Quest1 姫神澪夜
本編の前にこれを含め数話ほど、エリュシオン・オンライン関連の話をいれます。
主に主人公がどんなプレイヤーだったかや、エリュシオン・オンラインのシステム説明となります。
姫神澪夜、18歳。
私立御堂高校3年。教師からの評価はある一点を除けば概ね良好である。
さらに、整った顔立ちに、引き締められた肉体など女性を引き付ける容姿をしていることもあり、学内での人気は高い。
そんな彼が【エリュシオン・オンライン】にハマったのは中学1年、12歳の春だった。
エリュシオン・オンラインの特徴といえば自由度の高さがあるが、その他にレーティングが低いというものもある。エリュシオン・オンラインは12歳以上対象というかなり低いレーティングだったのだ。しかし、その割に血も出るし、部位欠損も起こる。イベントクエストで虐殺が行われるなど内容はかなりヘビーなものだった。だが、それでもレーティングが低かったのはCHAINGEARが高価であり、子供が持っていなかったというのと、ペインアブソーバーの恩恵が小さめ……つまり、痛みが大きいということを全面に押し出していたからだろう。
まあ、結論として言わせてもらえば、この三年後にレーティングが引き上げられた。
さて、澪夜がエリュシオン・オンラインを手に入れたのはエリュシオン・オンラインの発売一日前であった。父親の弟…つまり叔父がエリュシオン・オンラインの開発責任者及び運営責任者であった為、貰うことができた。
そして、薦められるがままにサービス開始と共にプレイを開始し、澪夜は衝撃を受けた。楽しいと思うことが少なかった人生が彩られた瞬間だった。
ログアウトすると、澪夜はその気持ちを叔父に伝えた。そうすると、澪夜を可愛がっているその叔父はある秘密とゲームシステムを教えてくれた。
「このゲームはな、ちょっとした知識とプログラミング技術があれば魔法や武技を改造したり、新たな技を作り出せるんだ。それに、許可が下りればクラスやスキルなんかもね。
そして……これは運だけど……転生システムで純粋な人間種だけを選び続けられれば、百回目の転生で最強の種族になれるんだよ」
叔父は楽しそうにそう語った。
澪夜はそれを聞くと、今後の予定を立てはじめた。
そこからの行動は早かった。
だだ甘な叔父から良い狩場を教えてもらうと只管にレベルを上げ続けた。そして、並行して武技や魔法……アビリティと呼ばれるそれを改造し、その改良したデータを保存すると、ゲームアカウントを削除し、新たなアカウントを取得した。
新たなアカウントで澪夜は2つの壊れスキルを申請し、条件を達成して取得を行った。
勿論、叔父の力を借りることなくだ。全て一人で行った。
そして。その壊れスキルと技術、リアルラックのお陰か、澪夜は一気にトッププレイヤーへと至った……
それが……【極夜の帝】と呼ばれた澪夜のエリュシオン・オンラインとの出会い、そして足跡であった。
時は移り、澪夜は高校へと入学した。
抜身の刀の様な鋭い雰囲気を持つ澪夜はその容姿もあってか、すぐに学内の女子からの注目の的となった。だが、そのせいか男子達からは目の敵にされることとなる。それこそ、一部の生徒は昔ながらのヤンキー漫画の様に校舎裏に呼び出すなどということをしはじめた。
しかし、澪夜が行くわけもなく、ただずっとそこに居るという悲しい結末となった。
高校生となっても澪夜はエリュシオン・オンラインを続けていた。それと並行して、リアルで実家に伝わる武術も続けていた。リアルでの動きはエリュシオン・オンラインでも応用が可能と気付いたためだ。そして、エリュシオン・オンラインに併せて自らの感覚で最適化する。
そんなことを続けていた。
高校生となるとそれなりの資金もあり、エリュシオン・オンラインをしている者も多くなってきた。それこそ、女子生徒もやっているほどに。
それは、クラスの中での話題になり、新規に始める者も出てくるようになる。女子はその傾向が顕著に現れていた。
そして、澪夜はある時女子生徒にこう訊かれることとなる。
「姫神くんは、エリュシオン・オンラインって知ってる?」
と。
勿論、イエスである。
そう答えると一緒にやろうと誘われることとなる。
レベルが違いすぎる……だが、澪夜は了承する。何故なら……学校というものが始めて楽しく感じられたから。
そして、エリュシオン・オンラインの話題となると、必ずといっていい程に出るのが世界大会の覇者、公式トーナメント全てで優勝を飾っている【Reiya】というプレイヤーとアイドルとでもいうべき人気を持つトップクランの話である。
一緒にプレイする女子達からその話題を振られ、澪夜は曖昧な返事しか返せなかったのはいい思い出である。そのプレイヤーは自分だし、トップクランの連中も大体フレンドだ。
だが、それでも……澪夜は楽しかった。
ちなみに、ここからもヒロインが出るのは内緒の話。