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続・深夜の大錬金術士

 あれはまだ嫁と結ばれるより随分前、知識教の司祭見習いとして錬金術ギルドに出向扱いで所属していた頃の話になる。


 当時既に新進気鋭の錬金術士と目されるだけの実力を備えていた私は、古代から続く錬金術士の疑問の一つである「物質とは何処まで細かく分解する事ができるか」その研究に取り組んでいた。


 当時物質の分解限界と目されていたのは魔素であった。

 各々の属性を持った魔素が組み合わさる事によって物質を形作る、そういった考えだ。

 過去には、実際に魔素から物質を組み上げることに成功したとする文献もある。


 しかし、魔素が集まり物質となる現場を観測する術がなく、理論と結果が揃っているにもかかわらず決定的な証拠が無いとゆうなんとももどかしい状態でもあった。


 其処で私は魔素を拡大して観測出来る装置を開発した訳なのだが、ここでやり過ぎた。

 完成した装置を使い、私が見たものは物質を構成する魔素の配列では無く、魔素を構成する何か。のちに霊素と名付けた神の領域を構成するモノだった。


 この霊素は、観測は可能になったが干渉する事は出来なかった。しかし、この霊素を観測してゆくことで私の世界に対する理解は深まり、錬金術士として史上発であろうスキルLv.10に至ることができた。




「この辺りかな、私の精神に変化が現れだしたのは」


「変化ですか?」


「そうだ、なんと言えば良いか…… 感情の波が段々と薄くなっていったと言えば良いのかな」


「それが神の領域を観測する副作用だと?」


「いや、副作用よりは、罠や防衛機能といった方が正しいかな。神ならざる者が世界の理を捻じ曲げてしまわぬように、だね」



 この後、霊素の観測に関する報告を発表した私は、錬金術ギルドの派閥争いに巻き込まれ、更には主だった宗派の殆どから神託による異端認定をうける。


 これを知った私の恩師でもある知識教の大司祭が私の身柄を保護、それから暫くは教団の司祭としての修行をしながら研究を続けることになった。


 そうして霊素に対する理解を深めていった訳だが、その後、決定的なやらかしをしてしまった。


 霊素に対する干渉を実行してしまったのだ


 そもそも我々、神ならざる者の権能は霊素への干渉権限までには至らない。

 錬金術スキルLv.10までで縛られ、手が届く確信があったとしても、成功する事はない。


 では、スキルに縛られなければ良いのではないか?

 そう思い立ったら後はすぐだった。


 この世の理に縛られない場所、半歩ズレた理が支配するこの世の中にある異界。

 ダンジョンの製作だ


 自らがダンジョンの主となり、スキルが作用しない独自の理を持った空間を作り上げる。

 この世界からの圧力より逃れるために随分と深いダンジョンになってしまったが苦労した甲斐はあった。


 結果、私は霊素のその一粒を取り分けることに成功した。




「あれは大失敗であったと申し上げます」


「いやあ、アルテアの評価は厳しいね」


「あの時、私とお母様が踏み込むのが少しでも遅ければ、お父様はダンジョンごと消滅させられていた。と、申し上げます」


「まあ、そうなんだがな。もう少しやり方とゆうか、手心とゆうか……」


「お父様!」


「はい、助かったのは二人のお陰です。感謝しております!」


「先生…… 」


「ラジエルも、もうわかったと思うが、要は霊素に触れる事は禁忌であったわけだ」




 霊素の観測まではグレーゾーン、ギリギリセーフであったが、その先はアウトであった。


 これにより条件を満たし世を管理する上位存在、まあ、神が直接罰を与えに乗り出した訳だ。


 幸運にも、その時の私には嫁とアルテアとゆう二人がついていたために、直接の危害を加えられる事はなかったが、一部の記憶の封印、研究に対する制約といった事が行われた。


 しかし、これらの処置が神々の傲慢で在ると考えた我が妻により、アルテアとバルキリーによる制約の解除への道が残された。


 これにより記憶があやふやな状態ではあったが、妻の遺言とアルテアの導きにより今日、この時を迎える事ができたのだ。



「まあ、こんな感じで私の錬金術士としての活動は制限されていた訳だが、これからはグレーゾーンであればガンガン攻めていける。ラジエルにはその手伝いと、これまで、そしてこれからの研究の成果全てを全てを伝えようと思う」


「はい、精進致しますので宜しくお願い致します!」


「では、アルテア、そろそろ戻ろうか」


「…………」


「ん?どうした?」


「いえ、これでもうジジイでは無いお父様にお会いするのが最後になるのかと感慨に浸っておりました。と、申し上げます」


「はは、アルテアはジジイの私は嫌いかな?」


「そんな事はありませんが、今のお父様はお父様ですが、ジジイのお父様はまるで手の掛かる弟のように感じています。と、申し上げます」


「あらら、それは申し訳なかったがこれからもっと迷惑かけるかもしれない。でも私にはお前が必要だ。これからも宜しく頼む」


「もちろんです。これからもお任せ下さい、お父様」


「では、頼む」


「はい」


 アルテアの返事と共に視界が白く光り私たちは現実の世界へと帰還した。のじゃ。


ここで2章終了です

閑話を挟み3章の開始となります

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