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続 酒場の御一行

 邪術士、異界から呼び出した悪魔と呼ばれる存在と契約を行い、その悪魔の力を拠り所として術を行使する者達の事じゃ。

 呼び出した悪魔の種類によりその能力は千差万別、口にするのもおぞましい外道から、お菓子を美味しく作れるようにしてくれるだけのほのぼのさんまで色々じゃ。


 ただ、総じて力の代償に生き物の命を要求される事から世間様からは白い目で見られるのは確定じゃな。

 とある界隈では、無条件で賞金首じゃし。


 近いところでは、ラジエルのオリジナルも邪術に手を出しておった節がある。

 まあ、1000年も前の事じゃから呼び出された悪魔も、もう残ってはおるまいが。


「邪術士ですか。久々ですね。スグに狩り出しましょう」


 アルテアは楽しそうじゃな。


「なんだ、お前ら未だに悪魔狩りやってたのかよ。とっくに目標数達成したのかと思ってたぜ。」


「目標数はとっくに達成済みなのであるな。ゼクセンとアルテアの変なこだわりで質の面で足りておらんのである」


「悪魔の魂は良い素材なのじゃが相性問題が酷くてのぉ。半分ほどは使い物にならんのじゃよ」


「まったくこのバカは、最初は嫁さんの遺言だからとか言ってやがった癖に今じゃ完全に自分の趣味になってるじゃねえか」


 うーむ、返す言葉もないのじゃよ。自分で悪魔を呼び出すのは嫁に禁止されてしもうたが、他人の呼び出した悪魔を横から捕まえれば代償も要らず嫁との約束も守れる。

 一石二鳥じゃ。彼奴らのもたらす異界の知識は非常に興味深いし、その魂は最高の素材じゃ。


 狩らずに置いておく理由がないわい。

 あと一体で数も揃う事じゃし是非とも確保しておきたいところじゃ。


 しかし、邪術士が絡んでおるのであれば、このチンピラ共にはもう用は無いの。

 店の外に放り出しておくれ

 アルテアは、ただ暴力を振るっておるように見えて、どうすれば人体が壊れるかを熟知しておりる。怪我をした2人も命に別状は無いじゃろう。


 邪術士が絡んでおる時点で攻めに関しては解決したも当然じゃ。

 アルテアが全力を出しても許される大義名分が向こうからやってきたのじゃからウハウハじゃな。


 あとはマリーナさんの身の安全じゃ。

 この辺りは放っておいてもリーベルトが何とかするかの?


「優秀な護衛をつけるので暫く身を隠しておいて欲しいのであるが」


「はい、こうなってはもう全てお任せします」


 うむ、まとまったようじゃの。


「お待ちください。敵に背を向けて隠れるのには賛成致しかねます」


 ぬお、この娘はまたまぜ返すか!


「妹を守るのも姉の役目です。マリーナの身は私が守りますと宣言致します」


 ん?いつの間にやらマリーナさんまで妹認定されておるぞ?

 とゆう事は……


「お前が護衛についてくれる事は有り難いのであるが、妹とはなんであるか?」


「製作者の血縁者の娘であれば妹のようなものです」


「け、血縁者であると?」


 リーベルトの声が震えておる。


「私の妹センサーが反応しています。製作者から少々世代が離れた血縁者ですが直系ですし問題ありません」


 因みに、妹センサーなる物をつけた覚えは無いが、アルテアがこの判定を間違えた事も無い。不思議じゃな。


「では、あの時のエルザは既に……」


 ふむ、英雄の器を持った男を縛りつけたく無いとかそんな感じかのぉ。エルザちゃんいい女じゃのぅ。まあ、ワシの嫁も凄くいい女じゃったが。


「マリーナは普段どうりに生活をしてもらえば、私が全てを完璧にサポートします。お任せ下さい」


「普段どうりにと言っても、お店はあいつらの嫌がらせで手伝いの若い娘がみんな辞めちゃったし難しいのよね……」


「問題ありません。それも私が手伝います。私は人のお世話をして数十年。技術も完璧です」


 マリーナさんをじっと見つめるアルテア。


「はい」


 ありゃ、折れてしもうたか。


「しかしアルテアよ、悪魔狩りの準備はどうするのじゃ?一度王都に戻りお主の装備を整えねばなるまい」


「それでしたらラジエルを使いに出します。これを持たせておけば私の代理である証明ができるでしょう」


 そう言ってスカートの中から神剣を取り出すとラジエルに手渡す。

 ガンドとリーベルトの2人以外に触らせるのを初めて見たわい。

 この娘は一度受け入れた相手には無条件の信頼を寄せるのじゃ。

 ラジエルよ、責任重大じゃぞ。


「姉さん、僕には何処で何を受け取ってくるのかさっぱりわからないんだけど……」


 お、何やらモジモジと返事をしておるが、これはアルテアの目を見て受け答え出来なくなっておるな?

 こやつバインバインに篭絡されてしもうたようじゃの。


「それについてはこの後、書状と一緒に伝えます。期限は5日です、それまでに帰って来なさい」


 こちらは気にした様子も無いが、告げた日程は随分な強行軍じゃな。早馬の四倍位の早さじゃ。

 向こうで受け渡しに手間取ると片道2日とかか?


「では吾輩が邪術士についての内偵を進めておくのである、最近ちょうど良い伝手が出来たところなのである。それに吾輩の身内に手を出してタダで済ますわけにはいかんのであるしな」


 リーベルトはちょっと目が怖い。こりゃかなりおかんむりじゃわい。


 しかしまあ、これで大概の問題は解決しそうじゃの。


 依頼者はおそらくリーベルトが追い詰めるとして、邪術士はラジエルが戻り次第狩り出す。

 それまではアルテアがマリーナさんを警護すると。

 チンピラは、まあ放っておいてもかまうまい。後ろ盾が代官くらいでは何もできまいしの。


 あ、一つ重大な問題があったのじゃ。

 アルテアは大人しく酔っ払いの接客ができるのかの?

 調子に乗っておさわりとかしてしもうたら、それがワシでも血の雨が降りそうなのじゃ。


 そちらの方が心配になって胃が締め付けられそうになってきたぞい。

 暫くの間じゃ、間の悪い客が現れぬよう祈るしか無いわい。


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