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Quest13 刀技

 大和一刀流刀技【破軍断ち・絶空】。

 刀術アビリティの1つである【破軍断ち】を改良したユニークアビリティ。習得には高レベルの刀術スキルを持ち、尚且つエリュシオン・オンライン内の島国【日ノ本】でのイベントで隠居した老人に勝利し、【大和一刀流】という流派スキルを得なければならない。因みに、老人の強さはサービス開始直後のイベント限定エリアボスほど。つまり、そこそこやりこんでいれば勝てる相手である。まあ……それなりの装備で固めなければ、すぐに潰されるが。

 刀技【破軍断ち】の特殊効果は対軍の場合2.3倍のダメージ増加と自身よりも巨大又はレベルの高い相手に対して1.8倍のダメージ増加。それをそのままに、遠距離からの攻撃を可能とした──斬撃飛翔系のアビリティだ。








「殲滅完了……っと」


 澪夜は、自分の刀から放たれた斬撃が離れた場所に居るオーク達を両断したのを確認し、刀を納めた。

 それにしても……エリュシオン・オンラインの時より更に禍々しいな、と澪夜は鞘に納まっている妖刀を見て呟く。理不尽に狩られた全てのイベントなどのボスのアイテムや、特殊なアイテムなどなどこの刀を構成する素材は多岐にわたる。その中には、かなり妖しい素材もあった。なにより、妖刀という特殊なカテゴリーの武器を造るためにはそれなりの条件も必要だ。

 禍々しいのも当然か、澪夜はそう答えを出し、少し先で止まっている馬車と馬を見る。

 先程は気付かなかったが馬に乗っているのは、盗人騎士とパットしない騎士、そして騎士と言うには随分と軽装の男。

 やはり、関り合いにはなりたくなかった。



 だが、人生とはそう甘くはないらしい。


 澪夜は身を持ってそれを知ることとなった。

 目の前にあるのは、本日二度目となる顔。金糸のような艶やかな美しい金髪、有名造形師の作ったフィギアからそのまま型を取ったのではないかというくらいに整った顔立ちに、サファイアの如き瞳。よく見なくても、文句のつけようのない美少女だ。

 その後ろに控えているのは、目の鋭い、濃い茶髪の男とパットしない印象の男。そして、盗人騎士。


「助けていただき、ありがとうございます」


 そう思うならさっさとどっかに行ってくれ。

 澪夜は心の中で呟く。


「いえいえ。あのまま来られたら、自分が大変でしたから」


 あくまでも、自分のため。

 そう取れる返答をするが、言外にお前らが来なければ問題はないと伝えている。だが、それを少女──ティファナは察することができない。


「それでも、助けていただいたことに変わりはありません。是非、お礼を」

「いえいえ、おかまいなく」

(冗談じゃねぇよ。それって要するに礼をするから着いて来いってことだろ)


 なにも知らないこの異世界。なにかしらのパイプがあったほうがいいということは理解している。しかし、知らないからこそそのパイプを造るときに信用できるかどうかを測らなければならない。澪夜はどうしてもリスクリターンを考えると、素直に礼を受け取ろうとは思えなかった。

 それに……チラリと横目で盗人騎士を窺う。

 あんな奴と居るというのもなんとも言い難い気分になるだろうと、澪夜は思う。


「いえ、是非お礼をさせてください。

 助けていただいたにも関わらず、礼もしないというのは、公爵家の恥となります」


 公爵家の恥……まさに恥部とでも言えるような騎士がそこに居るんだが。とは思うものの、それを言うことはない。

 だが、澪夜のなかであったとある予想が現実味を帯びてきた気がする。


 澪夜がティファナ達を見た時思ったのは、随分と簡単な格好だな。ということだ。

 昼のオーク戦の後、初めてティファナを見た時、彼女は儀礼用のものほどではないにしても、かなり装飾されたドレスを着ていた。だが、今は……イブニングドレスのような、昼に比べればかなり大人しいものを着ていた。

 夜ならば当たり前なのかも知れないが、それでも公爵家。人に会うのなら──まして、ティファナのような性格なら昼と同じくらいのものを着るのではないか。澪夜はそう考えた。

 そして、見たところだが、あるのは馬車が一台。

 追いかけてきたオーク、簡単な服装、少ない騎士。

 これだけ揃えば、ある程度の予想はついた。

 ティファナ達は、荷物の殆どを放棄しているのだと。その理由はおそらく野営中のオークによる襲撃で、急いで逃げてきた為だろう。

 なるほど、それならば。

 彼女は、自分の援助を期待しているのではないか。

 というのが、澪夜の予想だった。


 インベントリ……またはアイテムボックスと呼ばれるアイテムがあれば服装程度はどうにかなるだろう。だが、それをしないというのは、それを持っていないということとも取れる。

 その考えを裏付けるのならば、昼の「空間魔法」という驚きに満ちた言葉で事足りる。

 それに、野営中に逃げてきたというのならテントの類もないのだろうし、警戒する騎士の数も足りない。またオークでも来ようものなら、次こそ終わりを迎える可能性が高い。

 ならば、用心棒を──新たな護衛を迎える必要がある。

 そうなった時に、真っ先に上がるのは自分だろう。と澪夜は考えた。


 思えば、彼女たちの前で実力を見せすぎている。

 オークベルセルクを屠り、オークの大群を一刀に臥す。

 ここまでの適役は居ないだろう。

 ならば、予想は合っているのか鎌をかけてみよう。


「はあ……では、そのうちにお伺いしましょう」

「っ、い、いえ。是非、ご一緒にいらっしゃってください。

 姉も紹介したいですし、お礼は速いほうがいいので」

(はい、予想的中かな、これは)


 澪夜は心の中で呟いた。


「ふぅ、まじかよ、メンド」と。

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