閑話 1
ようやく本編のヒロインっぽいなにかの登場
本日この屋敷の主に王城より急な呼び出しがありました。
彼は相手が王族であろうとも下手に出る必要が無い立場の者ですのでこの様な形で登城するのは大変珍しい事です。
事は国の大事、そうゆう事でしょう。
まあ、長女の面倒を見る契約をしているだけの私は気にしません。
夕刻、城から戻った彼は家中の主だった者を集めて、何やら指示を出しました。
本来なら私には全く関係の無い事ですが、どうも皆の態度に違和感を覚えます。
これは私に何か隠し事をしています。
何人かの家人に問い質しましたが、みな何も知らない、何も無いとしか答えません。
これではラチがあきませんね。
ですが問題ありません。こういった時は一番上の責任者に聞けば良いのです。
邪魔が入らぬ夜にでも話を聞かせていただきましょう。
深夜、主人部屋のドアを開けます。鍵が掛かっていましたが問題ありません。
この屋敷に出入りする職人はみな優秀ですから、明日には元通りです。
眠っているこの家の主人を摘み上げ王城での事を聞き出します。
最初は渋りましたが、ダメなら城で直に聞くと告げると協力的になりました。
無駄な手間をかけさせないで頂きたいものです。
聞き出した内容はやはり私に関係のあることでした。
王家とこの家が結託して私の知る権利を阻害しようとしていたのです。
なんとゆう雇用主でしょうか。
たしかに、契約には私に対して全ての情報を開示するとはありません。
ですが契約より1日も休まず無給で働く私に対してこの仕打ちはあり得ません。
これはもう相手方の契約不履行と捉えても良いのでは無いでしょうか。
しかし私はいきなり契約破棄するほど大人気なくはありません。
もちろん次は有りませんが今回は初犯とゆうこともあり軽いペナルティーで多めに見ることにし、決定事項として告げます。
「今は丁度面倒を見なければならない相手もいません、彼女が学園を卒業して戻ってくるまでの間休職させて頂くことで水に流しましょう。ですが、次は有りませんよ?」
この家の主人はブンブンと音の聞こえそうな勢いで首を縦に振ります。
聞き分けが良くて大変助かります。王家への報告はお任せしますね。
こうして初めての休暇を勝ち取った私は情報収集の為、実家の王都屋敷に戻ることにしました。
実家に戻った私は驚く家人を他所に、真っ直ぐ父の書斎に向かいます。
此処にはすでに父は居ませんが、父の残して行った資料があります。
この中から目当ての資料を探し出し、一刻も早く此処を発たねばなりません。
途中で今のこの家の主がやってきました。
彼はいきなり深夜に戻った私に驚いて駆けつけた様ですが、そんな事はどうでも良いと一喝して手伝わせます。
横暴な様ですが、私にとっては弟の様なものです。お母様の教えによれば姉とは弟にとって絶対的な者なのですから特に問題はありません。
日が昇るまでには何とか目当ての資料と思しきものを探し当てましたが暗号化されている様で読み取れません。図解などで辛うじてそれと分かるくらいでしょうか。
流石は私の父だけはあります。
しかし私にかかれば時間の問題であると宣言しておきましょう。
確かに父は不世出の天才ではありますが、私とてその娘であり事、解析能力に関してならば何者にも負けない自信があるのです。
今は時間が惜しいので解析は道中に行うことにし、屋敷を出ることにします。
弟が何か喚いていましたが今は無視でいいでしょう。
後は王城に預けてある私の武装を取って来れば完璧ですが、変に時間を掛けて追手や監視を付けられても面白くありません。
今回は、ありもので間に合わせることにします。
足りないものは道中で調達すれば良いのです。
全ての準備を終えて王都より出発します。
まだ外に出るための大門は開いていませんが城壁を超えて外へ。
途中寄り道もせねば成りません。時間を無駄にはできないのです。
私は久々の外に感慨に浸る暇もなく、朝焼けの大地を疾走するのでした。