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薬草じいさんの常設依頼

 今ワシは冒険者ギルドの西門支部に来ておる。

 今日もまたここで暫く待機じゃ。


 時間的には朝の依頼争奪戦の真っ最中じゃが、西門支部では静かなもんじゃ。

 ダンジョン絡みの依頼は本部に貼られるし、他の街との交易の護衛などは、反対の東門支部じゃからな。


 ここには西門の先にある草原や森での討伐や採集の依頼があるくらいじゃ。


 ワシも最初はダンジョンの依頼等を探しに本部行ってみたのじゃが人混みに揉まれるのは年寄りにはキツかったのじゃ。


 想像してみよ、武装したゴツい男どもに揉みクチャにされながら依頼用紙を奪い合う光景を。


 麗しい女性冒険者などは幻想じゃ、おってもこの争奪戦にはパーティーでいちばんゴツイ野郎が参加するのじゃ、期待してはいかん。

 どうじゃ、やる気が無くなったじゃろう?


 では、ここで何をするかとゆうと薬草の採取じゃ。


 これは常設依頼と言っていつでも受け付けして居ってわざわざ依頼を受けぬでもよい便利な制度の対象になっておる。


 薬草は得意分野じゃからのワシにとっては朝飯前じゃ。

 本当は、本当に朝飯の前の暗い時間に採集のするのが良いのじゃが、その時間じゃと門が開いておらんのでの、あくまでも例えじゃがな。


 この依頼はワシが本部の依頼争奪戦に面を食らっておったら親切な先輩冒険者が教えてくれてのぅ、さらに、一緒に特別な仕事も紹介してくれたのじゃ。


 それが、若い見習いの冒険者の引率じゃ。

 常設依頼は新人育成の意味も含まれておって、その世話役じゃな。

 この仕事を繰り返すうちにワシは「薬草じいさん」と呼ばれようになったのじゃ。


 見習いは年齢が足りず正式に登録出来ない者たちで、一つ昇格して正式なメンバーになるまでは引率無しで危険な場所での依頼は受けられん。


 それをワシが纏めて連れて行くことで経験を積ませるのじゃな。


 この依頼の期間は見習いが立派になるまで、報酬は出来高制で日払じゃ。

 出来高とか日払いとか如何にも冒険者らしくてよいとはおもわんかね?

 ワシはワクワクしたわい


 それにワシ、実は昔教師をしておったのじゃ。

 若人の考えなど手に取るように感じ取って見事に導いてくれようぞ

 。



 パラパラと見習い達が集まりだした。

 ふむ、今日は5人かまずまずの人数じゃな。


 受け付けで荷物預けて、出発する事を告げる。

 では、行くかのぅ。


 人の出入りが少ない西門ではワシはすっかり常連さんじゃ。

 通行証代わりのギルドカードなども見せなくても顔パスじゃぞ。


 毎回「お気をつけて行ってらっしゃいませ」と挨拶の固い門番に会釈を返し

 見習い達と草原を目指す。

 まあ精々四半時といった距離じゃから散歩で鍛えたこのワシには全く問題無い。


 今日のメンバーはわりと良く来る3人と最近レギュラーのチビちゃん、後は初めてでは無いがあまり見ない男の子が一人じゃ。


 慣れた子達は会話をしながらワイワイ進むが、男の子は一人ナイフを抜いて周りを見ながら先頭を進んでおる。


 心の中ではもう一端の冒険者なのじゃろうのう。

 じゃが、刃物を持って歩くとこけたときに危ないし、何よりワシこの辺りで危険な生き物見た事無いんじゃよ。


 まあ敢えて子供の夢を壊す必要もあるまいて、そのままにしておこうかのう。


 そのまま進んで目的地の草原をに出る。


 今日はこの辺りでよいかのう。


 薬草を取りきってしまわないように毎日場所をズラし、見習い達に正しい採集のを教えておる。


 根といちばん下の葉を残しておけば、直ぐにまた伸びてくるのじゃ覚えておくとよい。


 ついでに周りにある他の草を少し間引いておけばなお良いぞ。


 その草は良く似ておるが茎に毛が生えておるじゃろう?フォッフォ、外れじ。


 ほう、もう数を揃えたか、たいしたもんじゃのぉ。


 たいした時間も掛からず全員が採集を終える、随分手慣れて来たものじゃな。


 街に戻るにはまだ早いで、時間調整を兼ねて少しれくれーしょんじゃ。


 少し見晴らしのいい場所に移動する。


 一人は狩りをするのだと走って行ってしまったが、警戒の魔術を掛けておいたんで大丈夫じゃろう。


 ん?そうじゃ思いでしたぞい、あの子は前回も狩りに行って遅れて戻って来た子じゃわい。

 毎回遅れると困るのう、少し対策がいるわい。



 ワシは持ってきた桶に魔法で水を出す。


 見習い達はこの中に薬草を浮かべてゆく、もうお馴染みなのじゃ。


 後はみんなで桶を囲んで魔力を流す練習じゃ。

 実はこの状態で魔力を流せば薬草がその者の方を向くんじゃな。


 後は一番多くの薬草を振り向かせた者が勝ちじゃ。

 名ずけて贈り物大作戦げーむじゃ。


 バカにしてはいかんぞ?


 このゲームはチョコっとの薬学と初歩の初歩の魔術と錬金術の触りの部分が同時に学べて、しかも魔術の実技の基礎の練習の予行になり、尚且つ魔力の通った薬草は保存がききやすくなるのじゃ。


 ゲーム形式じゃからの楽しいしの。


 おまけにワシは楽じゃ。


 途中からは一対一や二対二等を組み合わせを変えてやって行くと一番小さな子がひとり勝ちをしだしたのじゃ。


 う〜むこれは‥


 予想通り魔術スキルを身につけておったわい。


 次からは何か、ハンデのつけ方を考えねばならんか。







 こうしてワイワイ遊んでいると大分時間が潰れてきたのじゃ。


 丁度狩りに行ってしまった子も此方に戻って来ておる様じゃ、今回は遅れておらんから良かったわい。


 おお!そうじゃ丁度魔術スキルを身につけた者が出たのじゃ、これを餌に単独行動を辞めさせれば良いのじゃ。


 うむそうしよう、ワシ賢しこい。


 見事に見習い小僧を言いくるめたワシは上機嫌で街に帰るのじゃった 、まる。

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