表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/31

Quest12 一度あることは二度ある

 時刻は20時。

 澪夜がこの世界に来てから凡そ9時間が経った。その間に起きたことといえばオークの殲滅に騎士に絡まれるといったかなり濃い内容のもの。澪夜は少しではあるが疲れていた。


 この世界で夜8時となると、街道は暗闇に包まれる。

 都市やその周辺ならば多少明るいが、澪夜のいるここは都市から離れているため、月明かり以外の光はほぼ無かった。


「ここで野営か……外で寝るのなんて何年振りだろうな」


 澪夜は街道から少し離れた場所に座ると空に浮かぶ2つの月を見ながら呟いた。東京では見られないだろう満点の星空。それは澪夜の心を癒しながら煌めいていた。

 数分、澪夜はそうしていると、インベントリから十数本の木の枝を取り出し、アイテム【熾天使の情熱】で火を着ける。軽々しく使っているが、このアイテムはダンジョンボスのレアドロップ。かなりの価値を持つ。まあ、それを言ったらこの火を着けた木の枝も【永遠の枝薪】というレアアイテムなのだが。


 丁度良いのでここでアイテムの等級(レアリティ)を説明しておこう。

 下から


 粗悪級クラップ(F級)

 ⇩

 一般級ノーマル(E級)

 ⇩

 特級ハイ(D級)

 ⇩

 希少級レア(C級)

 ⇩

 宝物級ファンタズム(B級)

 ⇩

 聖遺秘宝級レリック(A級)

 ⇩

 聖域級セイクリッド(S級)

 ⇩

 伝説級レジェンド(SS級)

 ⇩

 神話級ミソロジー(SSS級)

 ⇩

 神級ゴッド(X級)

 ⇩

 世界級ワールド(XX級)

 ⇩

 深淵級アビス(XXX級)


 となっている。

 この中でレアアイテムと言われるのは宝物級以上からで希少級は含まない。さらに、神級以上のアイテムなどはエリュシオン・オンラインでも持っているものはかなり限られていた。

 因みに【熾天使の情熱】は聖域級、【永遠の枝薪】は宝物級で、澪夜がセレナに渡したローブは希少級。澪夜の装備は……こちらに来てから等級表示が無くなったが、以前は深淵級だった。



 それからしばらく。

 澪夜の姿は薪から少し離れた場所にあった。そこには2m四方の穴が空けられ、その穴はお湯で満たされている。簡易的な湯船、その中に澪夜は居た。流石に外の為、湯着を着ている。ただ、悲しいかな、温泉ではなく、魔法で生み出したお湯であった。

 しかし、それでも疲れを取るという意味では効果があったのか、澪夜の顔は緩んでいた。


 湯から上がり着替えると、澪夜は薪の近くに【女神の竈(ヘスティアファーナス)】というギリシャ神話の女神の名を冠する竈のアイテムを取り出し火を着け、そこにフライパンを載せ、肉を焼きはじめた。

 周囲に肉の焼ける良い匂いが漂いはじめ、それに比例して澪夜の腹も空腹を訴える。

 そんな時だった。馬の嘶きと馬車の走る音、そしてどこかで聞いたような雄叫びが近づいてきたのは。


 まさか……澪夜の頭に嫌な予想が浮かぶ。

 嘘だろ、まじ勘弁してくれよ。そんなことを思いながら、使い方も変わったインベントリに焼きかけの肉とフライパン、【女神の竈】、【永遠の枝薪】を仕舞い、刀を取る澪夜。

 その数分後、澪夜の嫌な予想は的中することとなる。


 走ってくるのは3頭の馬と騎士、そして豪奢な馬車。

 そこに描かれた紋章は鷲獅子と剣。アルカディア公爵家の家紋。つまり、奴らだ。

 その後ろには数十の見慣れた豚面──オーク。

 どこかで見た構図だった。


 その為、澪夜がこう言ったのも無理ないだろう。


「ま た お 前 ら か」










 ◇◇◇◇◇

 シン・グレイヴは焦っていた。

 ちらりと後ろを見て追いかけてくるオークの集団を確認し、前を向く。前には馬車。

 まだオークとの距離はあるが、かれこれ30分は走り続けている。いくら、公爵家の特別な馬でもそろそろ限界だろう。

 もし、止まってしまえば……最悪の結果が頭を過ぎる。


 まず、どうしてこうなったのか。

 そんな疑問が幾度となく浮かんでは消えていた。勿論、オークが襲ってきた。それ以外はないが、シンはどうしても同僚のせいと思わずには居られなかった。

 あの襲撃によって指揮官が死に、残った騎士の中で最も長く仕えてきたのはフレイドだった。

 そのフレイドは襲撃を受けた場所から少し進んだ場所で野営をすると言い出した。確かに、消耗もしていたし、それを考えれば正しい選択なのかもしれない。だが、シンとしては反対だった。これが正しい判断と言えるのは、所詮訓練の中だけ。自分を引き取った男に鍛えられたシンとしてはそう思わずには居られなかった。一応反対意見を出してもっと進むべきと言ったものの、それが受け入れられるはずもなく、暫定的な指揮官のフレイドの指示に従うしかなかった。

 そして、その指示に従った結果がこれだ。

 夜になり突然オークたちが襲ってきた。完全に油断していた騎士たちは浮き足立ちながら反撃するが、それでもオークたちは数が多い。殲滅などは不可能だった。

 とすれば、優先されるのは護衛対象の安全。シンはオーク達を斬り捨てながら、ティファナの元へと走り、側仕えの侍女と共に馬車に乗せ、御者に馬車を走らせた。


「下人!馬に乗って着いて来い!」


 その言葉が発せられた方を見ればフレイドがもう一人の騎士と共に馬に乗って走りはじめていた。シンも馬を探すとそれに乗って追いかける。

 仲間達も大事だが、それ以上に護衛対象──幼馴染も乗る馬車──が大切だった。

 それに……フレイドは決して有能とは言えない。

 そんな評価がシンの根底にあったためか、自然とそちらを追いかけていた。






 もし、あそこでフレイドが馬鹿なことをしなければ少しは違ったのだろうか?と、シンはある男を思い出しながら考える。

 圧倒的な力で自分達を助けた──あの化物を一秒と掛からずに始末したあの黒髪の男。

 あの男が居れば……情けないことだが何か違ったのではないかと。



 少し先を見ると何かが燃えているのが見えた。


「あれは……薪?」


 薪、地面で揺らめくその炎はある男を照らし出す。





「………大和一刀流刀技【破軍断ち・絶空】」


 すれ違った数瞬後、辛うじて聞こえるほどの大きさの声とともに男が横一文字に剣を振った。

 見えたのは崩れ落ちるオークの姿と、剣を納める男の姿。


 シン達は、知らぬ間に立ち止まっていた。

宝物級のルビは某運命の宝具(Noble Phantasm)からです。


追伸

ジャァアァァアンンンヌゥウゥウウウウ!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ