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隠し部屋の大錬金術士

 今いる此処は地下24階の転移部屋じゃ、ここから隠し部屋までは10分程の移動らしい。

 少し休んでから移動したいところじゃが相手がアルテアでは少しでも時間を稼いでおきたい。


 しかし、魔力はないし身体はヘトヘトではモンスターに襲われでもしたら大事じゃ。

 ワシは懐に手を入れ、お守り代わりに持ち歩いている爆発薬を確かめる。


 コレは二種類の液体がほんのチョットの魔力を触媒にして反応し、爆発を起こす代物じゃ。

 瓶からピンを抜き、魔力を込める、ピンを抜くだけでも魔力を込めるだけでも爆発はせぬ。

 安全対策は重要じゃぞ?


 最初はうっかりで自宅の三分の一を吹き飛ばしてしもうたからのう。

 嫁にしこたま叱られたのじゃ。流石のワシもアレには参ったわい。

 それ以来爆発する薬には二重の安全対策、叱られるのはゴメンじゃからな。


 いつでも切り札を切れるように懐に手を入れたままダンジョンを進む。

 そして二つほど角を曲がったときに遂にモンスターが出おった。


 金属製のゴーレムじゃ。

 魔術による一発精製では無い本格的なゴーレムとは中々わかっておるでは無いか。

 この製作者はそこそこ腕があるようじゃのぅ。


 地下24階ともなれば敵の強さもかなりの物の筈じゃ、今こそ我が切り札の出番か!

 と、思ったがそうでもなかったわい。

 ガントに行く手を阻まれ、リーベルトの魔術で砂のように崩れてしもうた。


 まあ、まだまだワシが出る程では無いとゆう事か。

 お互いの無事を確認し、先へと進む。


 その後も数度の襲撃があったが殆どリーベルトの独り舞台じゃ。

 その姿は実に頼もしい。

 あとは囮のガンドが少々危なっかしいが、ワシはもう手に汗握って応援するだけじゃ。あっ……。




 その後、暫く進むと行き止まりに突き当たったのじゃ。


「ふむ、ここか?」


 と、ガンド。


「そうである。わかるかね?」


 リーベルトがたずねる。


「あからさまだな。ここだけ壁の石の組み方が違うじゃねえか」


 ふむ、ワシには同じにしか見えんが、ドワーフ的には違うのじゃろうのぅ。


「流石である。吾輩達が見つけた時はただの偶然だったのである」


 リーベルトは関心したように何度も頷きながら壁をいじくりまわしておる。

 どうやら何かカラクリのようなものがあるようじゃの。

 ほりゃ、壁の一部が動いて出入り口が現れおったわ。


「ついて来るのである」


 言われるがままに後に続くワシとガンド。


「ようこそ吾輩の情熱の残滓へ」


 リーベルトは両手を広げ、芝居じみた口調でワシらを迎え入れる。

 ほうほう、こりゃ大したもんじゃ。


 ダンジョン下層へのベースとして物資を整えたと言うだけあり、さほど広く無い隠し部屋の中にはひと抱えほどの木箱がうず高く積まれておる。

 それらから微かな魔力を感じるのはリーベルトの保存の魔術かの。

 100年近くの年月を経て未だに効力を保つとはさすがさすが。

 今程では無いが昔から優秀じゃったからのぅ。


 今日からしばし、この部屋がワシらの拠点じゃ。

 取り敢えず自分の陣地を確保じゃな、この壁際なんか良い感じじゃ。寝床を作ってしまえ。


 他の二人はどうするのかの?

 気になって目をやるとリーベルトは資材のチェックをしておった。

 ガンドは……ん?


 なにやら入って正面の壁を叩いて回っておる。


「ガンド、なにをしておるのじゃ?」


「ここがな、どうもおかしいんだよ」


「昔調べた時は何もなかったのであるが」


「表ほどはあからさまじゃあねえんだけどよ、この部屋は複数回何かが通ったような跡があるんだ」


「で、ここで跡が消える。石にもなにか違和感があるしな。只の壁じゃねえみたいなんだがお前ら何かわかるか?」


「吾輩には何も分からんであるが……」


 今度こそワシの番かの?正直この二人に分からんようなカラクリや魔術ならワシに分かるとも思えんが。


 ふむ、あー、こりゃまた随分と手の込んだ事を。と言うことはこれはアレかのぉ。

 大当たりじゃの。


「どうもこの壁から向こうはダンジョンの外、いや別のダンジョンのようじゃの」


「見たところこの壁にはダンジョンの理が効いておらん。

 外から持ち込んだにしてもダンジョン内ならばこうはならんはずじゃ。

 そしてわざわざこの壁だけをダンジョンの理から切り離す意味もなかろう。

 となればこの壁はダンジョンと外を隔てる境界と言うわけじゃ」


「あとはこの壁だけが風化してゆかぬよう擬似ダンジョン化してあるくらいかの。

 ダンジョンから力を吸い取りその力で擬似ダンジョンを維持しておる。独自の理は持っておらぬ様じゃから『擬似』じゃ。寄生型擬似ダンジョンとでも名付けるかのぅ」


「やっぱりお前は時々スゲーな……」


「流石に自宅の納屋をダンジョン化させて大騒ぎを起こした男だけのことはあるのである」


「おいおい!そんな事までやらかしてんのかよ、たまんねーなぁ」


「アルテアが居なければこヤツの家が第二の迷宮都市になるとこだったのである」


 あ、あれは必要な実験だったのじゃ。

 世界の理が働く原理を解明し、霊子への干渉をじゃな、むう。

 決して作れそうじゃから何となく作って見たわけでは無いのじゃよ?


「確かにあれが失敗であったのは認めるのじゃ。本来の目的を達する前に嫁とアルテアに攻略されて潰れてしもうたしな」

「じゃが副産物でスキルの仕組みが解明できたのじゃから上出来じゃ。無駄ではなかった事にしておいて欲しいのじゃよ」


「「!?」」


「チョット待てこらぁ!」


「今、サラッととんでも無いことを言いおった気がするのである……」


「ん?大した事では無いぞ?スキルとは制約じゃ、力を与えるものではなく、縛るものじゃ」

「スキルが上がるじゃろ?すると新しいことができる様になるな?コレはスキルによって新しい力が増えたのではなく、元々あっても縛られていた力がスキルによって解放されるのじゃ」


「「…………」」


「まあ、要は免許制とゆうやつじゃな、結果は一緒じゃからワシの様な研究者以外には大した違いは無いわい。気にするで無い」


「コレは口外すると異端認定とかされる奴であるな……」


「オレはこれから弟子のスキル指導方を一から考えなおさにゃならん……」


 二人は何やら考え込んでしもうたわい。


 そんな事より向こうの擬似ダンジョンはどうするのじゃ?


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