ギルドの薬草じいさん
なんとかいつも通りに太陽が南を少し過ぎた頃ギルドに帰って来れたわい。
これより遅くなると日差しがキツうてかなわん。
暑い時間は屋根のある場所でお茶を啜るに限るのじゃ。
さて、優雅なてぃーたいむの前にする事をやっておかんとの。
駆け出し達と一緒に薬草を換金じゃ、薬草と一緒にギルドの会員証を忘れずにに出すのじゃぞ?
このカードは昔からある物で持ち主の現在の能力やスキルを自動で記録して行く物じゃな。
要は限定的な鑑定と自動筆記の術式を持った魔道具じゃ。
実際には本人認証と能力の維持のために血を使った契約をせねばならんから、魔道具よりも呪いの掛かった呪具の方が近いのじゃが、魂から直接維持費を補給する以外は全く害のない呪具じゃの。
それに少しずつ機能を足して行って現在の仕様になっておる。
公式には複製不能、成りすまし対策万全などと言われておるがそんなに大したものでもないんじゃよ。
何故か機能にろっくが掛かっておったので一晩いじり倒したら好きな様に編集できるようになったわい。
じゃがこれだけじゃと編集内容がギルドのでーたべーすと照会した時にバレる仕組みになっておったでのカードの中身を情報容量の大きな物に変質させて、でーたべーすの中味も書き換える術式を組み込んでみたのじゃ。
大成功じゃったぞ。
フォッフォ、未だにバレておらん。
因みにいじったのは年齢じゃ。
少し気になっておったでの、3歳ほどサバを読んでやったわい。
内緒じゃぞ?
報告の対応をしてくれたのはいつもの受付嬢じゃ。
手慣れたものでテキパキと処理して行くわい。
因みに、この娘さんはいつ来てもこのカウンターにおっての、此処から一歩も動かんのじゃ。
休んだのも見たことはないし、トイレや休憩に行くこともない。
最初は錬金人形かと思ったくらいじゃ。
もしくは、床から生えた木の精霊の類いじゃな。
こっそり偉い職員に聞いてみたら、全ては「プロ根性」じゃそうじゃが
凄いもんじゃ。
カードにお金、後は朝預けた荷物を受け取りいつもの席に移動じゃ。
荷物はいつもの中年男が取りに行って受付嬢が渡してくれたのじゃが、やはり一歩も動かんのぉ、むむむ‥
席に着いたらいつも通りに書き物じゃ、今は嫁さんと結婚した頃の研究の内容を思い出しておるところじゃ。
この頃の研究内容はいまいち印象が薄うていかん。
研究の内容より、度々嫁に叱られておったことのほうをよく覚えておるくらいじゃ。
筆が止まる度に同じ席に着く見習い達の字の練習をみてやる。
読み書きができるようになりたいとゆうので片手間に教えてやっておる。
ワシの書き損じの紙が大量にあるで、裏にどんどん書いて覚えるのじゃ。
そして字は綺麗にな、読めればいいんだよなんて思っておるとワシのように何十年も経ってから苦労するぞい。
よし、ワシのがカッコよく手本を見せてやろうぞ。
スラスラすら〜の、サラサラさら〜。
どうじゃ尊敬しても良いのじゃぞ。
調子に乗って色々間違っておるが、これの書き損じは明日の朝修正すれば良いわい。
むむ、酔っ払いどもが諍いを始めおった、こ奴ら毎度毎度よく飽きんものじゃ。
見習い達よ、あんな大人になるでは無いぞ。
しかしまあ、「ギルドで酔った先達冒険者に絡まれる」は冒険者になったら経験しそうなことらんきんぐの上位じゃから一度くらいは体験してみたい気もするがの。
いつも思うのじゃが此処の冒険者達は、あまり依頼を受けておらんように見える癖に縄張り意識が強すぎるのでは無いかのぅ。
普段見ん顔がある度にピリピリしておる気がするわい。
あんまりピリピリしておるとは早くハゲるぞい。
ワシはハゲの特効薬も作れるが、あれは材料が手に入りにくいのじゃ。
ワシは力になってやれんから程々にのぅ。