閑話 3
皆さんこんにちは、駆け出し冒険者向けの宿「地上の光亭」事、知識教迷宮都市分神殿西支部宿泊施設担当司祭のサラちゃんです
名称長いですね。
でも私の所属する教団は実用性一辺倒ですからこんな物です。
お役所仕事なんですね。
地上の光も聖句から持って来ただけで独創性は皆無なのです。
さて、そんな名前の「地上の光亭」ですが、現在開店休業中です。
原因はやっぱりジジイです。
なんとこの度ジジイがダンジョンに籠り製作活動を始めてしまったのです。
期間は何と2〜3ケ月とのこと。
その間、本の執筆活動どうなるんですかね?
やっぱり遅れて私の王都帰還が遠退くのでしょうか。
やはりはた迷惑なクソジジイです。
しかも籠ったダンジョンの階層は地下24階、過去にS級冒険者リーベルト=オルヘックスが記録したダンジョン最深記録一歩手前の階層です。
この宿に拠点を持つ他の勢力も、この地下24階とゆう難所の前に頭を抱え各所との連絡、調整に大忙しの様でした。
流石にそんな所までは追いかけられませんよね。
そんな訳で開き直った私は、降って湧いた長期休暇を満喫する気満々で迷宮都市観光計画などたてているのです。
ここに来て結構経ちますが、常に待機していなければならない私は、この街をまともに観光したことすらないのです。
因みに配属されてこれまでの出動回数はたったの一回。
私は本当に必要なのでしょうか?
そんな事を考えていると、あらあらお客さんです。
若手の冒険者パーティーでしょうか。
剣士っぽい貴公子とカッコいいのに何故かムカつく顔をした魔術士。
後は胸に贅肉のついた少女ですね。
「申し訳ございませんが現在満室で御座いまして、」
この剣士は惜しいがココは普通の宿ではないのです。関係者以外宿泊禁止。
出会いのチャンスを逃すのはもったいないと思いつつ断腸の思いで宿泊を断ろうとする私の言葉を魔術師が遮る。
「ああ、大丈夫、ここの事は知ってる。宿泊じゃないんだ」
私は剣士さんと話してるのに割り込んでくんな魔術士!
って、何だ関係者か、ならば面倒くさい経歴の人ばかりの筈、幾らカッコよくてもコレは無いですね。
それによく見れば横の少女が剣士さんの腕にワザとらしく贅肉のを当てている。
私に対する牽制か?死ねばいいのに。
はっ!またまた暗黒サラちゃんが出てくるところでした、あぶないあぶない。
造り笑顔が崩れない様に注意しながら贅肉少女を一睨み、毎日怖いおっさん連中に囲まれてるサラちゃん舐めんな、ってあれ?この顔何処かで……
あれだ、コレはヤバイやつです。先日見た「鉄壁」のアルテアのそっくりさんです。
まあ、アルテアさんは非常に親近感の湧く体型をした方でしたが、そのアルテアさんが人間ならば、こんな感じだろうとゆう顔。
そうと分かれば魔術士の顔がムカつく理由も分かりました。
顔のパーツが何処となくジジイに似ているのです。
はい、見事に関係者です。しかもジジイの血縁者ですね。
こいつらがキチンとジジイを見ていないから私が苦労する、ジジイに続く諸悪の根源その2です。
「知識教のサラ司祭ですね。今日は貴方に頼みが有って参りました」
ムカつく顔の魔術士が話しかけてくる。
「先ずは此方をお読みください」
手渡された一通の書状。
見たことのある封書の中身はやはり見た事の有る書式の書類。
ウチの、知識教の人事異動通達書類。普段ならばこれで王都に帰れるかもと大喜びするところだけど……
「冒険者パーティー、『剣の調べ』専属司祭に任ずる。期間、ダンジョン地下24階到、もしくはゼクセン=コラルド元司祭帰還まで」
…………
…………
なん、だと?
この私がよりにもよって冒険者?
いーやー!!危険なのも、汚いのも、臭いのも、嫌ぁー!!
このタイミングだからもしかしたらと思ったけどまさか本当に冒険者なんて!
剣の調べ。聞いたことあるよ。若いのに最前線で探索を進めるパーティーだよね。
辺境伯家の子息に、カナレリア・マッセン流宗家の娘、あとジジイの孫だか曾孫だか。
殺られる前に殺れの超脳筋パーティーらしいじゃない。
ここのおっさん達が言ってたサラちゃん知ってる。
辞令のサインは王国最高司祭。
駄目だ、逃げられない。
この人見た目は温厚そうなお爺ちゃん何だけど、もの凄く押しが強いらしいし、おまけにここのジジイの弟弟子と聞いた。
実はあのじじい、昔は大司祭候補だったとか。
オワッタ。
私の人生終了のお知らせです。
こうして私の長期休暇は消え去り、血と埃にまみれた3ヶ月のダンジョンライフが始まってしまったのでした。
次回、「サラちゃんダンジョン」に続きません