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早朝の護衛隊長

薬草じいさんの朝は早い。

 ってか早過ぎる。


  毎日暗いうちから起きてごそごそし始めるのは勘弁して欲しい。

 おかげでこっちはこの数年鶏よりも早く起きる毎日だ。


  じいさんがいつ外出してもいいように準備をしながらじいさんの部屋の様子を伺う。

 まあ、じいさんは毎日、同じ時間同じ行動をとるからよほどの事がなければ大丈夫なんだがな。


  おい、新人いつまでも寝ぼけた顔してないでシャキッとしろ、まだ頭寝てるのはお前だけだぞ。

 交代の辞令が出るまでこれから毎日この時間だから覚悟しとけ。


  そんな嫌そうな顔すんなよ、

 お前はまだいい方だぞ指揮官の俺なんかは転属の希望はまず無いんだからな。


  さて、そろそろ辺境伯領の奴らはおネムの時間だなしっかり頼むぞ。



  宿の従業員が動き出す時間を待ってじいさんは日課の散歩に出かけた。

 この散歩中の護衛は錬金術ギルドと隣国のがそれぞれ護衛を付けている。

 俺たちは食堂で帰りを待つ形だな。

 同じ宿を拠点にする中堅冒険者に偽装しての密着護衛ももう3年手馴れたもんだ。


  街中担当の奴らは住人に溶け込んでじいさんの見守り活動をしているはずだ。

 開店準備中のパン屋、水汲み中の奥さん、犬の散歩中の下男、etc‥


  最初の頃は縄張り分担なんかも出来てなくて所属の違う護衛同士がギスギスしあって

 一触即発あわや大惨事なんてこともあったよなぁ。


  今はずいぶん楽になったってことだ。

 おい、食堂で待機するぞ サッサと準備しろ。







  ここで護衛対象のじいさんと俺たちの状況をもう一度説明しておこう。


  護衛対象はゼクセン=コラルド卿 コラルド子爵家の前々当主 。

 本人は平民の出だがタントバル辺境伯家の娘婿になり、辺境伯家の陪臣に。

 妻の死後息子に後を譲り、その後に上げた功績で家が叙爵されトントン拍子で

 子爵にまで成り上がっている。


  この功績が問題で、このじいさんは凄え錬金術士だったらしい。

 なんてったって、神の万能薬エリクサーの類似品を作っちまったてんだから大概だ。

 他にも王都に蔓延しかけた疫病の特効薬をたった3日で量産しちまったってのもあるんだぜ。

 そんでもって、付いた渾名が大錬金術士だそうで、錬金術ギルドの終身名誉顧問にも任じられてる。


  更にこのじいさんは優秀な教師でもあったらしくて錬金術研究の後見と引き換えで

 あちらこちらで優秀な魔術師を育ててる。

 高度な魔術や攻撃魔術なんかはからっきしらしいんだが魔術の理論についての理解では右に出る者は居ないって話だ。


  で、この一部では人類の至宝とか呼ばれる頭脳の持ち主が研究所をたたみ、錬金と魔術の理論大系とも言える本の執筆を始めたと噂がながれた訳よ。

 これで世界中の魔術ギルド、錬金術ギルドが大騒ぎになったんだが問題が発生したわけだ。


  その問題なんだがじいさん死を覚悟しちまってるらしくて身辺を整理して王都から出て行っちまってな、故郷に近いここ迷宮都市で日銭を稼ぎながら生活してる。

 しかもよりによって冒険者登録して依頼で食ってくつもりだったらしい。


  これに慌てた色んな方面のお偉いさんがけん制し合いながら其々勝手に護衛を付けた結果

 今みたいな状態になったって訳だ。

 俺たち王国の諜報部隊が掴んでる大きな部隊だけでも俺たち王国系、錬金術ギルド系、冒険者ギルド系、タントバル辺境伯系、お隣の連合国系、大小併せりゃ100人位が護衛にあたってるんだぜ。


  まあ、これが現在の状況で本が書き上がるか、じいさんがくたばるまで続く訳だ。

 冗談みたいだが重要な任務なのは間違いない。


  後でもう一度新人に、じいさんの1日の日課表を叩き込んどかないとな。

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