ギルドの受付嬢
ここ、迷宮都市冒険者ギルド西門支部。
数人の見習いと一緒にカウンターにやってきた薬草じいさんこと
大錬金術士ゼクセン=コラルド様。
見習いの子供達と同じくひと束の薬草とご自分のギルドカードを提出されます。
その薬草のなんと瑞々しい事でしょう。
薬草の納品はギルドの常設依頼の1つで主に駆け出しのF級冒険者がその日の糊口をしのぐ為の一時凌ぎ的な扱いをされてはいますがこの方は違います。
最高の状態で保存の魔術が掛けられた最上級品質の普通の薬草。
このような素材を取り扱えることは受け付け嬢冥利につきるとゆうものです。
見習いたちの提出する薬草も以前とは違い十分に買い取りに耐えるもので品質による減額などもほとんどありません。
これはおじいちゃんの指導の賜物だそうでその日の仕事にあぶれた見習いたちを引率して薬草の採取などを教えておられます。
G級の見習いたちのカードに昇格ポイントを付与し報酬の50銅貨と一緒に返却していきます。
一人だけ萎びた薬草を持ってきて減額した子が居ましたが随分と浮かれた様子で何か良いことでもあって上の空で採集していたのでしょうか。
最後におじいちゃんのカードにポイントを付ける振りをしながら見習い一人につき10銅貨の報酬、今回は50銅貨を口座に振り込み買い取り、金50銅貨(品質で減額は有りますが増額は無いのです)と共に返却します。
その時見たカードには
名前 ゼクセン=コラルド
人間 男
年齢 114歳
職業 魔術士
Lv5
スキル
杖術 1 気配察知 1 採集 2 >>next
魔術
火魔術(初級) 10 水魔術(初級) 10 風魔術(初級) 10 >>next
称号
Fランク冒険者>>next
カードの表記は簡易表記設定でスキル3つ、魔術3つ、称号1つの表示。
年齢以外(すっごく高齢、でも40歳は若く見えます)は才能のある駆け出し魔術士といった感じです。
でも私の手元では詳細が‥
名前 ゼクセン=コラルド
人間 男
年齢 114歳
職業 魔術士
Lv5
str 13
dex 206
vit 21
agi 10
int 1247
mnd 186
luk 75
スキル
杖術 1 気配察知 1 採集 2
錬金術 10 薬学7 魔術理論 8
演算 5 語学7 読解7
神学 5 鑑定 7 不眠 3
集中力 5
火魔術(初級) 10 水魔術(初級) 10 風魔術(初級) 10
土魔術(初級) 10 光魔術(初級) 9 闇魔術(初級) 9
無属性魔術 (初級) 10
称号
Fランク冒険者 薬草ハンター 世間知らず 大錬金術士 カリスマ講師 研究バカ
残高 86銅貨
とんでもない詐欺のようなステータスです。
これは見せられませんよね。
能力値は200から一流500で超一流4桁なんて伝説の英雄クラスです。
しかも能力の上昇で1番効率が良いのはlvの上昇のはずなのにlvはたったの5、
若い頃にlv上げてたらどんな事になってたのでしょう。
おそろしいおじいちゃんです。
スキルも5で一流7で超一流の筈なのに7とか8がゴロゴロと、
10に至っては文献でしか見た事が無いレベルです。
実はこのギルドカードには少し細工がされていて、おじいちゃんが他人に見せても大丈夫なように当たり障りの無い情報しか表示されず、自分で変更できるはずの表示設定も簡易表記設定で固定。
ゴメンねおじいちゃん、これ以上の厄介ごとはゴメンなのです。
そして忘れてはいけない朝方預かった荷物の返却です。
おじいちゃんの私物の入ったこの袋は毎日支部一番の手練れのサブマスが自ら際奥の金庫から出し入れを行います。
カードを受け取ったおじいちゃんは、いつも通りお気に入りの窓際の席へ、
付いてきた数人の駆け出し冒険者に読み書きを教えながら何やら書き物をしています。
はたから見るとほのぼのとした光景ですが周りの席の冒険者たちに緊張が走りました。
実は、おじいちゃんがスラスラと書き上げていくあの紙の一枚一枚には名画と同じだけの価値があるのだそうで、その内容は絶対に覗いてはならないと支部職員全員に通達されています。
あっ、今何も知らない新顔のパーティーがおじいちゃんの席の近くを通ろおとして‥
はい!横の席のガラの悪い中堅パーティーに絡まれました。
あの人達はおじいちゃんの護衛のひと組でああやって問題を起こしつつ、おじいちゃんに近づく人を排除する係りです。
元々は何も知らずにおじいちゃんに絡もうとして排除され、ギルマスとohanasiの結果あのポジションを与えられたんですよ。
ご愁傷様、もう逃げられません。
当然、仕事をしないダメな冒険者に見える周りの席の常連さん達も護衛の人達です。
幾つかの異なる派遣元からの護衛がお互いに牽制し合いつつ自然に見えるように気を使っているのが見て取れます。
おじいちゃんに気付かれないようメンバーを変えながら毎日の見守りご苦労様です。
こうして今日もおじいちゃんが帰る夕方までピリピリした空気のまま1日が過ぎていくのでした。