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Quest7 オーク

「うげっ、またオークだ」


 澪夜は獣道を行く途中、幾度となく見掛けたモンスターの名前を前方60メートルほどにいる豚を見て嫌そうに呟いた。

 しかも……普通のオークではなく、【オークウォーリア】。戦斧を2つ持ったSTR特化のモンスターである。STR特化と言っても普通のオークよりもAGIも高く、VITも高いという面倒なモンスターだ。さらに、武技【乱斧】を始めとした序盤での高火力アビリティも使用する初心者殺しとも言われるのが、このオークウォーリアだ。

 それが、見る限りでは6体。エリュシオン・オンラインであれば初心者パーティーは一目散に逃げなければならない数である。

 勿論、澪夜からすれば大した敵でも無いし、この程度の敵ならばこの100倍居ても問題はない。

 ならば、なぜ嫌そうなのか。

 それはただ、


「めんどくさい」


 だけである。

 戦闘自体はエリュシオン・オンラインと同じようにやれば熟せるだろう。これが、ゲームではなく現実だとしても、同じように現実で培った技術や経験もある。

 命を奪うことに関しても、実家で教えこまれている為に躊躇いは無い。

 それなら、レベリングに丁度いいのではないか。

 それは否、断じて否だ。


 ここは異世界。

 澪夜からすれば初めて来た場所どころか、ネットに情報もないまったくの未知の世界だ。

 それに、突然ここに飛ばされてきた。

 結論、兎に角休みたい。

 休んで、一旦落ち着きたい。

 澪夜はそう思っていた。

 だから、これまでのオークも無視してきたのだ。


 それなのに……

 この森にはオークしか居ないのかと思うほどにオークが溢れていた。

 休みたいのに休めない。

 澪夜は、若干悟りを開いていた。




 ◇◇◇◇◇

 一方その頃。

 澪夜から二kmほど離れた街道では……


「やぁっ!」

「ブルルァァ!!!」


 剣戟と裂帛の声が重なり合い、響いていた。

 戦闘は既に15分を過ぎ、若い騎士たちは疲労が溜まり始めていた。息を抜く暇もなく、波状攻撃を仕掛けてくるオーク達。

 それでも、何故か通常よりも強いオークソルジャーを相手に、彼らは戦線を維持していた。


「オラァッ!次ィ!!」


 その戦闘のなかでも目立つのは、騎士らしからぬ声を上げ、オークソルジャーを斬り伏せる青年。動きを阻害しないようにか、仕える家を示すマントと軽鎧だけを身に纏い、数体を同時に相手にしていた。

 その強さは他の若い騎士たちとは一線を画していた。

 だが、それでも彼のところには多くのオークソルジャーが押し寄せている。

 疲労の溜まり方は他の騎士たちと遜色がないどころか、それよりも大きいだろう。事実、その剣閃は鈍り始め、肩で大きく息をしている。

 しかし、オークが待つことはない。


 ドシン。という一際大きな足音がした。

 騎士たちは横目で足音がした方向を見る。


 そこに居たのは十五体のオークナイトを従えたオークジェネラルが二体。


 終わる気配のしない戦いに、更なる火薬が投げ入れられた。




















 ◇◇◇◇◇


「人間の可能性について、どう思う?」

「なんですか?急に。あ、ここからはまっすぐです」


 日本、千葉。

 国道357号線を通り、某ネズミ国へ向かう車内で運転をしている黒髪の青年が同じく黒髪の女性に問い掛けた。


「だから、人間の可能性について、どう思うか?だよ」

「わかりません」

「もうちょっと考えてよー」

「そう言われても、わかりません。

 それに貴方は私がわからないと答えるほうがうれしいはずです。自慢できて」

「そんなことないけどね」

「そうですか。

 それで、貴方はどう思うのですか?」

「ふふーふ。

 わからないと言っている君に僕の考えを教えてしんぜよう!」

「やっぱり、うれしそうです」


 女性は、男の顔を見て言う。


「そんなにかなぁ?

 まあ、とにかく僕の考えを言わせてもらうよ」


「人間は無限の可能性に満ちている」


「いや、夢幻と言ってもいいかもしれない」


「よくわかりません」


「考えてもみてよ。

 僕達、始原の神は無から存在している。そして、世界を創った。あえて様々な過程を使ってね。


 その創られた世界では色んな神が人々の思いから生まれた。

 つまり、僕達を除いた神は無からの存在はしていない、有からの存在なわけだ」


「そして、僕はその人の思いを夢幻と言い換えてもいいと思っているんだ。だから、夢幻の可能性というわけだね」


「人々の夢幻の可能性は、神と呼ばれる超常的な存在を生み出した。つまり、人間は無限の可能性を秘めているのだよ!」

「そうですか」


 女性は簡単にそれだけ、返す。と、ふと思い出したように男に問うた。


「そういえば、昨日送り出した彼はなんなんですか?どう考えてもあれは普通ではない…」

「澪夜くんね。

 そう、彼は普通ではない」


「産まれながらの半神。

 彼の先祖には成神したものも、親しいものも居なかった」


「我々に近い存在だよ。

 そして、その魂は我々を超える」


「近いうちに、その魂にあった身体へ変質するさ。

 僕の考えでは、そうなった彼は僕らの遥か上を行くだろうね」


「実に楽しみだ」


露骨なチート予告。


澪夜は確かに現状最弱だけど、弱いままだとは思わないでくれたまえ!

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