸元から短剣を取り出し、寛介の首元へ添える。
冷や汗が止まらない寛介は絞り出すような声を出した。
「わ、わかりました……。勇者にならせてください」
俺が死んだら美子が、情けない気持ちをそのように正当化しながら寛介はうつむいている。
さっきまでの冷たい目は見る影もなく、ガウスはにこやかに言う。
「そうですか、なら早くしましょうか。妹さんにも会いたいでしょうしね」
12/20 ステータスの記述を修正しました(数値等は変化していません)