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Quest2 エリュシオン・オンライン

 剣と魔法のファンタジー。

 エリュシオン・オンラインはまさにその言葉通りの世界だった。さまざまな種族とモンスター、ダンジョンが入り乱れるエリュシオン・オンラインは人々を魅了し続けた。

 エリュシオン・オンラインには、絶対にやらなければならないストーリーというものはない。ただ、各個人での一部フィールド開放には必要だったりもする。

 しかし、それでも他のゲームに比べれば自由であった…








 ◇◇◇◇◇

「姫神くん!今日の夜、一緒にエリュシオンやらない?」


 澪夜にエリュシオン・オンラインを知っているか問い掛けた女子──長門(ながと)穂熾(ほたる)が放課後、帰る準備をしていた澪夜に声を掛けた。

 この日一日で、彼女を含む三人とは随分と打ち解けた澪夜。そういえば、一緒にやる約束とかはしてなかったな、と思い出す。


「良いけど…何時からやる?」

「18時半からでどうかな?」

「19時半からでもいいか?18時45分から用事がある」

「あ、もしかして模擬戦見にいくの?なら、一緒に行かない?」

「いや、一緒には見にいけない。とりあえず……七時半にフレイヤード広場の英雄像の前でいいか?」

「んー、わかった。それじゃあね!」


 穂熾はトテトテーと友人たちの元へ駆けていく。

 その様子をクラスの男子達が幸せそうに眺めているのを横目に、澪夜は教室から出た。












「おっそいぞー、レイヤ」


 荘厳な装飾がされた一室に野太い声が響く。レイヤはそれに軽く手を上げて答えると、円卓の空席に座った。


「そんじゃ、揃ったことだしクラン会議を始めようか」


 眼鏡の男がそう口を開く。

 クラン会議。プレイヤーの組織であるクラン、その中のトップクランのクランマスター達が集まり、行われる会議である。


「ちょっと待ってくれ」


 レイヤの声が突如響く。


「何回も言ってるけど、俺はクランに入ってないし、入る気もないから会議への参加はやめさせてくれ」


 レイヤのその言葉に円卓に座るクランマスター達は顔を見合わせる。


「なに言ってんだ。お前が必要だから招待してるんだよ」


 筋骨隆々のハゲ頭がレイヤに言う。

 他のマスターも口々にレイヤが必要だと言っている。



 そして、結局残らされるのであった。










 ◇◇◇◇◇

 一時間後。


「それじゃあ、これで終わりってことで。この後は模擬戦だね」

「頼むから瞬殺されるのだけはやめてくれよー?」

「レイヤが手加減してくれないと無理だよ」

「【氷炎の貴公子】がそんな事言うのか?お?お?」


 円卓には和やかな雰囲気が流れていたが、会議の内容はそれに反して重いモノだった。PKクランの筆頭とも言える【死神の鎌(デス・サイズ)】の被害者が増えているという。エリュシオン・オンラインではPKによって死亡すると一定確率でアイテムをドロップしてしまう。それを奪うということや殺すこと自体を目的としているのがPKクランだ。因みにレイヤも何回か襲われたが、襲ったプレイヤーは悉く返り討ちにされた。クランを潰したこともあったようだ。


「やるんなら、早くやろうぜ」

「?レイヤ、なんか急いでる?」

「約束があんだよ。ったく、観客呼ぶ必要無いだろうに」

「まあまあ、レイヤさん。いいじゃないですか。シレンさんに恥かかせられるんですから」

「お、そうだな」

「ちょっとヒドイよ!?」


 レイヤは眼鏡の男【氷炎の貴公子】シレンを無視するとコロシアムのゲートへと向かった。






 時刻は18時43分。

 コロシアムには数千のプレイヤーが集まっていた。

 その中には穂熾達のキャラの姿もあった。金髪で黒のローブを着ているのが穂熾のキャラである『リリス』。黒髪を纏めた片手剣士が穂熾の友人である雑賀(さいが)志保(しほ)のキャラ『シホ』。そして、明るい茶髪の白いローブを着たのが穂熾の友人の櫻井香織のキャラ『カナリア』。近接遠距離サポートとバランスの取れたパーティーではないだろうか。


「そういえば、ほた……リリス。姫神のアカウントの名前は聞いたのか?」

「あ、忘れてた」

「さすがに待ち合わせはしてるよね?」

「それはしてあるよ。フレイヤード広場の英雄像前!」


 ほた……リリスがシホに言う。

 因みにフレイヤードとはこのコロシアムがある街のことでフレイヤード広場はその中央部に位置する。



 そして……



『Ladies&Gentleman!18時45分だ!これから、超エキサイティングなバトルを始めるぜー!!』


 その声が響くと共にコロシアム中央の上空にスクリーンが映しだされた。


『今日のバトルはクラン【オリュンポス】のマスター【氷炎の貴公子】シレンVSソロプレイヤー、【極夜の帝】レイヤだーー!!』


 映しだされたキャラの顔はシレンとレイヤのもの。

 つまり……


「「「ふぁっ!?」」」


 三人衆の驚きは計り知れないものであった。







 コロシアムの中央で、黒衣の剣士と二刀の剣士が対峙する。


『決闘モード。

 勝利条件、相手のHP全損又は降参リザイン

 敗北条件、自身のHP全損又は降参リザイン


 開始まで

 10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…BattleStart』


 開始の合図と共にシレンが二本の剣に炎と氷を纏わせて駆ける。そのスピードは視認することも叶わないほどに速い。

 シレンのクラスは『魔法剣士』。ただし、普通の魔法剣士ではない。まず、このエリュシオン・オンラインには魔法剣士や魔法騎士と言ったクラスは存在しない。では、なぜシレンのクラスは『魔法剣士』なのか。それはエリュシオンのシステムに起因する。

 エリュシオン・オンラインはクラスやアビリティ、スキルの取得条件と名称、効果を纏め、運営に申請し承認されると実装されるというシステムがある。そして、シレンの『魔法剣士』というジョブはそのシステムにより、実装されたものなのだ。

 クラス『魔法剣士』の特徴は、魔法剣と呼ばれるスキルを使えることである。本来、魔法剣士をするには剣士系統及び魔術師系統のクラスを取得し、同時に使いこなすという至難の技が必要だった。だが、それを魔法剣という多彩な魔法は使えないが、剣に魔法をまとわせるという方法にすることで簡略化したクラスが『魔法剣士』なのだ。こういったクラスはオリジンクラスと呼ばれる。

 また、スキルに関しては幾つかの種類があるが、それは割愛する。


 トッププレイヤーの中でも上位となるシレン。

 シレンは最初から魔法剣スキルの奥義とでもいうべきアビリティ【煉獄炎剣(インフェルノ)】【凍獄氷剣(コキュートス)】を使用して、レイヤに突撃した。

 レイヤに一撃を入れるには速攻しかない。シレンはその考えの元、突撃し剣を振る。だが……


「遅い」


 レイヤはその全てを悉くよけ続ける。

 魔法剣の効果もその装備によって吸収され、消滅させられる。


「刀帝神技【緋連】」


 レイヤの言葉と共に刀が抜かれ、シレンの剣を弾く。


「風帝魔法【風斬】」


 弾いたところでレイヤの左手が突き出され、魔法が放たれる。

 だが、それはシレンに浅い傷を付けるだけに留まった。しかし、そのダメージ量は傷の大きさに反して多い。


「だから、強すぎ」

「それ、お前が言う?」


 シレンとレイヤは動きを止めると軽口を叩く。

 そして、また一気に動き出す。


固有秘奥(オリジン)【氷炎乱舞】!!!!」

「ちょっ。それはっ」


 システムのアシストも加わり、先程以上の速さでシレンの剣が振られる。

 固有秘奥(オリジン)。プレイヤーが1から作り出せるアビリティカテゴリにして、作成者しか使えないアビリティである。所有者はほんの数名にしてその威力はどれも強力無比。まさに必殺技である。

 それが、普通のプレイヤーならば。


 炎と氷が舞い踊り、土煙が上がる。


「やったか!?」


 シレンが土煙から離れ、小さく叫ぶ。


 土煙が晴れる……そこにはレイヤの姿は無い。



「刀帝神技【黄泉渡り】」


 シレンの背後からそんな囁きが聞こえる。

 同時に一太刀、すぐさま後ろに剣を振るも手応えはない。再び背後に一太刀。そして、再び後ろを向くがなにもない。シレンはハッとして振り向く。

 その瞬間、目の前に刀の切っ先が迫り……視界が真っ暗に染まり、目の前に「you lose」の文字が浮かんだ。


『WINNER──ReiyaaaAAAAAAA!!!!!』


 勝負は決した。

ちょっとした設定集。


〓レベル〓

プレイヤーレベル、スキルレベル、クラスレベルがある。


〓スキル〓

戦闘系スキル、魔法系スキル、生産系スキル、その他がある。

また、ノーマルスキル、レアスキル、レジェンドスキル、オリジンスキル、クラススキルに分かれている。

レベルを上げることによってアビリティが使える。


ノーマルスキル…一般的なスキル。剣術スキルなど。


レアスキル…特定条件を満たすことで獲得できるスキル。例:剣術Lv50→大剣術獲得


レジェンドスキル…レアスキルよりも更に厳しい条件を満たすことで獲得できる。オリジンを含めなければ最高ランクである。

また、プレイヤーの考えたスキルも含まれる。


オリジンスキル…プレイヤーが名称や効果、獲得条件を設定し、運営に申請し、条件クリアで獲得するスキル。一度しか申請できず、獲得条件はかなり厳しいものでないと許可されない。また、申請者のみ獲得可能。


クラススキル…クラスに付くことによって獲得できるスキル。内容は様々だが、一部クラスではレジェンドスキルと同等のものを獲得できる。

また、一部のクラススキルはクラス名と同じ名称のスキルが手に入る。それは、通常よりも高い効果を、持つ。



〓アビリティ〓

各種スキルによる能力の総称。


武技…戦闘系スキルの武器系統スキルのアビリティ。例:剣技【スラッシュ】


戦技…戦闘系スキルのアビリティ。例:戦技【闘気】


製作クリエイト…生産系スキルのアビリティ。


魔法…魔法系スキルのアビリティの総称。


特技…その他に分類されるスキルのアビリティ総称。


〓レアアビリティ〓

特殊条件クリアで手に入るアビリティ。


〓ユニークアビリティ〓

プレイヤーが改良したアビリティと、プレイヤー案を運営が採用したアビリティの総称。作成は比較的簡単。


固有秘奥オリジン

プレイヤーが1から創れるアビリティカテゴリ。

作成は困難。使えるのは作成者のみで所有者は数人しかいない。



〓クラス〓

いわゆる職業。各種に特性がある。

システム上での最高ランクは5。

また、クラスレベルを上げることで恩恵を受けられる。

プレイヤーレベル50毎にクラス設定枠が1増える。

レベルを上げれば全てのクラスを取ることも可能だが器用貧乏となる可能性が高い。

また、レベル399以上に上げることも、できるが極端にあがりにくくなるため、運営ではレベル399を基準最高値としている。


〓オリジンクラス〓

プレイヤーが名称や取得条件を設定し、運営に申請し、許可されれば実装されるクラス。

その取得条件は強力なものほど高い。また、一部クラスは一人しか就けない設定となっている。

レイヤはオリジンクラスをいくつも作成している。


〓融合クラス〓

クラスを同時に使用することの通称で、魔法剣士などは剣士系クラスと魔術師系統クラスの同時使用で行える。基本的にこちらの方が、強力。



〓種族〓

エリュシオン・オンラインで選択できる種族。

各種族によってメリットデメリットがある。

純粋な人間種は秀でたところもないが劣ったところもない平均的な種族。


〓能力値〓

MPやSTRなどの数値。

純人間種は初期値100だが、種族によって増減する。


基礎上昇値…プレイヤーレベルアップ毎に一律5アップ。また、クラスレベルアップ毎に特定パラメーターがアップ。これはクラスランクによって上昇値が変わる。


振分値…プレイヤーレベルアップ毎に5手に入る。各パラメーターに振分けられる。

クラスレベルアップ毎に手に入る。数値はクラスランクによって変化する。


〓転生システム〓

プレイヤーレベルが300になると行える。

行った場合、クラスレベル、スキルレベル、アビリティは持ち越され、新たなジョブに付けるようになる。

レベルは1となるが、初期ステータスはいままでのレベルの累計値✕基礎上昇値から算出され、クラスレベル合計✕45(システム固定値)もたされる。振り分け値はレベル累計+クラスレベル累計✕5で均等に振り分けられる。

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