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閑話4

 その頃の邪神殺し



 吾輩、リーベルト=オルヘックスは今、ゼクセンの監視に便宜を図る約束で協力を取り付けた「地上の光亭」の面々を引き連れ新歓楽街の入り口に陣取っているのである。


 完全武装の冒険者風の集団、おおよそ50人による封鎖であるな。


 対するは迷宮都市歓楽街の自警団、要するに用心棒と地まわりの集団で人数は100程。

 人数では倍近く差があるがこちらは戦闘の専門家の冒険者に扮しており、見た目上の戦力差は五分といったところであるかな。


 まあ実際には「地上の光亭」の面々は選び抜かれた密偵や騎士の集まりであるからして対人戦であれば無類の強さを発揮するはずであるのである。


 さらにこちらで最もガタイの良い騎士に持たせたs級冒険者を示す白銀に縁取られたオルヘックス侯爵家の旗、この世でただ一人吾輩「邪神殺し」を示す印をはためかせる事での威圧も行っているので、相手は動く事が出来なくなっているのである。


 最初はお行儀よく隊列を組もうとしていた「地上の光亭」の面々も吾輩の演技指導により、バラバラでやる気の無さそうに見えて絶妙の距離と周囲への警戒を怠らない熟練冒険者風の集団になっているので、更に威圧感倍増であるな。


 さて、そろそろ頃合いであるかな。


「貴様ら下っ端に用は無い!この俺、リーベルト=オルヘックスの前を塞ぐのであれば容赦はせん、怪我したくなければ道を開けよ!!」


「あ、相手が誰だろうとここにはここの仕来たりってもんがあるんだ!はいそうですかって通せるわけねえだろう!」


 この場の責任者であろう強面の男が叫ぶ。

 ふむ、この吾輩に対して正面から言い返すとは中々肝の据わった男であるが……


 声が震えているのである。

 少し押してみるのであるかな。


 吾輩、数秒だけ魔力全開である。

 少しでも感の良い者であればこの辺り一帯、既に吾輩の殺傷圏内である事に気がつくであろう威嚇。


 おっと、「地上の光亭」の面々が固まってしまったのである。

 こういったときは腕が立ちすぎるのも困りものであるな。


 さて、強面の男は…… 立ったまま泡を吹いてしまっっているのである。

 やり過ぎたか。


 吾輩が、どうしたものかと思案していると自警団の中央の人が割れ、屈強そうな男達に守られたシワシワの老人が進み出てきたのである。


「わたくし、この辺りの元締めをさせていただいておりますケリーと申します。この度の暴挙、どの様な仕儀でございましょうか?」


 ん?

 どこかで聞いた様な……

 ああ、こやつは。


「随分と偉くなった様だな、ケリー坊や」


「はは、100を超えたジジイに坊やは勘弁してくだされ、リーベルトの兄さん」


 やはりであるか、このジジイは昔吾輩が面倒を見ていた孤児のケリーであるな。

 未だ生きて現役とは驚きである。


「しかし兄さんであればここの仕来たりもわかっていらっしゃるはずだ。それをこの暴挙、このジジイに納得の行く説明をしては頂けんでしょうか?」


「外からの圧力には屈しない歓楽街鉄の結束か……。 だが、今回のコレは外からの圧力じゃねえぞ? ここの顔役の一人が「エルザの酒場」と、そこのマリーナに手ぇ出しやがった。お前ならこの意味わかるよな?」


「なんと……」


「お前のトコまで報告が上がってなかったんだろうが、手ぬかりが過ぎるんじゃねえか?新参だがお前の後継者候補の一人って事になってるゴーザスって野郎だ。なあ、ここの組合費100年分前払いしてるこの俺の店に手ぇ出すって事がどうゆう事か、俺が喧嘩を売られたらどうするか、お前ならよーく知ってるよな?」


「それは……」


「更にだ、マリーナは俺の曾孫だそうじゃないか。俺の身内にチョッカイかけといてすみませんで済むわけないのはわかってるだろ? あ、そおいやあてめえ、エルザが俺の子産んだの知ってて連絡よこさなかったんだろう!コレも少し話し合いが必要だな!」


「兄さん勘弁して下さい!私はエルザの姉さんに口止めされてたんだ。言えるわけないでしょう」


「エルザがか、其れは仕方ないか……。 まあ、その事はいい、だが今回の落とし前はキッチリ取らせて貰うぞ。コレは決定事項だ、異論は認めねぇ。まあ、これ以上年寄りいじめてもしかたねえ、通るぞ!」


 俺の旗を先頭に50人の武装集団が進む。


 本来ならこの都市で一番の賑わいを見せる筈の通りは、全ての店が硬く戸を閉めひっそりと静まり返っている。



 ゴーザスって野郎はこの通りに5軒の店を持っているらしいが、全店舗今日で閉店だ。


 まずは1軒目。


 戸を叩き壊し中の人間を全員引きずり出す。

 女は放り出すだけだが男は全員半殺しだ。


 末端に至るまで2度とこの街で商売しようと思わない位には追い込ませて貰う。

 実際に手を下す面々には申し訳ないがここは任務の一環として耐えてもらう。


 中にはこの店の用心棒らしき輩もいたが数の暴力で袋叩きだ。


 こうして無人になった店舗を結界で囲み火の上級魔術で一瞬のうちに灰にする。

 周りはみな呆然としているが俺が誰かを思い出したのか、一人また一人と正気にかえる。


 こうして俺は一時間ほどの間に5軒の店を灰にし、ゴーザスって野郎にもキツく焼きを入れた。

 今回の件であちこちに借りを作っちまったが曾孫の安全の為だと思えば安いもんだ。


 暫くすると先に要件を済ませたらしきゼクセンが合流してくる。

 ゴーレム隊が一体増えて6機になっているな。

 相性問題のない当たりの悪魔だった様だ。


「おう、ゼクセン、そっちも首尾よくいったみたいじゃねえか。このまま解散するのも勿体ねえ。旧歓楽街に戻ってパーッと打ち上げしようぜ!」


 俺が話しかけるとゼクセンが一歩下がる。

 どうしたんだこいつ?


「リーベルトさんや、興奮気味なのは分かるがそのしゃべり方はなんとかならんか?演技ではなく素で昔の荒れておった頃に戻っておるぞ?」


 何をいって……はっ!

 周りを見渡すと皆が頷いているのである。


 わ、吾輩とした事がなんたる不覚!!

 年甲斐もなくハッスルしたのをよりにもよってゼクセンに指摘されるとは!


 この日吾輩はあまりの恥ずかしさに一人寝床で何度も悶えたのであった、のである。

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