ようやく一歩
系統とかの話はあんまり出さない方が良いように感じたのであんまり出さない事にしようかと思ってますので気にしない方向で
ギルドに着くまでにゴードンさんから様々な情報を聞くことができた。まず、ミクは一ヶ月ほど前に俺と同じように村に迷い込んで来たらしい。その際、疲労と空腹でゴードンさんの目の前で倒れこみ、そこから介抱が始まったらしいのだが……回復してもいつまでたっても動こうとも働こうともしないミクを連れて強引に身体検査…ステータス鑑定をしたらしいのだが、身体能力はどれも軒並み低い替わりに魔法適正とセンスが飛び抜けて優秀だったらしい。ちなみに現在、俺は小さな石版を持たされている。なんでもステータス鑑定の結果を写す持ち運び可能な道具らしく、これが主にギルドでの身分証になるらしい。ミクのステータスも見せてもらったが確かに俺のと比べて身体能力は半分にも満たない数字が書かれている。だが魔力は俺のとは文字通り桁が違うほど高かった、おそらく魔法タイプなのだろう。
「ていうか、魔法ってどんなのがあるんですか?魔法適正ってので光とか闇とかあるってことは属性毎に色々魔法があってそれが使えるかどうか、て感じなんですかね?」
「そうだな。まあ、適正ってのはあくまで相性が良いって事で適正がないからって他の属性の魔法が使えないってわけじゃない。適正の次第だがちょっと習得するのが難しかったりちょっと習得しやすかったりするだけって場合もあるしな。」
「あぁ、そうなんですか。それと、センスにも色々タイプがあるって言ってましたけど……それについては?」
「うーん…難しいところなんだ、それぞれについて一言で良いなら説明するが構わんか?」
「お願いします。」
「まず、センスにも系統があってな、身体系、変化系、召喚系、武装系、魔術系、特殊系の大きく分けて六つの系統に分類される。身体系は身体能力の向上や能力の強化。目の身体系センスで例えるなら視力が異様に良くなったり、視るという力そのものが強化されたりだな。変化系は自身の体を別の物質に変えたり能力を変えたりだな、身体系と似てる部分もあるが見た目が変わらないのが身体系、見た目と能力が変わるのが変化系だ。召喚系はそのまま使い魔を呼び出す力。武装系も同じで武装を纏う能力だ、剣とか鎧とかな、しかもただの武器じゃない、なんらかの能力を持っている武器とかだ。魔術系は……まあ、要するに固有の魔法だな。一般の魔法はそれを習得する力があれば誰でも使えるものだがセンスでの魔法は持ち主オリジナルで他人が使うことはほぼできない。最後に特殊系だが、これはどの系統にも属さない、あるいは複数の系統に似通った部分があって分類が難しいものを指す、強力なものが多いな。」
「なるほど……あ、そういえば。俺のセンスって後半部分が???ばっかりだったんですけど、それってなんなんですか?」
だいたいのセンスの系統は分かったが自分のステータスに表示された不可解な部分について聞いてみる。まさかバグではないよなと思いつつ知ってることはないかゴードンさんを仰ぎ見る。
「ん?それはたぶん新しいセンスなんだろうな。お前自身が名前をつけるしかなかろう。まあ、直感で決まるもんだと聞いたから心配することはない。」
なんと世界初のセンスだったらしい。特別なものがない人生だったが世界初の能力を持っていると聞かされると少しテンションが上がってくる。しかもそれは後半部分全てに当てはまっていて一気に新種のセンスを複数発現させることができるということだ。どんな能力なのか今から楽しみで仕方がない。
「う〜ん……お話は終わりましたぁ?ならさっさとお帰りしてご飯食べましょ〜よぉ」
力の抜けた声がゴードンさんの左側から聞こえてくる。どうやら先ほどまで寝ていたらしいその顔は瞼が完全に開ききっておらず自分がいまどのような状況にあるか分かっていないらしい。寝る前の会話もすっかり忘れているようでこれから俺と仕事をこなすことなんて思ってもいないようだ。
「何を寝ぼけているんだ。お前は後衛の実力はズバ抜けているんだからそれで充分仕事ができるというのにそれすら面倒くさがりおって……」
「そんなこといわれてもぉ。それにぃ、私のセンスは文字通り省エネのセンスなのでそれを活用してるだけですよぉ。魔法だって適正があるだけでぇ、覚えるのは大変だってききましたしぃ、お断りですよぉ〜」
ミクのセンスは省エネというらしい、なんだかとてもじゃないが戦闘で役立つ技能だとは思えないが、聞けばあらゆる魔法や体力などの消耗を最低限に抑えられるというセンスでこれも新種らしい。異世界人ならではというべきセンスだ。魔法を連発できるというのは確かに後衛向きの能力だが本人は魔法を覚える気がないので宝の持ち腐れ感がハンパない……初級程度なら魔法の書というものを読めば適正さえあればすぐ使えるらしいが、それではやはりセンスの力を生かしきれない。体力は並み以下だったので魔法関連じゃなければやはり生かしきれないという消去法的な後衛センスだが希望はある。俺は大した能力も持ってなさそうだがどうにかミクのやる気を出せば異世界での生活も何とかなるかもしれない。
今さらだがここの村は割と大きな規模でそこそこ人も賑わっていて活気がある。そんな人通りが盛んな通りをしばらく歩くとなかなか大きな石造りの建物があった。どうやらここがギルドらしい。ゴードンさんに連れられて中に入ると屈強な男達が昼間っから呑んだくれてる姿がチラホラと見える。視線が集まるのを気にせずズンズン進むゴードンさんの後をついていく。
「こんにちは!今日はどういったご用件でしょうか?依頼ですか?クエストの受注ですか?」
カウンターのお姉さんがにこやかに挨拶をする。手慣れた手つきで資料を手に取りパラパラと何枚かの書類をめくりながらこちらに見せてくる。
「いや、今日はひよっこ冒険者候補を2人連れてきた。右も左もわかってないから色々と手続きを頼む。」
「承りました。では、お二方、こちらへどうぞ」
お姉さんに案内されてカウンター席に座る。ゴードンさんは仕事がまだあるからとお姉さんに俺たちを預けて早々に帰ってしまった……良いアニキだと思ってたのに裏切られた感じがするのはなぜだろう。
「では、まずプレートの提示をお願い致します。」
お姉さんにミクの分のプレートも預けると何やら打ち込んでいた。作業が終わったらしく返されたプレートには職業の欄が追加されていて冒険者となっていた。ついでにその横には星が一つだけ書かれていた。
「お二方は今から正式に冒険者となりました。冒険者にはランクがありまして、星の数が多ければ多いほど高ランクの冒険者として認められます。その分、ギルドでも様々な特典を受けることができますのでぜひ高ランクを目指してくださいね。なお、ランクを上げるには実績を積んでギルドに貢献することが重要となります。どんどんクエストをクリアしてくださいね!」
「えーと、じゃあ、さっそくクエストを受けたいんですが」
隣で静かにうつ伏せで寝ていたミクから鋭い視線が飛んでくる。それを無視しながらクエストを受注する。まずは簡単そうな近隣の森での探索クエスト的なものを受けていこう。自分が何をできるのか把握しておかねばなるまい。
やっと次あたりから徐々に主人公について書いていける気がします……