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ゴーレムと錬金人形

「確かに言質を取りましたよ、お父様」


 最早これまでじゃ、これからはアルテアの好きなようにさせてやるしかあるまい。

 子の独り立ちを認めてやるのも親の務めかのぉ


 アルテアはワシの言葉でやる気になったようじゃ。

 部屋の隅でゆっくりと起き上がったゴーレムに向かって歩を進める。


「あなたのお陰で私の願いが達せられそうです。礼を言いましょう。ですがガラクタの分際で私の父達に危害を加えようとしたことは許されません」


「少し遊んで差し上げますので好きなだけ抗いなさい。まあ、無駄でしょうが」


 うーむ、どうしてこの娘はこう誰に対しても高圧的なのじゃろう?

 いや、嫁と女中頭にだけは従順じゃったが……


 で、一方のゴーレムじゃが


「錬金人形だと……、錬金術を冒涜する愛玩道具風情がぁ!!」


 こちらはこちらで煽り耐性皆無じゃな。

 コレは擬似人格の基礎部分を人の人格を移して制作しておると見た。


 十中八九製作者の複製じゃな。このダンジョンの技術をやたら持ち上げるのもそのせいじゃろう。


「不必要な関節、小サイズ化の為に起こった装甲の薄さ、フレームの脆弱さ、スタイルを優先した為に起こるバランスの悪い重心、パワー不足。」


「その合理性の欠片もない存在そのものが許せん!機能美と言う言葉を知るがいい!!」


 あーこりゃ確定じゃな。しかも技術に浪漫を求めないタイプの合理主義者じゃ。


「そおいやあ、アルテアの時は合理性とか考えなかったよな」


「ひたすらに要求通りに制作したのである」


「すまぬ、嫁には逆らえんかったのじゃ」


「まあいいんじゃねえか?結果としてアルテアは間違いなく最高傑作だ」


「それには同意するのである」


 おっ!煽り耐性の低いゴーレムが拳を振り上げアルテアに襲い掛かりおった。


「これは何の真似ですか?」


 襲いかかる金属の拳を軽く払い落とすアルテア。


 その払い除けた手でゴーレムの頭部を掴み、そのまま投げ飛ばす。


 おお、今度は転がらずに背中で滑って行きおったわい。


「あなたの考える所の合理性とやらは全く理解できませんね。なぜあなたは私の関節構造を否定しながら拳を握るのですか?」


「関節を守る必要がない貴方の構造なら……」


 一足で間合いを詰めたアルテアの左の抜手がゴーレムの喉元を穿つ。


「ほら、この様なやり方のほうが効果的ですよ?」


 アルテアさんや?少し過激ではないかのぉ?


「うがぁぁ!アレ絶対指関節が逝ってるぞ。誰が直すと思ってんだぁ!」


「ご愁傷様である。精々弟子をこき使うのであるな」


 ガンドが頭を抱えおった。


「ふむ、私の構造では無理があった様ですね。壊れてしまいました」


 ガンド完全撃沈じゃ。


「ありえん!この私の装甲を貫くなど…………」


 ゴーレムはまだ動ける様じゃな。造りが単純な分だけ頑丈なのは事実じゃからのぉ。


「まだ動ける様で幸いです。これから人型の利点の実践に付き合っていただかねばなりませんからね」


「何も難しいことはありません。私が良いと言うまでそこに立っていれば良いのです」


 アルテアは拳を握り構えを取り、


「人型の利点とは、人が長年かけて磨いてきた技術の流用にあります」


 踏み込む、


「如何に脆弱な関節を守り」


 バキ!


「如何に強く!」


 ベキッ!!


「如何に効率よく当てるか!」


 ガキッ!


「拳を握るとはただ手を丸めるのとは違うのです。指一本一本の握り方から全身の動かし方まで全て先人の創意工夫の上に成り立っています」


「これらの先人の創意工夫を追いかけ、更に研鑽できる。コレが人型が優れたる所以です」


「拳の作り方1つ知らぬ貴方とは違うのですよ」


 アルテアが何やら良い話をしている様じゃが、相手のゴーレムをフルぼっこにしながらでは怖いだけな気がするのじゃ。


 じゃが流石はオリハルコン、まだ何とか原形を留めておる。


「では質問です。私の様な人型ではない貴方の最適解はなんですか?」


「私の、ゴーレム型の……うあぁ!!」


 構えも何もなく壊れてかけた体で突撃するゴーレム、体当たりじゃな。


 ワシにはようわからんが、そんな単純なので良かったのか?


 ガシッ!


 ゴーレム渾身の体当たりを正面から受け止めるアルテア。


 あれは体のフレームも逝ったのぉ

 ガンドは……ダメじゃな、口から魂が抜けておる。再起不能じゃ。


「中々の一撃です。少し見直しました」


相手を褒め、後ろに飛び間合いをあける。


「今の一撃に対するご褒美です。これも人の技術の応用。人であった母から受け継いだ人が使う為の道具の使用をお見せしましょう」


 何やらアルテアのテンションが上がってきておる気がするのぉ。なにか良くないことが起こりそうじゃが……あっ、ダメなやつじゃ。スカートの中から剣を取り出しおった。


「アルテア、それはダメなのである!ソレの魔力充填は苦行以外の何物でもないのである!!せめて、せめて普通に切って欲しいのであるぅぅ!!」


 リーベルトの叫びを無視し、アルテアが再び踏み込む。

 携える剣は「人造神剣ガンド」アルテアと同じ神剣から造られたそれは、既にアルテアの一部と言っても良いじゃろう。


 そして一閃。

 ワシには一条の光が走った様にしか見えんかった。


「これにて講義終了です」


「ああ、そお言えばまだ名乗っていませんでしたね。マッセン流剣術師範「鉄壁」のアルテアです。覚えておきなさい」


 アルテアさんや、お前さんゴーレムに「少し遊んでやる」のではなかったのかのぉ?

 いつの間に講義になっておったのか?


 クルリとこちらに振り返るアルテア。後ろではゴーレムが真っ二つじゃ。


「お父様、終わりました」


「う、うむ。助かったのじゃ」


「それで、私の願いの話なのですが。今回で身体に随分とガタが来てしまいました」


何やら似合わぬ無茶をして居ったからのぉ。


「つきましては一緒に身体の全面改修も提案します。素材の見直しから初めてお父様方の最新技術の導入を希望です」


 お、お主まさかその為にワザと……


「資材はそこのゴーレムでお願いします」


 オリハルコンの加工とかどれ程の労力が!


 ガ、ガンド、は撃沈か…


 リーベルト、も立ったまま真っ白に!


 ワシら生きて帰れるのじゃろうか……





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