続・湖の討伐依頼
短めです
水面が盛り上がり水しぶきが上がる。
「とったどー!!」
水中から飛び出し現れたのは背に魔力の羽を生やしたゼクス。
手にした斧槍の先には口内を斧槍に引っ掛けられ暴れる魚型の魔物。
おお、デビルキャットフィッシュ!
魔の力で変異し生まれるとされる巨大ナマズの化け物じゃ。
その巨体をくねらせ尾で水面を叩き、暴れまくっておるな。
ゼクス一体では手に余るかとも思ったが遊撃の4体も合流、5体がまるで綱引きの様にデビルキャットフィッシュを本陣のへと引っ張ってくる。
フィアお主はよいのか?
目で問うと
「……イヤ」
ふむ、この子が6体の中で一番分からぬのぉ。
そうこうしておるうちに半ばまで陸地に引き上げられる大ナマズ。
うひゃ!一層大暴れしだしおったわい。はねられた水がこちらの方まで飛んできおる。
あまりの激しさにバルキリー達は振り払われ脳筋共も近寄れんようじゃな。
こんな時は……
うむ、戻ってきた様じゃ。
湖の中から戻ってきた錬金人形姉弟。
其々がバルキリー達が本陣に預けておった斧槍を手に取ると
ガツッ!!
同時に背の部分を大ナマズの脳天に突き刺し引きずるように陸地へと引き上げる。
上がる歓声。
「これから遊ぶ湖を魔物の血で汚したくは無かったので、追い込むのに少々手間取りました。と、報告致します」
これ、アルテアや、其処は嘘でも都市の水源を汚さぬ為とかにしておかんか。
しかし、これは又随分と立派な大ナマズじゃな。
一般的には人ひとり丸呑みするくらいのサイズなのじゃが、此度の大ナマズならば馬一頭位は楽に行けそうじゃな。
最近発生したばかりの筈なのじゃがこのサイズとは……
目を凝らし魔力を探る。
バインバイン、紐、ふりふり、極小、etc……
ちがう! 幻惑魔術まで見通してしもうたわい。今はナマズじゃ!
むむっ!体内に何やら良くないものを取り込んでおるようじゃ。
脳筋共に指示を出し、腹を開けさせる。
出てきたのは中々立派な魔石と、
「石の魚の様であるが」
「親父殿、何ですかこれ?」
「依り代の類じゃな」
呪詛を溜め込んだ石を魚の形に削り出したもののようじゃ。
これの影響で魔物化したようじゃが、人為的な発生じゃったか。
何ともはた迷惑な。
じゃが、もうほとんどの力をナマズに吸収されて出涸らしじゃな。
まあ、面倒ごとはごめんじゃ、放置じゃ放置。
アルテアさんや、まとめて浄化しちゃいなさい。
アルテアと同期したバルキリー達が方々に散り湖を囲む巨大な陣を組む。
響き渡る歌。
やがて湖が輝いたと思うと水精達が消え、石の魚が崩れて砂になる。
うむ終わりじゃ。
しかしこんなことは本番前の些事にすぎぬ。
ワシは惚ける脳筋共に喝を入れる。
「何をしておる!本番はこれからじゃぞ。あとをかたし陣地を構築せよ!ゴザを敷き、カマドを作るのじゃ。モタモタしておるとマリーナさんが到着してしまうではないか!」
ハッとしたようにバタバタと動き出す脳筋共。
「ゼクセン、お主も中々ぶれぬのであるな……」
「当たり前じゃ!事の優先順位を見誤っておっては賢者などとは名乗れぬのじゃ」
「お主が賢者を名乗っておったとは初耳なのであるが」
「細かいことは良い、楽しい時間はあっとゆうまじゃぞ。いそぐのじゃ」
暫く経ち、第二陣が到着する。
マリーナさん達の到着に湧き上がる第一陣の脳筋共。
おお、「地上の光亭」のアイドル、サラちゃんまでおるではないか!
む、お主が誘ってきたとな?でかしたひ孫よ!!
其処からの時間は実に有意義なものじゃった。
マリーナさん、サラちゃん、「剣の調べ」のテレシアちゃん
たゆんたゆん、ぺたん、バイン。
彼女らはアルテア達のような扇情的な異世界水着は着ておらなんだが……
張り付く薄布、透ける肌に眩しいふともも。
負けておらぬ!異世界の水着にも何ら引けをとらぬぞ、この世界の水浴びスタイル!
むしろ隠されているだけムラムラする気すらするぞい。
40年ほど前に生物的な男を引退したワシですら現役復帰するかと思うたわい。
まあ、ワシは嫁一筋じゃから復帰したからといってなにもないんじゃがな。
ないぞ?アルテアよそのような目で見るでない。
ちなみに、マリーナさんが水に入った直後から、湖には謎の靄がかかり脳筋共はガックリと項垂れておった。
ワシには見えたがの。リーベルトの悔しそうな顔が面白かったし、ひ孫に魔力視のコツを教えてやったら引くくらい感謝されたがまあ良いじゃろう。
日が傾くまでには撤収せねばならぬが今日は良い日じゃ!